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ディズニーランド体験を拡張する映画「ホーンテッドマンション」 余白から生まれる新たな価値のループ

武井保之ライター, 編集者
映画『ホーンテッドマンション』に出演するティファニー・ハディッシュ(写真:REX/アフロ)

 今年創立100周年を迎えているディズニー。その記念すべき年に意欲的な新作が続々と劇場公開されるなか、名作アニメを実写化した『リトル・マーメイド』(6月9日公開)が30億円を超えるスマッシュヒット。それに続くヒットが期待される次なる秋の目玉作品が『ホーンテッドマンション』(9月1日公開)だ。

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 王道のディズニーアニメーションの系譜とは異なるが、ファンにとっては変化球的に刺さる題材の作品だろう。試写を見て感じたのは、ディズニーランドのアトラクション体験を拡張する、映画だけで閉じないエンターテインメントとして楽しめることだ。

アトラクション追体験を語り合うことまで含めたエンタメ

 本作は、ディズニーランドでおなじみの同名人気アトラクションの実写映画化作品になる。

 同アトラクションでは、ゲストはゴーストホストに導かれて不気味な部屋を通って屋敷の奥に進むと、ポルターガイストや見えないはずの霊を見てしまう。そして、途中から椅子のようなフォルムのドゥームバギーに乗ると、大勢のゴーストたちのパーティーに入って陽気な歌を聴き、最後にはヒッチハイクゴーストがいつのまにか隣にいることに気づく。

 最初は不気味であり、怖さもあるのだが、いつのまにか愉快な気分になって楽しめるアトラクションになる。

 映画も同じような要素が詰め込まれている。登場するゴーストだけでなく、書斎や屋根裏部屋の美術セット、終わらない廊下(エンドレスホールウェイ)、伸びる部屋(ストレッチングルーム)などもアトラクションそのまま。まるでドゥームバギーそのものの動く椅子も登場する。まさにアトラクションを思い出しながら。それを追体験できる作品になっている。

 ディズニーランドのホーンテッドマンションを楽しんだ思い出のある家族やカップル、若い世代の女子グループ、かつての若者たちは、映画を見て気づいたことや改めて感じたことなど、懐かしい思い出を含めて存分に語り合うことを楽しめる映画になっている。そうやって楽しむことまでを含めたエンターテインメントとして作り上げた作品なのだろう。

リアル体験と映画の世界観がリンクして生まれる新たな価値

 ディズニーランドのアトラクションの実写映画化では、ジョニー・デップが海賊ジャック・スパロウを演じた『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズが、最大の成功作として挙げられるだろう。本作がそれに続くスーパーヒットになるかというと、そうはならないかもしれない。作品のタイプが異なる。

 しかし、アトラクションのリアル体験がそのまま映画の世界観とリンクして楽しめることは、それまでの思考に新たな余白を生む。すでにアトラクションで訪れていた屋敷のバックグランド、部屋やアイテムの意味、そこに現れるゴーストたちのストーリーを新たな情報として得ることにより、考察が生まれる。それは、それまでのアトラクション体験を別のものに変えるのと同時に新たな価値を生み出す。

 そして、映画のあとに再びアトラクションを訪れれば、それは新しい体験になり、そこからまた映画のなかに発見があるかもしれない。そんなループが生まれ、ホーンテッドマンションのゴーストの世界に引きずり込まれていく。まさにディズニーランドのアトラクション体験を拡張する映画になっている。ディズニーランドのコアファンからは熱い支持を受ける作品かもしれない。

 また、ディズニーファンにとって見逃せないシーンもある。ファンの間では伝説として知られるハットボックス・ゴーストが登場するのだ。もともとアトラクションに実装すべく作られたものの、施設内部の照明やドゥームバギーの速度の関係で効果的に使えないと判断されて取り除かれ、日本のディズニーランドには存在しないゴースト。アメリカでは大人気のキャラクターであり、そんな彼の映画でのカムバックはファンにとってはたまらないだろう。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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