川での子どものおぼれを予防する -「靴」にも配慮を
2021年5月26日、Safe Kids Japan(以下、SKJ)が制作にかかわった動画が配信された。川で溺れることと「靴」に注目して作った動画だ。
2021年4月7日 朝日新聞デジタル
その後の経緯
4月9日には下記の記事が配信され、記事の中で国土交通省の動画が紹介された。
サンダルが流されても取りに行かないで。国土交通省のRPG風こども向け水難防止動画が秀逸!親子で見て
2021年4月9日 Yahoo!ニュース(個人) あんどう りす
同じような事故は以前から起こっており、SKJのメンバーのあいだでも、「また起こったのか」、「どうしたら予防できるのか」という声が上がった。
一方、SKJ会員の中には「#サンダルバイバイ」というハッシュタグを作り、TwitterやFacebookで「サンダルが流されたらサンダルにバイバイしよう。決して拾いに行かないで!」と訴えている人や、「靴の選び方や履き方も子どもの傷害予防には大変重要だ」と訴えている人がいる。
この事故を受け、SKJ会員5名を含む全8名が集まり、川の安全について検討することになった。この8人は「子どもの傷害予防」という大きな目的は共通しているが、それぞれ専門もアプローチの方法も異なっており、これまで相互の交流はほとんどなかった。しかし今回、「この夏は川の事故をゼロにする」という最終目的に向けて共に取り組むこととなった。SKJは「会員活動の支援」という立場で関わった。
このグループの活動
「子どもだけで川に行かない」、「川のそばに行くときはライフジャケットを着用する」など、川での子どもの溺れを予防するための大原則はたくさんある。4月22日、はじめてグループのメンバーで顔合わせをし、どのようなメッセージを発信するかを議論した。伝えたいメッセージの案はたくさん挙がったが、今回は、子ども向けには「脱げにくい靴を履くこと」、「川に落としたものは拾おうとしないこと」のふたつ、おとな向けには「とっさに飛び込まないで」というひとつのメッセージに絞って発信することとした。子ども向けメッセージを上記ふたつにした理由は、靴の履き方・選び方は、子どもの傷害リスクを軽減する効果があり、子ども自身が実施できる予防法のひとつであるにもかかわらずあまり知られていないこと、また、多くの子どもは川に落ちたものを拾おうとするリスクを理解しておらず、それを知らせる必要があると考えたからである。おとな向けの「飛び込まないで」というメッセージには、飛び込んで助けることのリスクを多くの人に伝えたいというメンバーの強い思いがある。動画は、シンプルでわかりやすく伝えることを心がけた。4月22日以降、5回の議論を経て、2分間の動画を制作した。
今後の課題
今回の取り組みを振り返ると、事故が発生した時の詳しい情報がいかに大切かがよくわかる。「溺れの予防にはライフジャケット」と言うだけでは、不十分であることもわかる。水遊びをするとはまったく考えていない場面でも、状況の変化によって池や川に近づく場合があること、その場合の溺れを予防することも考える必要があることがわかった。
「サンダルを拾おうとしたこと」が川に近づくきっかけとなったという記事の記載がなければ、的確な予防策は考えられない。ニュースから判断すると、この溺死には犯罪を疑う余地はない。犯罪性がない事故死は、「警察が詳しい状況を調べています」で終わりにするのではなく、警察は事故の詳しい発生状況を公表する必要がある。
おわりに
2021年4月7日に起こった川での溺死事故を受けて、有志が集まり、動画を制作・発信することができた。2分ほどのシンプルなメッセージであるが、多くの人の目に触れること、そして子どもたちに受け入れられることを望んでいる。これまで個々に活動していた人たちが、ひとつの目的に向かって協働できたことは大変よかった。これを機に、今後もこのメンバーで川の安全について一緒に取り組もうということになっている。Safe Kids Japanは、人をつなぎ、子どもの傷害予防を目的とするそれぞれの活動を支援する団体でありたいと考えている。
今年の夏、川での子どもの溺水事故がゼロとなりますように。