世界が笑う品性下劣なガキの議論
フーテン老人世直し録(153)
皐月某日
戦後日本の国是を大転換させる安保関連法案の審議は、フーテンが危惧した通り全く意味不明の議論となった。しかもひどいのはそれだけでない。世界には見せられない国会審議がテレビ放送されている。
異様なハイテンションで喋り捲る総理と、それに拍手を送るバカ面の議員が連日テレビに映し出され、質問する野党議員に対して答弁席にいる総理が野次を飛ばす光景も放送された。歴史的意味合いを持つ国会審議は品性下劣おびただしいのである。
フーテンはかつて初めて国連が集団安全保障措置を行使した「湾岸戦争」で、米国大統領に武力行使権限を承認する時の米議会審議と、戦後世界の安保環境を大転換させた「冷戦終結」に際し、米国内の諸々の仕組みを転換するときの米議会審議を取材した事がある。
いずれも、民主主義国が戦争を行う時、また民主主義国が安保環境の変化に対応する時はこのような議論を行うのだと納得させられる誠に真剣で説得力のある議論であった。それに比べ、我が国の国会で繰り広げられている審議の様は、誠に恥ずかしく、そしてレベルの低いガキの議論である。否、ガキの方がもっとましかもしれない。
米議会の真剣さはまず審議時間の長さに現れている。イラクのクエート侵攻は1990年8月2日に起きたが、8月下旬に始まった米議会の議論は翌年の1月まで続き、1月12日に上院と下院それぞれが大統領に武力行使の権限を与える決議に賛成し、その4日後にイラク空爆が始まった。その間、200人を超える専門家が議会に呼ばれて意見聴取され、また決議採決には3日間をかけ、議員たちが200時間を超える演説を行ってから採決された。
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