アトレティコは「スペイン2強時代」に再び風穴を開けられるか。フェリックスの去就とシメオネの算段。
スペインは長く「2強時代」だと言われてきた。
スペインの「2強」といえば、バルセロナとレアル・マドリーである。過去10シーズンのうち、8シーズンで、この2チームが王者の座に就いている。
ただ、そこに風穴を開けたチームがある。アトレティコ・マドリーだ。
2011年12月にディエゴ・シメオネ監督が就任して以降、力をつけてきた。2013−14シーズン、2019−20シーズンにリーガエスパニョーラで優勝を飾り、バルセロナとマドリーにまさに実力を見せ付けた。
アトレティコは今夏、セサル・アスピリクエタ(前所属チェルシー)、カグラル・ソユンチュク(レスター・シティ)、ハビ・ガラン(セルタ)といった選手を獲得している。また、サムエル・リーノ(バレンシア)、ロドリゴ・リケルメ(ジローナ)らがレンタルから戻ってきて、新たに戦力として加わった。
■補強の行方
現在、シメオネ監督は、「5番」のポジションの補強を求めている。コケの代役を務められる選手を探しているのだ。ピエール・エメリク・ホイビュルク(トッテナム)、マルコ・ヴェッラッティ(パリ・サンジェルマン)らが候補に挙げられている。
だがアトレティコは選手を獲得する前に、放出しなければいけない。資金捻出と選手登録のためである。
その筆頭はジョアン・フェリックスだと目されている。昨季、冬の移籍市場でチェルシーにレンタル移籍したジョアン・フェリックスだが、チェルシーが彼を完全移籍で獲得するには至らなかった。しかしながらフェリックスにアトレティコ残留の意思はなく、この夏、ジョルジュ・メンデス代理人を通じて新天地を模索し続けている。
とはいえ、現時点でフェリックスの移籍は決定していない。このまま行くと、8月31日までに移籍先が決まらずに残留、という可能性もある。そうなった場合、シメオネ監督はもう一度フェリックスを戦力として数えなければいけない。
■アトレティコのシステム
今季のアトレティコは3バックで戦っている。今季「も」と言い換えた方がいいかも知れない。いずれにせよ、いま、シメオネ監督にとって3バックというのはひとつの生命線になっている。
アスピリクエタとソユンチュクの加入があったので、4バック回帰があるのではないかと個人的には見ていた。だが蓋を開けてみれば、やはり3バックだった。
シメオネ監督は【3−5−2】を基本布陣としている。厳密に言えば、【3−1−4―2】の形だ。
このシステムと戦い方で、まず重要視されているのは、ビルドアップである。
シメオネ監督に重宝されているのはマリオ・エルモソだ。3バックで、左CBに入る。左利きで、ボールが運べて、縦パスを差し込める。そこからの球出しが、シメオネ・アトレティコのキーポイントになっている。
今季は、ここにアスピリクエタが加わった。つまり、右サイドから、同様のボール出しができるようになってきている。
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