阪神タイガース「TORACO DAY」10周年! 甲子園球場に咲いたTORACOたちの笑顔の花
■TORACOによるヒーローインタビュー
「最高でーす!」
ヒーローインタビューで声高らかに叫んだのは阪神タイガースの近本光司選手と佐藤輝明選手だ。甲子園球場のスタンドには、いつも以上に多くの女性ファンの笑顔があった。
そう、この日を含め3日間(5月12~14日)は恒例の「TORACO DAY」が開催されており、その企画の一つとしてヒーローインタビューも2人の女性ファンが行ったのだ。
事前抽選で選ばれたこのTORACOたちは奇しくも近本ファン、佐藤ファンだった。自身の“推し選手”がヒーローになるというミラクルに大興奮で、お立ち台での「大好き」という言葉も本心だった。ただ「胸キュン台詞」の求めに「最高です!」と返した佐藤選手にはやや戸惑ったかと思うが…。
インタビュー終了後、写真撮影やサインに応じてもらうというサプライズもあり、感激のあまり泣き出してしまった2人。スタッフから「胸キュン台詞じゃなかったよね」とツッこまれた佐藤選手は、「思いつかなかった」と笑い、サインの横に「最高です」と書き添えた。まさに最高な時間が過ごせたTORACOたちだった。
チームはTORACO DAY3連戦3連勝で単独首位に立ち、10周年に花を添えて大勢のTORACOを喜ばせた。(5月14日現在)
■新旧、全世代のTORACOに喜んでもらいたい
「TORACO DAY」とはタイガースの女性向けイベントで、10年目の今年は8年ぶりに3日間開催が決定した。2014年にTORACO DAYを立ち上げ、昨年まで担当していた内町有里さんからバトンを受け継いだのは上村菜穂子さんだ。
「内町さんが築いてきた9年間に泥を塗ってはいけないし、超えていかないといけない」と、とてつもないプレッシャーを抱えていたという。そんな中、上村さんには大切にしたい思いがあった。
「新しいファンを拡大することも目的ですが、ここまでTORACO DAYに来て支えてくださった方たちを置き去りにはしたくない。全世代のみなさんが楽しめるイベントにしたい」―。
古くからのファンも新しいファンも同じように楽しんでもらうことを念頭に置いて、なんと昨年9月から取り組み始めた。「タイムオーバーだけは避けたかったんで、まずできることを探していこう」と奔走した。
では、今年のTORACO DAYの全容を、“裏話”も交えながら上村さんに話してもらおう。
■「うる星やつら」「MARY QUANT」とのコラボ
今年は「天真爛漫★とらまつり!」をテーマに“平成レトロ”の世界観を盛り込んでいる。コラボしたのは「うる星やつら」と「MARY QUANT」だ。
うる星やつらは昭和のころから幅広い年代に親しまれている漫画とテレビアニメの作品で、主人公のラムちゃんのかわいらしさ、セクシーさは女性にも人気だ。メインビジュアルにもラムちゃんが登場している。
MARY QUANTもまた「中高生のときにマリクワの鏡をみんな持っていました」という上村さんと同じく、デイジーに胸をときめかせた思い出があるという女性は多く、全世代の女性に愛されているブランドだ。
「今までブランドのコラボというのはしたことなかったけど、10周年なので何かひと味違うものを出したかった」と、MARY QUANTとのコラボでオシャレなプレゼントを作成した。
■心ときめくオシャレなプレゼント
まず来場者プレゼントだ。近年の1日開催ではユニフォームを女性来場者に配布していたが、「3日間とも来てくださるファンの方もいらっしゃると思ったので、毎日ユニフォームではなく、違うもののほうが楽しいんじゃないかな」とアイテムにはかなり頭を悩ませたという。
結果、初日はユニフォーム(カセットテープ柄などをちりばめた平成レトロテイストのデザイン)に、2日目と3日目はMARY QUANTのコラボで、それぞれポーチとスマホショルダーに決定した。これらが大好評で、入り口で手にしたTORACOたちは「かわいい~」「オシャレ~」と喜んでいた。プレゼント欲しさに3日間とも来る女性も多かった。
