サンダルが流されても取りに行かないで。国土交通省のRPG風こども向け水難防止動画が秀逸!親子で見て
東京都板橋区の川で、サンダルを取りに行こうとした小学2年生が川に落ち、尊い命が失われる事故がありました。助けようとした方も行方不明になっています(4月8日現在)。このような事故は、痛ましくてなりません。
「拾おうとする」事故は、幼児や小学生によく見受けられる
一般に、サンダルなど、物が流され、「拾おうとする」行為は、幼児や小学生に多いことがわかっています。
水の中だけでなく、陸地と水面の境界の3〜5mに立ち入る可能性がある時はすでにリスクが高いゾーンであることもわかっています。
国土交通省 河川整備局作成のYouTube動画は、国が作成したものとは思えないほど秀逸!こどもも喜んで見てくれるので、すぐに親子で確認を!
これから川遊びのシーズンとなります。2度とこのような事故が起こらないよう、国土交通省が2021年3月に作成した、こどもにうけること間違いなしのYouTube動画をぜひ、親子で視聴してみてください。
この動画は、RPG風になっています。こどもが好きなYouTubeのゲーム動画と同じ体裁なのです。しかも、「ゲームあるある」のオチを巧みに突きつつ、大事なことを凝縮して伝えてる、秀逸な内容です。これは、今すぐ、親子で確認してほしい動画だと思っています。
スタート画面は、「とある村」から始まります。川の魔物が水難事故をひきおこすため勇者3人が魔物退治に出かけます。出だしからRPGあるあるです。
勇者たちは、かつて魔物を倒した装備で川の魔物退治に出かけ、魔物を攻撃しますが・・。
「川のみず」には、ダメージを与えることができません。
そればかりか、「川のみず」の反撃で、コケで足を滑らせ、頭を強くぶつけてしまいHPがなくなったり、
「ぞうり」が流され勇者(そうりょ)が溺れていくシーンがあるなど、小学生の川の事故で起こりがちなことをわかりやすく描写しています。
さらに、危機に陥ったため、勇者のパーティが「逃げる」を選択した時、お約束の様にすかさず出てくるのが、ボスキャラです。
ボスキャラである「みず魔王」は、「リバー・ストリーム&エントラップメント」という攻撃を繰り出します。
このリバー・ストリームの部分は、水害時の増水も同様のことが起きるので、大人が補足してあげてほしい部分です。補足用におすすめの大人むけ動画は、後述します。
流れがあれば、立っていられないことや、立とうとすることで、石に足がはさまってしまい水没することが描写されています。
そして、ゲームオーバーしてしまった勇者の前に現れるのが、「マスター・リバー」です。「マスター・リバー」の名前からして、あるあるな展開にしびれます。
最重要装備のライフジャケット
マスター・リバーは装備の不備を指摘し、秘伝の書を授けます。
ここで、最重要装備、ライフジャケットについて詳しく解説されていますので、親子でしっかり確認してください。さらに、動画のイラストにはありませんが、こども用には股ベルトがある方が脱げにくくておすすめです。
体にぴったり装着されていないとライフジャケットだけが浮くことになり、命を守れません。
靴はウォーターシューズの方が個人的にはおすすめ
次に脱げにくい靴が紹介されています。動画でおすすめの靴は運動靴となっていますが、それよりも専用のウォーターシューズの方を私は推したいです。流水である川は、体が冷えやすくなるので、保温性のあるウェットスーツ素材のウォーターシューズの方が機能が上です。マジックテープなどで止める仕様の脱げにくいものがより安心です。しかも、運動靴より廉価で手に入ります。さらに、ここ、個人的に重要だと思うのは、ウォーターシューズは、つけ置き洗いで脱水して干すだけで洗濯が完了するのに対し、運動靴は汚れが染みて、擦り洗いも必要で、乾くまで時間がかかるということです。遊んだ後の洗濯がどれだけ大変か知っていれば、安易に川遊びに運動靴を薦めないのでは?と、ちょっとそこはかなり細かいですが、ツッコミたくなりました。
水抜き穴つきヘルメット
さらに、アウトドアの水遊びでは、常識になっている水抜き穴つきヘルメットの紹介もあります。この穴がないと、水の中で首が絞まります。余談ですが、津波避難の際、ヘルメットなどをかぶって避難訓練している地域もあります。落下物の危険性と津波到着時間などによって、1、そもそも何もかぶらず早く逃げた方がよい場合、2、落下物はあるものの津波に飲まれる可能性もある、3、津波はすぐ到着するわけではないが、落下物の方が心配というケースがあり、2の場合であれば、水抜き穴つきヘルメットを選択したほうがよいかもしれません。状況に応じて装備は変わります。
秘伝の書で伝えられているもの
動画では、ライフジャケットを装着した後の、ホワイトウォーター・フローティングポジションという秘伝をわかりやすく伝えてくれています。足が石にはさまれたり、岩のそばの下に巻き込む流れ等の危険を避けるための体勢で川遊びに必須のスキルです。
そして、大人にも覚えてほしいのは、動画でも説明されている正しい救助の仕方です。
飛び込んで助けることが美談になったりするので、それが唯一の方法と誤解されているきらいがありますが、危険度レベル最上位の救助法です。可能な限り、水上からのアプローチをします。こどもが目にする媒体でも安易な救助シーンが出てくるため、こどもたちが勘違いしているかもしれません。必ず伝えておいてほしい内容です。
まほうつかいの10年後がうける
この動画が「防災教育」としても素晴らしいと思ったのは、最後のオチに、自然と遊ぶ楽しさを語ってくれているところです。
まほうつかいの10年後には、驚きました。「まほうのつえ」を、「たもあみ」に替えて、「いきものはかせ」になっているのです。RPGではめったにない驚きの転職ですが、「川の浅いところでは太陽の光がいっぱい届くのでコケが多く、いきものが多い」というトリビアまでも入っていて、川への愛が満載の動画です。他の勇者のその後については、動画を見てのお楽しみに!
大人はこちらも
最後に、大人の方や水害について啓発する方は、公益財団法人 河川財団の以下の動画もご確認ください。ひざ下50cmにかかる動水圧を電磁流速計で観測した動画です。
●流速観測①(流速0.5m/秒時のひざ下にかかる動水圧:1.2kg)
●流速観測②(流速0.7-8m/秒時のひざ下にかかる動水圧:2kg)
●流速観測③(流速1.5-1.6m/秒時のひざ下にかかる動水圧:8-9kg)
流れがあると、ひざ下となる程度の水位でも、これだけの力がかかることがわかります。さらに、同じ場所で測っても、流れが遅くなったり速くなったりすることがあることもわかります。
川で流れがあると水位が低くても流されてしまうことがわかるのはもちろん、水害時に、越水などで流れがあると、これだけの力を受けることも知っておいてください。
水害時、水中でも歩いているイラストのイメージが一人歩きして、「浸水していても杖をつかってマンホールに落ちなければ歩いて移動してもいい」「運動靴であれば浸水した道も歩いて避難してもいい」というミスリードが広がっていることを危惧しています。原則は浸水してからの避難は危険なので、早期避難が重要ということです。それを逃したら垂直避難(上の階など高いところに避難)をまず検討します。
もう悲劇が繰り返されませんように
最後に、楽しい動画を紹介しましたが、亡くなられたお子様やご遺族のことを思うと、今、紹介していいのかどうかも悩みました。つらいお気持ちに寄り添えていないことはお詫びしなければいけません。ただ、どうしても次の事故は避けたいです。国土交通省の動画がとても秀逸なので、親子でご活用いただくことや学校の教材としてもご利用いただくことを願っています。