TORACOパワーで阪神がサヨナラ勝ち!“ひと味違う”今年のTORACO DAYは4戦全勝!!
■TORACO DAYにサヨナラ勝ちで優勝マジック25に
恐るべし、TORACOパワーだ!
8月22日の中日ドラゴンズ戦(京セラドーム)は延長十回、2死満塁から大山悠輔選手がみごと左前タイムリーでサヨナラ勝ちを決めた。時刻は午後10時を回っていたが、最後までTORACOたちの応援は熱かった。
大山選手とともにヒーローになったのは、表の守りで1死一、二塁から登板して火消しを成し遂げた島本浩也投手。
お立ち台で二人の虎戦士は、遅くまで声援を送って力をくれたTORACOたちに手を振って感謝を示していた。
■京セラドームでのTORACO DAYもチケット完売
この日はTORACO DAY10周年イベント「天真爛漫☆とらまつり! TORACO×うる星やつら」と銘打って開催された。コンセプトは5月12~14日の甲子園球場でのTORACO DAYと同じく「平成レトロ」だ。(詳細記事⇒阪神タイガース「TORACO DAY」10周年!甲子園球場に咲いたTORACOたちの笑顔の花)
場内は満員で大盛況だった。お盆のあとの京セラドームでの平日開催だが、チケットは完売。チームが好調だからというのはもちろんあるが、甲子園でのTORACO DAYを満喫したTORACOたちが京セラ開催も楽しみにし、この日のチケットを買い求めたのも大きな要因だ。スタンドには多くの女性ファンの姿が目立っていた。
「京セラが好きというファンの方もすごく多くて」と話すのは阪神タイガースの営業部で、TORACO DAYを担当する上村菜穂子さんだ。
「地方から来られる方にとってはお天気の心配もないですし、試合後のグラウンドウォークに行きたいという方もおられます」。
上村さんは、甲子園とは違った“京セラならでは”の企画をさまざま考えたという。
■大人気のシェアリングボックス
一番の目玉は「シェアリングボックス」だ。TORACOカラーのバルーンをバックに撮影し、すぐにプリクラのようにプリントしてプレゼントしてくれる。しかも2ポーズと大サービスである。
また、QRコードを読み取れば画像をダウンロードすることもできるから、なお嬉しい。
友だち同士で、親子で、カップルで、“ミエちゃんピース”や“ガオ~ポーズ”、中野拓夢選手の“敬礼ポーズ”など思い思いのショットに笑顔が弾けていた。
TORACOたちに聞いてみると…
「背景がかわいい」
「思い出に残る」
「TORACO DAYに来るといろいろな楽しみがある」
などと大好評で、シェアリングボックスの人気の高さがうかがえた。
■TORACOダンス動画に見入るTORACOたち
外の中央プラザにも人だかりができていた。なんと真ん中にデーンと大画面のLEDビジョンが!!見ている人たちは画面を見て笑ったり撮影したりしている。
そこに映し出されていたのはTORACOダンスを踊る選手たち、さらにはそのメイキングの動画だ。
すでに球団の公式YouTubeで配信しているものなのでTORACOたちは視聴済みのはずだが、それでもあらためて大画面で見て盛り上がり、“推し”が登場すると歓声を上げたりもしていた。
■スーツ姿の等身大パネルに萌え
また、メインビジュアルの「TORACO×うる星やつら」や「天真爛漫☆とらまつり!」の看板のほか、「急に決めたんです」と上村さんの“ひらめき”でスーツ姿の8選手の等身大パネルも設置された。
薔薇の花束を持ち、スーツをビシッと着こなす8選手たちが並ぶ光景は、キラキラ輝いていた。
予想どおり…いや、予想以上の反響だった。甲子園では、フォトブースに私服風の選手たちの等身大パネルが日替わりで合計12体登場し、大人気だった。スーツ姿となるとさらに萌えるようで、TORACOたちの目は総じてハートになっていた。
等身大パネルと一緒に撮影したいというTORACOが殺到して長々と行列が続いていたが、驚くのはこの行列は自然発生的にできたものだということだ。TORACOたちのマナーのよさにも感心させられた。
■サプライズ企画を泣く泣く断念
特典(TORACOユニフォームまたはシークレットサングラス)が付いたTORACOシートやファンクラブ会員へのプレゼントであるMARY QUANTとのコラボタオル、そして全女性来場者へのプレゼントであるMARY QUANTのトートバッグのどれもがTORACOたちを喜ばせていた。
ただ、試合終了が午後10時を回ったため、予定していたグラウンドウォークが実施できなかった。甲子園ではできない、京セラドームならではの企画だっただけに上村さんも「残念です」と肩を落としたが、「でも試合に勝ってくれたんで、よかったです」とチームの勝利に笑顔を浮かべた。
そして「実は…」と明かしてくれたのが、「グラウンドウォークでサプライズ企画の準備もいろいろしていたんです」と、TORACOを驚かせようとしていたことだ。TORACOに喜んでもらおうと、とことん策を練っている。披露できなかった企画はまた、来年以降のお楽しみだ。
■バズッたTORACOダンスの動画
この京セラドーム開催に向けても、上村さんはさまざまなプロモーションを展開してきた。中でも球団公式YouTubeで配信した動画「TORACOダンスをタイガースの選手たちが踊ってみた!!」は乙女心をわしづかみにした。
