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大人の日帰りウォーキング 健康と運動に悩む友人の誘いを断れず、一緒に行く歩く旅の計画を立ててみる

わか子ライター

私は数年前より街道歩きの旅を楽しんでいる。
歩く旅自体が個性的な趣味なので、1人で歩き始め、1人で楽しんで歩いていた。しかし、最近になり、友人から一緒に歩きたいと誘われるようになってきた。
今までの街道歩きの旅は1人で楽しむことがほとんどだった。理由は、こんな趣味を楽しむ知人がいなかったからという、単純な理由でもある。

歩く旅を始めた頃は、1人旅を楽しめる心の余裕はなく、落ち着かない時間だった。1人でいると変な人に思われないかと、そんなことばかりを気にしていた。それでも、続けられたのは歩いていたからだと思う。その日の目的地まで歩くと言う目標があったから、周りの環境から自分に目を向けられたのだと思う。

自分自身に目を向ける。
この経験を、この年齢ですることが出来たのは、これからやってくる老いに向けての人生における、物事の考え方に大きく影響したと思っている。

吹上神社(鴻巣市)※順不同
吹上神社(鴻巣市)※順不同

1人で歩く旅をしていると、自分の疲労に合わせて歩く速度を調節できるし、疲れた表情や態度を出しても、不快感を与える相手がいないのがとても楽に感じる。
予定を立てるのも自分の都合だけでよく、合わせる必要があるのはお天気のみ。
1人には1人の良さがある。

晴美さんと一緒に街道歩きか。
元同僚の晴美さんは、1年前に生活習慣病の1つである糖尿病になり、通院治療を受けているという。先日の検査結果が良くなかったらしく、食事に気を付けること、運動をすることを主治医に言われたと言い、元気がなかった。

晴美さんは、近所の大きな公園でウォーキングをしているというが、
毎日、同じところばかり歩いていても楽しくないのよ。飽きちゃったわ。
多分、運動が好きじゃないのだろうな。
どうせ運動するなら景色が良い場所が良いな。一緒に行こうよ。車、出すから。
晴美さんは、私が街道歩きをしているのを知っている。車を出してくれることは嬉しいけれど、街道歩きは車よりも電車の方が便利な場合が多くある。

今日は、JR鴻巣駅(埼玉県)を9時頃に出発して、目的地は深谷宿があるJR深谷駅。約28kmの距離を歩き進んでいる。
右手に小高い丘のような場所があり、その上に珍しいお地蔵様がまつられていた。

べったら塚古墳(埼玉県鴻巣市箕田)
べったら塚古墳(埼玉県鴻巣市箕田)

珍しい。こんな形のお地蔵様を見たのは初めてかもしれない。
六地蔵とも言われている石碑には6体のお地蔵様が整然と並んでいるが、ちょっと、お地蔵様が窮屈そうにも見える。
私がお地蔵様だったら単体のお地蔵様が良いな。動けないから、周りに気を使わなくても良い距離感がほしいと、切実に思う。
そんなことを考えながら、お地蔵様がまつられている小高い丘は一里塚かな?と思うが、一里塚ではなく「べったら塚古墳」だそうだ。古墳か。この辺りには古くから人々が住み続けられてこれた理由がどこかにあるのかもしれない。

中山道 前砂の一里塚跡 日本橋から14番目
中山道 前砂の一里塚跡 日本橋から14番目

景色が良い所か。
そういえば、以前、一緒に街道歩きをした由美子さんも、ご主人のリクエストは景色が良いコースだと言っていたことを思いだす。気持ちは大変良く分る。誰だって景色は良い方が良い。楽しみがあるほうが励みになる。
由美子さんご夫婦は体力の心配はなさそうだったので、思い切って峠越えの街道歩きを紹介したけれど、運動が好きそうに見えない晴美さんは、同じコースは難しいかもしれない。1日に歩く距離も短めにした方が良いかも。

しばらく歩くと間の宿(あいのじゅく)跡に着いた。

中山道間の宿(あいのじゅく)埼玉県鴻巣市吹上本町5丁目
中山道間の宿(あいのじゅく)埼玉県鴻巣市吹上本町5丁目

旧中山道はJRの線路を斜めに横切っていた。あれ、違う。江戸時代に作られた中山道の方が先に作られているのだから、JRの線路が中山道を横切ったと言うのが正しいのかもしれない。
線路に踏切はないけれど、新しく作られている県道が線路を高架橋で渡るようになっており、階段を登って高架橋の歩道で線路の向こうに渡るようになっている。
間の宿があった場所に小さなポケットバークが整備されており、休憩するのにちょうど良い。座ってお茶を飲もうか。