すっかりTORACO DAYの“名物”になっているのが「道連れ作戦」だ。公式ファンクラブの女性会員が女性(非会員を含む)を連れてくると、どちらにもプレゼントがもらえるという企画だが(12、14日に実施)、このプレゼントもMARY QUANTとのコラボタオルだ。
「デザインはめちゃくちゃこだわりました」と胸を張る上村さん。社内のTORACOチームの女性陣で意見を交わしながら、妥協を許さずじっくりと決めたデザインや色合いはクオリティの高い自信作で、TORACOたちを大いに満足させていた。
また、例年どおりアルプススタンドに各日TORACOシートが用意された。特典として選手の背番号と名前が入ったオリジナルサングラスが付いており、3日間とも完売した。
急遽、追加で虎タウンとのコラボカードも配布され、これもTORACOたちに大ウケだった。
■スーツや私服風の姿の虎戦士たち
プレゼント以外も「カワイイ」が盛りだくさんで、まず球場に着くと「メモリアルウォール」に惹かれる。なんとスーツ姿にバラの花束を持った選手たちの写真がずらりと並んでいるのだ。これは萌える。
かっこつけていたり、照れくさそうだったり、さまざまな表情とポーズで出迎えてくれるのだが、中でも上村さんのイチオシが岩崎優投手の写真だ。「めっちゃいい笑顔なんです。普段の撮影ではクールな表情が多いのに」。たしかにここまでの破顔はなかなか見られない。岩崎投手にこれを告げると、「いい笑顔でしょ」とドヤ顔していた。
また、佐藤選手ファンだという5歳のTORACOは、ポーズを真似て撮影し、「テルのかわいいところが好き」と瞳を輝かせていた。
8枚のパネルにペアで収まっているので合計16選手なのだが、この組み合わせがまた絶妙だ。これも普段の選手の様子を観察したり、過去のインタビューなどから察したりで、「めちゃくちゃ考えた」というだけあって、ファン心をくすぐるカップリングとなっていた。
ミズノスクエアの「フォトブース」で待っているのは、私服風の選手の等身大パネルだ。日替わりで3日間、合計12選手が登場した。限られたスペースの中、「できるだけ多くの選手と撮影できるように」という思いで日替わりにしたというが、大勢のTORACOを喜ばせたのは間違いない。
いずれもユニフォーム以外というのは初。スーツに私服風と、普段見られない姿にTORACOたちはキュンキュンしっぱなしだった。
■TORACOフェスや練習見学会などイベント盛りだくさん
ナイターでのTORACO DAYも2015年以来で、「久々なので、何か仕掛けをしたかった」と、大好評の「虎フェス」のTORACOバージョンとして「TORACOフェス」が開催された。事前に公式サイトで選手の登場曲を募集し、この日限定で使用した。TORACO目線で選ばれた曲がLED照明とも連動し、金曜の夜を盛り上げた。
女性ファンからの絶大な人気を誇る湯浅京己投手にはKing&Princeの「シンデレラガール」が選ばれたが、本人はけがで離脱中で「TORACO DAY、出たかったなぁ」と残念がっていた。TORACOたちも見たかっただろう。
コロナ下ではできなかった練習見学会も再開した。残念ながら日曜は雨で中止となったが、土曜に来たTORACOたちは虎戦士の汗を流す姿を大いに満喫できた。
驚いたのは誰も騒がなかったことだ。さすがに内野席に着いた瞬間だけは黄色い歓声が飛んだが、真剣な練習風景を目の当たりにして空気を察したのか、見学中は声を潜めて静かにカメラを向けていたのが印象的だった。
豪華なゲストも顔をそろえた。数人の選手が登場曲にも使用しているベリーグッドマン、ラムちゃん役の声優・上坂すみれ、モデルの重川茉弥らがミニライブやファーストピッチセレモニー、スタジアムMCなどでスタンドを盛り上げた。
先述したヒーローインタビューやスタメンKIDS、勝利後のハイタッチもすべてTORACOが務め、TORACO DAY限定のグルメやグッズも好評を博した。バックスクリーンのビジョンでもTORACOバージョンの選手紹介で盛り上げた。