大山選手の「TORACOダンス、スタート!」の号令から始まり、総勢29人の選手たちが順番にダンスを披露する。
リズム感や表情に選手それぞれの個性が垣間見え、ラストの岩崎優投手がみごとにオチをつけてくれる。なにより選手たちが照れながらもニコニコと楽しそうなのがいい。
公開するや、反響が凄まじかった。「コメントもとても多かったんです」と、上村さんもニンマリだ。そして、喜んだのはタイガースファンだけではなかったというから驚きだ。
「他球団ファンやけど、これはいい!」「〇〇ファンなんですけど、ウチでもこういうのをやってほしい」「〇〇ファンやけど、阪神ファンになりそう」などと、他球団ファンからの反応の多さに上村さんもビックリしたという。これはなかなかないことだ。
その後、メイキング動画も公開した。選手たちが振り付けに悪戦苦闘する姿や撮影現場の和気あいあいとした雰囲気がまた好評で、さらに話題を呼んだ。両方を合わせると70万回に迫る再生回数だ。TikTokではなんと600万回を突破している。
ただ、これらの動画を出すタイミングはかなり思案したという。チームの状態を見ながら、ここぞというタイミングを見計らっていた。
幸いチームは好調が続き、「ちょうどタイミングよく連勝の合間にあげられたのでよかったです」と上村さんもホッと胸をなでおろしていた。
■SNSはタイミングが重要
TORACO関連の人気動画はほかにもある。スーツ姿の選手が薔薇の花束を手に「今年のTORACOはひと味違う」と語りかける動画だ。“キュンキュン度”が高く、「あれ見て“キュン死”しましたぁ~」というTORACOが続出したという名作だが、甲子園開催のあともSNSで投稿し続けた。
ただこれも、出すタイミングを上村さんはしっかり計っているという。
ベストはその選手が活躍した試合直後なのだが、たまたまそのタイミングを逃したことがあった。翌日の昼間に流そうとも考えたが、結局「もし今あげて、これから始まる試合で何かあったら…」と躊躇し、そのときはあげられなかったという。
「せっかく選手が協力して撮ってくれた動画なのに、タイミング悪くあげて逆に選手を傷つけるというか、悪く言われたら申し訳ないので…」。
ホームはもちろん、ビジターでも試合は必ずチェックして、タイミングだけは間違えないようにと配慮している。SNSを投稿するときに、上村さんが大切にしていることだ。
■女性客が多くを占めた京セラドームでのTORACO DAY
京セラドームでのTORACO DAYを振り返って上村さんは語る。
「やっぱりWBCの効果もあって、今年はシーズンの最初から女性も野球に触れる機会が多かったと思います。甲子園のTORACOが話題になって、SNSのトレンドにも入りました。そのピークから、京セラでもう一度盛り上げるにはどうしようかと取り組んできました。京セラは1日限定なので難しい部分はあったんですけど、去年のTORACO DAYより多くの女性の方に来ていただけたという最終結果が出て、本当によかったです」。
TORACO DAYがチケット完売の大きな要因になっていたことが判明した。上村さんが打ち出した企画や仕掛け、そして気遣いが奏功したのだ。
また、SNSでも大いに賑わっていた。「TORACOのハッシュタグをたくさん見つけたり、フォトブースでの写真もどんどんアップしてくださって、本当に嬉しいです」と目尻を下げる。TORACOたちへの感謝の気持ちでいっぱいのようだ。
■今後も「ファンになる入り口」を作り出していく
甲子園球場、京セラドームといずれも大成功に終わったTORACO DAY10周年。TORACO DAYのチーム成績も4戦全勝だった。
「内町さんから続いてきたものを、なんとかいい形にできたんじゃないかな」。
前任の内町有里さんから引き継ぎ、担当に就任していきなり「10周年」という節目のイベントを任された上村さんは、大きなプレシャーと戦いながらも大役を務め上げ、安堵の表情を見せる。
上村さん自身も“推し活”をする身として、常にTORACOの気持ちに寄り添い、だからこそ生まれるアイディアも少なくない。また、他球団のイベントにも足を運んで勉強するなど貪欲で、他球団の担当者とも情報交換をするなどしてプロ野球界全体として盛り上げていこうとしている。
今後も“ライト層”の獲得は重要な課題だ。野球未経験だったり野球に興味のなかった人たち…中でも若年層に振り向いてもらい、タイガースに興味を持ってもらうようにアプローチしていく姿勢は変わらない。
「選手もダンスとかって恥ずかしいと思うんですけど、協力してくれている。昔に比べて若い女性が野球に興味を持つ“入り口”が少なくなっていると感じているので、YouTubeやTikTokの動画を見てもらって『この選手、かっこいい』とか『この選手のことをもっと知りたい』とかという、そういう“きっかけ”をもっと作りたい」。
“入り口”をさらに作り出していくことに今後も腐心する。ネットを検索だけではなく、「現場に行かずにパソコンで調べるだけでは、ファンの人と距離ができるのでイヤ」と積極的にTORACOに話しかけ、その声に耳を傾けてリサーチすることを大事にしてきたが、それはこれからも続けていく。
より喜ばれるものを―。
試合ではもちろんだが、阪神タイガースは今後もさらにさまざま楽しませてくれるに違いない。
(撮影はすべて筆者)