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0勝3敗からは皆無だが、1勝3敗からのワールドシリーズ優勝は前例あり。ヤンキースは1勝3敗

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンソニー・リゾー(ニューヨーク・ヤンキース)Oct 29, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 10月29日、ニューヨーク・ヤンキースは、11対4でロサンゼルス・ドジャースを下し、このワールドシリーズの1勝目を挙げた。その前の3試合は、いずれも黒星を喫していた。

 依然として、ドジャースが優位に立っていることに変わりはない。これまで、3勝0敗としながら、ワールドシリーズ優勝を逃したチームは、一つもない。それについては、こちらで書いた。

「0勝3敗からワールドシリーズ優勝は皆無。スウィープを免れたチームも少なく…。ヤンキースは0勝3敗」

 ただ、白星と黒星の推移を問わず、3勝1敗/1勝3敗となったシリーズは、3勝1敗のチームがすべて優勝しているわけではない。

 3勝1敗/1勝3敗のシリーズは、見落としがなければ、今年が51度目。過去50シリーズのうち、43シリーズは3勝1敗のチームが優勝を飾ったが、あとの7シリーズは1勝3敗のチームがワールドシリーズを制している。それぞれの割合は、86.0%と14.0%だ。

 1勝3敗から優勝の7チームは、1903年のボストン・アメリカンズ、1925年のピッツバーグ・パイレーツ、1958年のヤンキース、1968年のデトロイト・タイガース、1979年のパイレーツ、1985年のカンザスシティ・ロイヤルズに、2016年のシカゴ・カブスだ。

 1958年のヤンキースは、ミルウォーキー・ブレーブスと対戦し、●●○●の1勝3敗から、3試合続けて勝利を収めた。この年のシリーズと今年のシリーズは、第1戦にサヨナラ負けを喫したことが共通している。

 また、現在のヤンキースには、1勝3敗からのワールドシリーズ優勝を経験した選手がいる。一塁手のアンソニー・リゾーがそうだ。

 8年前、カブスの一塁手だったリゾーは、ワールドシリーズの7試合で打率.360と出塁率.484、1本塁打と3二塁打、5打点を記録した。スポーツ・イラストレイテッドのトム・バードゥッチによると、リゾーは、第5戦の試合前に、クラブハウスで裸になり、映画「ロッキー」の曲をかけながら、チームメイトの前でシャドー・ボクシングを行い、第6戦と第7戦の前にも、それを繰り返したという。

 なお、2016年のワールドシリーズで、リゾーとともにプレーした選手のなかには、外野手のジェイソン・ヘイワード(現ヒューストン・アストロズ)もいた。第7戦の8回裏、3点リードしていたカブスは、同点に追いつかれた。9回裏と10回表の間に、雨による17分間の中断が生じた時、ヘイワードは、選手だけをウェイト・ルームに集め、スピーチを行った。その直後に2点を挙げたカブスは――敬遠四球で出塁したリゾーは、このイニング2点目のホームを踏んだ――10回裏の失点を1にとどめ、優勝を飾った。

 今年、ドジャースがワールドシリーズを制した場合、ヘイワードも、優勝リングを手にするはずだ。今シーズンの途中まで、ヘイワードは、ドジャースでプレーしていた。

 

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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