また球場隣の甲子園歴史館でも、連動イベントとして選手が直筆でメッセージを書いた写真パネルを展示、選手カードも配布された。入場者は普段の日の4倍以上を記録したというから、TORACOパワーや恐るべし。
■SNSを最大限に活用
TORACOの存在は選手たちにも浸透しており、「スーツや私服風の撮影は緊張したり恥ずかしいところもあったと思うんですけど、『TORACOのみなさんが喜ぶんで』と言ったら笑顔で対応してくださった」と、上村さんも頭を下げる。
かつて他部署でもSNSを担当していた上村さんは、その効用を実感している。「TORACOのアカウントがあるのだから、どんどんやろう」とSNSを駆使し、例年より数多く投稿したが、「動画など更新すると、広報部かのようにみなさんが拡散してくださる」とTORACOたちに感謝している。
昨年から始めたTikTokもファン拡大につながった。
そして「ずっとエゴサーチしています(笑)」と、SNSからヒントやひらめきを得ることも多々あるという。選手の動画も“本番”の部分だけでなく、その前後の“素”の部分も使ったときに好評を得、何が喜ばれるかもSNSの反応で汲みとれた。
行き詰まったときや疲れたときには「担当さん、ありがとう」などのコメントを見つけると「頑張ろうってなる(笑)」と励みにもなった。TORACO DAYの期間中は「トレンド」にも上がり、注目度の高さをあらためて実感したという。
■TORACOが結ぶ絆
イベント中も球場内外で積極的にTORACOたちに話しかけた。スーツや私服風の写真が思った以上に大好評だったことなど、生の声を聞けたことは本当によかったと振り返る。
「球場外周を歩いていると、球場やSNSで出会った『TORACO仲間』ができたというのも聞いて…。TORACOがきっかけで人と人をつないでいくというのが、すごくうれしかったですし、今まで9年間、内町さんたちが築き上げてきたものが形になっているなぁというのを感じました」。
TORACOが結ぶ絆―。あらためてTORACO DAYが持つ役割の大きさを思い知った。
言葉の端々から、ファン心理を心得ていることに感心させられるが、上村さん自身も“推し活”しているというから、なるほどと納得だ。だからこそ生まれるアイディアも多く、これまでの常識にとらわれず、新しい風を吹き込んでいる。
しかし「もちろん、自分一人の力ではない」と力を込める。「球団内外、多くのみなさんに助けていただいていますし、みなさんがいるからできた。あらためて、みんなで作り上げたんだなというのを感じます」。関わったすべての人の力で成し得たとうなずく。
上村さんの奮闘ぶりからは苦心も多いことが想像に難くないが、なによりタイガースへの、そしてTORACOへの熱い思いが伝わってくる。ファンに喜んでもらいたいというその気持ちが、TORACO DAY10周年を成功させたのは間違いない。
■TORACO DAY史上最多、約5万人の女性ファンが来場
年々バージョンアップしているTORACO DAY。それに伴って女性入場者数は着実に増えている。今年はTORACO DAY史上最多となる約5万人(3日間合計)の女性ファンが来場した。
「今年から声出し応援も解禁になった中、多くの女性ファンに集まっていただき、満員の中でできて、すごくよかったです」。
上村さんの声も弾んでいた。
大成功で幕を閉じ、「わたしは燃え尽きました~(笑)」とは言いながらも、上村さんの顔には疲れなどいっさい見えない。むしろ「こんなことしたい、あんなことしたいって、アイディアがめちゃくちゃ浮かんでいます!」と、早くも来年に向けて気持ちはスタートしているようだ。
「11年目、もっと今年を超えるくらい喜んでもらえるように頑張ります!」
今からとても楽しみである。
・・・おっと!その前に今年はあと1回、8月22日に京セラドームでの開催がある。来場者プレゼントのMARY QUANTコラボのトートバッグが、これまたかわいい。
TORACOのみなさん、お忘れなく。
(本文中の写真撮影:筆者)