正しく「落ち込む技術」、そして「気持ちを切り替える技術」
■「正しく落ち込む」ことが重要な時代
あるとき、頭が真っ白になったり、
天を仰いだまましばらく口を閉じることができなくなったり、
額のあたりを押さえたままうずくまったり、
……そんな経験をしたことがないか。
自分が100%悪いこと、自分にほとんど責任がないこと、どちらでもいい。とにかく立ち直るのが難しいほどショックな出来事。
凹んでしまう出来事って、誰にでもある。
いま実際に起きているかもしれないし、これから何度も起きるかもしれない。
そんなとき、どうするか。
いつかは気持ちを切り替えなければならないと、頭ではわかっている。しかし、わかってはいることでも、なかなかその通りにはいかないものだ。
今回は、大変な失敗をしたとき、信じられないようなトラブルに巻き込まれたとき、どのようにして正しく「落ち込む」のか。その技術について解説する。
落ち込まないで気晴らしをしたり、気分転換をはかろうとすれば、かえって思わぬ窮状に陥る恐れがある。
新型コロナウイルスも「正しく恐れる」ことが大事と言われる。それと同じで、「正しく落ち込む」ことを覚えよう。この技術を身につけることで、ネガティブな感情を引きずることなく、気持ちを切り替えることがとても簡単にできるようになる。
■最低でも「24時間」は立ち直れないというときに……
これからは不確実性、複雑性が高い「VUCAの時代」だ。どんなに誠実に生きていても、人生において何度も「落ち込む」ことになる。それはもう避けて通れない。
本を読んだり、ネットで検索すると、落ち込んでいるとき、ツラいときに気持ちを切り替える方法、対処法がいろいろと書かれてある。
たとえば半身浴をして体を休めたり、鎮静効果のあるハーブティーを飲んだり、リラックスできる音楽を聴いたり、深呼吸したり、旅行したり……。
意識を別の方向へ向けることで、気分を落ち着かせることは確かにできる。
しかし、よく考えてほしい。
膝から崩れ落ちるぐらいショックな出来事があったあと、果たしてすぐに半身浴をしようとするだろうか。ハーブティーを飲むためにお湯を沸かすだろうか。
「さて半身浴でもするか」
という気持ちになっている、ということは、もうすでに気持ちが切り替わっている、ということである。そんな気にならないほど立ち直れないことがあったらどうするのか、というのが今回のテーマだ。
目安で言うと、最低でも「1日」「24時間」は、何も手がつかないぐらい茫然自失するような、そんな事態を想定している。
ビジネスで結果を出そうとするためには、大なり小なりリスクを冒さなければならない。果敢にチャレンジした結果、思わぬ事態に発展し、心に傷を負うこともあるのだ。
しかし、すぐに立ち直らないと、そのチャレンジも無駄になる。
■「乱れた感情の家」から脱出しろ!
やってはならないことは、感情を暴走させることだ。
自分のミスであろうが、そうでなかろうが、感情操作ができず、自分を激しく責めて自分の大切なものを壊したり、もしくは周囲に当たり散らしたりしてはならない。
ハリウッド映画を観ていると、感情を爆発させ、大切な人に暴言を吐いたり、物を壊したりするシーンがよく出てくる。映画の中の演出なのだろうが、とても共感を持てない。
感情を制御できない人は再び失敗をやらかす可能性も高くなるわけだから、絶望的になったあとに、どう心の状態を保つのか。そこが大事だ。
NLP(神経言語プログラミング)では、気持ちを切り替えること、別の視点で物事を見つめることを「リフレーム」と呼ぶ。
しかし、別の角度から物事を洞察(キャリブレーション)するためには、必ずいったんその場から離れなければならない。
これを「ディソシエイト」と呼ぶ。
ショッキングな出来事を体験すれば、激しく感情が乱れて当然だ。その感情の中心に、自分の「身」を置いてしまう。
つまり、「乱れた感情の家」の中にいるようなものだ。もしくは「絶望感という名の服」を着用しているようなものと書いたらいいか。
その状態のまま、感情に身を任せて乱心すれば、当然のことながらその「家」や「服」が燃える。再び絶望的な感情に見舞われるだろう。とてもではないが、その状態から離れること――つまり「ディソシエイト」できなくなる。
■意識すべきは「口」だけ
ショックを受けているときは、冷静に現実を見つめることができない。「冷静になれ」「落ち着け」と自分に言い聞かせても、容易ではない。
私も衝動コントロールできないときが多々ある。なので、常にこのようなとき、どう対処したらいいのか。自分の体を実験台にして、PDCAサイクルをまわしてきた。
ぜひ、参考にしてほしいのは、「口」を意識することだ。
パニックになっているとき、意識を向けられる箇所は非常に狭まっている。大局観など、まったく失われているから、局所に絞ったほうがいいのだ。
だから「口」である。
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