F15戦闘機改修の総コストは68機分で6465億円 防衛装備庁が発表
防衛装備庁は4日、航空自衛隊F15戦闘機の能力向上のための改修について、装備品の取得費や維持整備費を含めた総コストが68機分で6465億円(暫定値)になると発表した。
具体的には、電子戦能力の向上や多数目標を同時攻撃できるレーダーの更新、相手の射程圏外から攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」の搭載、搭載ミサイル数の増加などの能力向上の費用に加え、運用維持費を合わせた30年間の総コスト「ライフサイクルコスト(LCC)」が6465億円になると試算している。
主な内訳としては、30年間の運用維持段階の改修に5653億円、教育訓練に404億円、試験などに173億円、施設費用に24億円を見込んでいる。訓練用シミュレータを取得し、教育・訓練態勢を確立することなどが含まれている。
●対象となる68機とは?
防衛装備庁によると、今回の新たな能力向上の改修対象となる68機は、近代化改修を終えた102機のF15J/DJのうち、単座型のF15Jとなっている。残りの近代化改修を受けた複座型のF15DJの34機は、能力向上のための改修に適さないとして対象から外された。
防衛省は、F15J/DJの後期生産機で、J-MSIP(Japan-Multi-Stage Improvement Program:日本多段階能力向上計画)の適用を受けた全機を対象とし、近代化改修を実施してきた。J-MSIP機は導入初期のオリジナルの機体に対し、搭載電子機器を更新・追加した機体のことを指す。1988年4月以降に防衛庁に新規納入された機からJ-MSIPが採用された。F15Jの68機では、機体記号899号機から965号機までの機体と、修理時にJ-MSIPに再生された832号機がこれにあたる。
これに対し、近代化改修に適応できない前期生産機のPre-MSIP機は99機に上っている。これらのF15Jの機体番号は801号から898号となっている(前述の832号機を除く)。こうした「非近代化機」はいち早く老朽化し、米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35AとF35Bに置き換えられる方針だ。
F15は日本の主力戦闘機で最大速度はマッハ2.5。これまでに単座のJ型が163機、複座のDJ型が36機と計199機が三菱重工業で生産され、米マクダネル・ダグラス(現ボーイング)で製造された14機と合わせて計213機が空自で採用された。三菱重工業は1981年から空自への納入を開始し、1999年12月に最終納入機を引き渡した。現在はF15J/DJ合わせて約200機が運用されている。
なお、航空幕僚監部によると、1月31日に石川県沖の日本海に墜落したF15DJ(機番32-8083)は1993年から運用を開始、近代化を終えたMSIP機で累計飛行時間は5960時間だった。
F15の新たな質的な能力向上のための改修事業をめぐっては、開発元の米国側が2020年12月、部品の枯渇などを理由に当初見積額の約3240億円より70%増の約5520億円を提示し、事業費が高騰。部品不足による納期遅れも判明し、防衛省は予算の執行や計上を見送った。その後、搭載予定だった米国製の空対艦・空対地長射程の巡航ミサイル「LRASM」の導入を見送り、約600億円を削減、改修費用は3970億円になった。2022年度予算に520億円を計上して再開する。
なお、米国防総省は、今回のF15Jの能力向上のための改修については、F-15 Japan Super Interceptor(JSI)upgrade program(直訳:F15 日本の超迎撃機向上計画)と呼んでいる。昨年12月30日には米国防総省は、ボーイングにこのJSI事業プログラムの一環として4億7131万3000ドル(約543億円)を上限とする契約を授与したと発表した。F15J改造をサポートするための統合システムの設計と開発、さらには訓練用シミュレータの4機の開発・試験・納入が盛り込まれている。米空軍で実戦配備が始まった最新のF15EXを製造する同社ミズーリ州セントルイス工場で同事業は実施され、2028年12月31日に完了する予定だ。
一方、防衛装備庁は、今回のF15Jの能力向上改修についての4日付の発表文の中で、「国内企業が取得できない搭載機器等についてはFMS調達によるものとし、航空機への搭載のための機体改修は国内企業により実施する」との方針を示している。FMSとは日本政府が米政府から直接契約して調達する有償軍事援助を指す。
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