大人の日帰りウォーキング 江戸時代より賑わうお寺に寄り道し、お昼は公園で青空ランチ 1日8km歩く旅
今日は朝から目黒川の河口から上流に向かって歩いてきた。川の長さが約8kmの目黒川を半分近く歩いて、この辺りで寄り道をする。
川沿いの遊歩道より西に曲がり、住宅街の中を歩き進むが、道が良く解らないのでスマフォを取り出して地図を確認する。
これから向かうのは目黒不動と呼ばれている瀧泉寺。住宅街の中を歩き進み、お寺の前までやってきた。ふと横を見ると、江戸情緒、目黒比翼塚と書かれた説明版と石碑に目が留まる。
比翼塚(ひよくづか)が解らないので調べてみると、愛し合って死んだ男女を一緒に祀った塚とある。誰が祀られているのだろうと思い良く見ると、白井権八と小柴だった。
白井(平井)権八は江戸時代初期の因幡国(鳥取)藩主であり、故郷で同僚を殺害して江戸に逃げてきた。しかし、生活に困ると辻斬り(つじぎり:強盗殺人)を繰り返しており、歌舞伎でも演じられた人物である。
趣味で五街道歩きの旅をしている私は、以前に中山道を歩いている時に権八に所縁がある地蔵に出会った事を思い出した。
場所は埼玉県鴻巣市、旧中山道の吹上間の宿より荒川の土手へと進んだ場所に権八地蔵がある。
権八はお地蔵様の前で絹商人を殺して大金を奪い取った。そして、お地蔵様には「見逃してください。誰にも言わないでください」とお賽銭をあげて手を合わせたという。権八に口止めをされたお地蔵さまは「吾(われ)は言わぬが、汝(なれ:おまえ)言うな」と答えたと、説明版に書かれていた。
後に捕らえられた権八は、江戸時代の処刑場の1つである、旧東海道沿いの鈴鹿森刑場で刑死している。
愛人であった遊女の小柴は権八の墓前で自害し、後追い心中として歌舞伎でも有名になっており、比翼塚は二人の来世での幸せを祈り建てられたとあった。
改めて、目黒不動への門をくぐる。立派な仁王門と迫力ある仁王像に圧倒される。目黒不動尊瀧泉寺は日本三大不動の1つであり関東最古の不動霊場でもある。創建は平安時代初期にまでさかのぼる歴史あるお寺であり、開山は自覚大師、天台宗のお寺。
また、江戸時代には三代将軍徳川家光により、目白、目黒、目赤、目青、目黄の五不動を設置され、江戸中期には不動信仰が盛んになると共に、一般庶民の行楽地をして多くの参拝客で賑わった。落語の目黒さんまは、この近くにあった休憩茶屋が舞台になったと言われている。
多くの木が生い茂る境内に入ると何だか別世界に来たような感覚になる。少し歩くと狛犬と常夜灯が迎えてくれているが、狛犬が犬であるのに気が付く。一瞬、狼かなとも思ったが、垂れている耳や丸くなっているしっぽの様子では犬だと思う。
日本の神社やお寺にある狛犬の多くは獅子型をしている事が多いのであるが、時々、様々な生き物が祀られている。稲荷神社でのキツネ型は眷属として祀られているので良く見る機会があり、埼玉県の三峰神社の末社であれば狼の狛犬が祀られている。他にもいろいろな動物の狛犬があるそうだが、犬の狛犬も珍しいと思う。
正面に向かって左側に独鈷の滝があり、1100年余り枯れる事がないと言われており、二体の竜の口から気持ち良く水が流れている。隣にある水かけ不動明王は参拝者のほとんどがお参りしており、順番待ちをしている列の最後尾に並んでお参りをした。
石段を登り本堂へと向かう。大きな鳥居の先に不動明王が祀られている本堂。青空と、木々の緑、本堂の朱色がとても美しい。お寺に鳥居があるのは神仏習合の名残でもあり、歴史の長さを感じさせられる。まっすぐ正面に向かい本堂でお参りをし、本堂の裏にある大日如来像へと向かった。
不動明王は大日如来の化身であると何かで読んだのを思い出した。目黒不動に祀られている銅製の大日如来は江戸時代初期の1683年に建立されており、高さは3,85mもあるのでかなり大きい。本堂の裏に祀られているのには意味があると思うけれど、立派なのに目立たないのがもったいない気がする。しかし、人気が少ない分ゆっくりと仏像を眺めてお参りすることが出来るのは嬉しい。
そろそろお昼ごはんを食べようか。
目黒不動尊は、日中であれば、向こうへ出られる出入口が解放されているので、そちらに向かう。お寺の裏側に出ると、不動公園と言う少し大きめの区立公園がある。公園内は子供用の遊具があり、小さな子供を連れた若い夫婦が自転車で遊びに来ている様子があるが、公園の広さに対して遊具がゆったりと造られているので、思ったより広く感じる。あまり小さな児童公園だと、いくら昼間でもおばさん1人がベンチに座っていると怪しい人に見えるのではないかと心配になるけれど、これくらいゆったりしていると安心してゆっくりと休憩が出来る。
木陰になっているベンチに座り、リュックの中より持ってきた食べ物を取り出した。おばさんのランチには今日のメニューと言う程のものは無い。出かける前にさっと作った大き目のおにぎり2個と、残り物のお味噌汁を小さなスープジャーに入れて持ってきた。長い距離を歩く日帰りウォーキングをすると、とてもお腹が空く。コンビニおにぎりだと1個が小さく感じるので、少し手間がかかっても自家製のおにぎりの方が量も調節できるし食べ応えがある。ついでにお金も節約になる。
外出する時ぐらい美味しい物でも食べればよいのにと、何度も自分に言い聞かせようとしたことがあったが、やっぱり私には公園での青空ランチが性分に合っているようだ。そして、お腹が空いて、お青空の下で食べるご飯はとても美味しい。
始めは節約だった。外食すれば美味しい物を食べられるけれど、それなりにお金も必要であり、その金額が高いと思った。それに加えて、外食では量が多いのでお腹がいっぱいになりすぎる。そして、お店の空間の中で食事をするのが苦手でもあり、人が多くても少なくても何だか落ち着かない貧乏性でもある。
歩く旅を始めた頃、タイミングよく食事ができるお店が無かった事もあり、簡単な食事を持参して外で食べるようになった。そうすると、公園などの外で食事をする方がリラックス出来るし、食事を味わって食べられている自分に気が付いた。
今では、全く外食をしないと言う訳ではないし、たまには美味しい物を食べたいと思う事もあるけれど、世の中の美味しいと自分の美味しいは完全に一致しなくても良いと思っている。そう、完全に一致するはずがない。私は私が心から美味しいと思いながら食事する方が良い。そう思う事にしている。
お茶を飲んでホッと一息つく。空を見上げた。
今回歩いているコース 1日約8km
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