「戦後レジーム」の欺瞞を引きずる安倍総理会見
フーテン老人世直し録(151)
皐月某日
安倍政権は日本の針路を大きく変える安保法制を閣議決定したが、記者会見での安倍総理の発言は見事に欺瞞だらけであった。戦後70年の世界の動き、特に冷戦後の国際情勢を相当にねじ曲げなければ到底理解できない発言だとフーテンは思った。こんなレベルで国会の論戦が行われるなら日本は世界に恥をさらすことになる。
まず冒頭に安倍総理は「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。この不戦の誓いを将来にわたって守り続けていく」と述べ、そのために安保法制を閣議決定したのだと言った。我が国は「不戦」の誓いを守るために他国が攻撃されれば自衛隊の反撃を認め、また自衛の活動範囲を地球規模に広げるという事になる。これを理解できる人間のオツムがどうなっているかをフーテンは知りたい。
これは日本国憲法が「戦力を持たず、交戦権を認めない」のに、国家には自衛権があると言って自衛隊を作った「戦後レジーム」の論理と同じである。吉田茂は自衛隊を「戦力なき軍隊」と呼んだが、敵が武力で攻めてきた時「戦力なき軍隊」はどうやって国を守るのか、「戦力なき軍隊」とはただの欺瞞に過ぎない。
不幸な事だが戦後の日本はそうした欺瞞からスタートした。そのため次から次へと欺瞞を重ねる事になる。「非核三原則」も「武器輸出三原則」も国民の目をくらますウソであった。それが積み重なるとウソを隠すためのウソが必要になる。ウソがばれないよう機密情報は一切公開されない。戦争をする国であるアメリカは機密情報を公開する。しかし日本のようなシステムの国は「戦争する資格のない国」だとフーテンは思う。
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