間野宿説明版にある浮世絵
間野宿説明版にある浮世絵

説明版にある浮世絵には河川敷であろう草むらの中に通る道を歩き進む旅人の絵が描かれており、江戸時代には鴻巣から熊谷宿までのほとんどが河川敷の草むらの中だったことを思わせられる。現在では、河川敷を歩く距離は当時よりは短くなっているが、それでも荒川の土手を5kmも延々と歩くのは大変である。しかし、街道歩きはこういうものである。

さぁ、私も歩こう、

旧中山道の石柱(埼玉県鴻巣市榎戸2丁目)近くに公衆トイレあり
旧中山道の石柱(埼玉県鴻巣市榎戸2丁目)近くに公衆トイレあり

荒川の土手が見えてくると、土手の前に地蔵堂がまつられており、権八地蔵とその物語が書かれている説明版がある。
権八はお地蔵様の前で絹商人を殺して大金を奪い取った。そして、お地蔵様には「見逃してください。誰にも言わないでください」とお賽銭を上げて手を合わせたという。
権八に口止めを依頼されたお地蔵さまは「我(われ)は言わぬが汝(なんじ:おまえ)言うな」と答えたとある。
その話であればお地蔵様も罪人をかくまったことになりかねないのではないか?

権八地蔵(鴻巣市荊原)
権八地蔵(鴻巣市荊原)

恐らく、逸話にして悪い事をしないようにするのであろうけれど、お地蔵様が大切にされているのは、この場所に意味があるのではないか。
この辺りは荒川の河川敷。五街道は江戸時代から主要交通路であったけれど、今のように街灯がないので、江戸時代には夜は真っ暗になり人通りもなくなる。その上、河川敷では人目につかかず、悪い事をするには都合が良い場所だった。
そのため、お地蔵様が厳しく見張っていると、伝えたのではないだろうか。

権八とは平井権八と言う江戸前期に実在した鳥取藩主であり、故郷で同僚を殺害して江戸に逃げてきたという。しかし、生活に困るようになると辻斬り(つじぎり:強盗殺人)を繰り返しており、歌舞伎にも白井権八として演じられているとある。

権八は捕らえられて、はりつけの刑に処されたとあり、権八が処刑された大井村鈴ヶ森刑場は、旧東海道の品川宿の少し先に鈴ヶ森遺跡として残っている。

参考)旧東海道沿い 鈴ヶ森遺跡(品川区南大井)
参考)旧東海道沿い 鈴ヶ森遺跡(品川区南大井)

荒川の河川敷に出た。川が流れている様子が見られるのかと思っていたけれど、堤の上から見える風景は草原だった。そして、幾重にも積み上げられている堤は、水害が起きるたびに増築されてきたことが良く分かる。荒川と言う名前の意味を納得させられた。

荒川の堤の上を気持ちよく歩き続けた。天気が良い日は気持ちが良い。吹いてくる風も爽やかで癒やされる。

街道歩きをしていると、どうしてもただひたすら歩く場所がある。
何かの修行のようにも感じるけれど、ただひたすら歩くのも悪くない。知らない街で、ひたすら街道を歩いていると非日常を感じられる。
頭の中では、日常で感じるいろいろな悩み事が浮かんでは消える。それを繰り返していると、やがて何も浮かんでこなくなり、ただ、ひたすら歩いているだけになる。

長かった荒川の堤を歩き終わると、旧中山道は住宅街へと進んでいく。
JR熊谷駅の少し手前に一里塚跡があった。

旧中山道 八丁の一里塚跡 日本橋より16番目 (裏に公園、公衆トイレあり)
旧中山道 八丁の一里塚跡 日本橋より16番目 (裏に公園、公衆トイレあり)

一里塚跡の裏に公園があるのでお昼にしようか。

ベンチに座ってお茶を飲む。ザックからお昼を取り出した。

もちろん、これだけでは足りません…。
もちろん、これだけでは足りません…。

晴美さんが楽しめるようなコースがあったかな。
距離は10kmぐらいで景色が良い。

糖尿病で主治医より運動するように勧められている晴美さんにとって、運動は治療の一環でもある。
街道歩きが楽しくて、また行きたいと思うようになれば、継続して運動を続けられる良いきっかけになるので良いのだけれど。

街道歩きはテーマパークではないので、アトラクションのように準備されている楽しみで人々を楽しませてくれることはない。
楽しいと思うか思わないか、楽しめるのは自分次第でもある。

大丈夫かな…。

ライター

東京都在住のおばさんです。子育てが落ち着いてきた頃より趣味で登山や街道歩き等を始めました。歩く旅は大変だというイメージがありますが、歩く事で解る楽しみもあります。実際に歩く旅をして、歩く楽しさをお伝えしたいと思っています。

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