新年のごあいさつ 〜「子どもの傷害予防」に取り組む理由、背景、そして現状〜
あけましておめでとうございます。
年頭にあたり、NPO法人 Safe Kids Japan(以下SKJ)からご挨拶したいと思います。
昨年は、新型コロナウイルス感染症に始まり、それに終始した1年でした。事故による子どもの傷害は、節分の豆まきの豆による窒息死、川での溺死、ベランダからの転落死、大粒のぶどうによる窒息死など、以前から知られている事故死が起こり続けました。
2020年のSKJの活動
SKJとして取り組んだ主な活動を列挙してみます。
◆乾いた豆、特にピーナッツによる誤嚥の予防として、子どもの事故予防地方議員連盟と協働し、日本ピーナッツ協会を通して乾いた豆類の包装袋への記載(4歳までは食べさせないでください)を要望しました(「豆類」の包装袋に乳幼児の誤嚥に関する注意喚起表示を配することについて(要望))。
◆高所からの転落予防については、三菱財団から研究助成を受けることができ、現在、多職種で取り組んでいます。
◆大粒のぶどうによる窒息死が発生したため、ぶどうやミニトマトの包装に貼付できるシールをSKJで作成し、無料で公開しました(「4才までは4つに切って」ミニトマトとぶどうのシールができました)。
◆香川県善通寺市の小学校2校で、小学5年生を対象に安全教育を実施しました。
◆安全な子ども服とその流通について、NACS(公益財団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 東日本支部)標準化を考える会やEC事業者協議会などとの協働が始まりました。
◆弁護士、教員の有志の方々と取り組んでいる「これで防げる 学校・体育スポーツ事故」シリーズの活動が評価され、「運動器の健康・日本賞」の優秀賞を受賞しました。
上に挙げたように、実際に起こった子どもの事故死の予防を中心に取り組んできました。SKJの会員は個人・企業・団体合わせて100名前後ですが、主な活動メンバーは5〜6人のため、限定的な活動に留まっており、死亡例への取り組みが中心となっています。
ネットワーク会議の開催
いろいろな場で、いろいろな傷害予防活動が展開されていますが、どのグループも活動メンバーは数名で、中には個人で取り組んでいるケースもあります。このような状況では、予防活動はなかなか広がりません。そこで、子どもの傷害予防活動をしている人やグループをつなぐネットワーク会議を開催し、各グループから活動紹介をしていただきました。他にもこの活動に取り組んでいる人と知り合う機会となり、有意義な会議となりました。今後、毎年続けていく予定です(第2回 子どもの傷害予防全国ネットワーク会議を開催します)。
2021年の活動予定
SKJの活動の基本的な考え方は、3年前の本記事(「事故による子どもの傷害予防に取り組む 〜新年に寄せて〜」2018年1月1日付)で紹介しました。前年の活動に継続して取り組み、また事故死が発生した場合には、新しく取り組む予定にしています。同じ事故、事故死が起こり続けていますが、その理由としては、
①これまでの予防活動そのものに効果がない
②活動規模が小さくて、予防策が広がらない
などが考えられます。
「『一生懸命やれば、効果がある』というのは予防活動をしている側の思い込みであって、効果を数値で評価しなければ予防活動とは言えない」とふだんから言っている手前、以前と同じ事故死が発生するたびにがっかりしてしまいます。亡くなった子どもから「予防効果はないよ!」と突きつけられた以上、他の方法を考えて取り組み始めるしかありません。一人で取り組んでいたらつぶれてしまうと思いますが、仲間がいるので、また取り組もうと立ち上がることができます。
わが国では、傷害予防として、相変わらず「ちょっとした気配りで、子どもの事故は予防できる」「子どもの事故は親の責任」「親の不注意」という社会通念がまかり通っていますが、これらを払拭するため、科学的に有効で、具体的な行動につながる予防策を、今年も提案していく所存です。