川崎重工業、2027年度に「国産トマホーク」新SSMの発射試験を実施へ
川崎重工業は2027年度に、現在開発中の島嶼防衛用新対艦誘導弾(新SSM)の発射試験を実施する。同社担当者が10月17日、都内で開かれている「2024国際航空宇宙展」で明らかにした。
この誘導弾は長射程の巡航ミサイルで、相手の脅威圏外から発射できるスタンドオフミサイルとなる。燃費に優れる小型のターボファンエンジンを推進装置とし、飛行機のように翼を有して水平飛行する。射程、形状、性能の面で米国の巡航ミサイル「トマホーク」と共通点が多いことから、「国産トマホーク」「日本版トマホーク」と位置づけられてきた。米国のトマホーク同様、音速に近い「亜音速」で飛ぶ。
陸上自衛隊が2012年度から調達を開始した三菱重工業製の「12式地対艦誘導弾(12式SSM)」に対し、川崎重工業製のこの新型巡航ミサイルは「新地対艦ミサイル(新SSM)」と呼ばれてきた。防衛装備庁担当者は筆者の取材に対し、「(新SSMは)12式SSM能力向上型の先を見据えたもの」などと説明してきた。
新SSMが想定する射程は2500キロとみられ、西日本から発射すれば中国の内陸部にあるミサイル基地にも届くミサイルだ。
防衛省は2023年6月、この新SSMの技術研究として2023年度から2027年度までの5年間で川崎重工業と約339億円に及ぶ契約を交わした。正式案件名は「島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術(その3)の研究試作」で、その5年契約の最終年度となる2027年度に試作品の発射試験が実施される予定だ。
●独自開発の「KJ300」搭載
新SSMには同社が独自開発したスタンドオフミサイル用のターボファンエンジン「KJ300」が搭載される。KJ300は全長950ミリメートル、重量90キログラム、推力365重量キログラム(kgf)の2軸方式となっている。
川崎重工業は新SSMが長射程、低いレーダー反射断面積(RCS)、高い機動性、高い残存性を有するとアピールする。そして、このミサイルが車両、艦艇、航空機の陸海空といった様々なプラットフォームから発射できると説明している。
●新たなスタンドオフミサイル「新地対艦・地対地精密誘導弾」
一方、防衛省は2024年度防衛予算に、三菱重工製の12式地対艦誘導弾能力向上型の地上装置を活用した「新地対艦・地対地精密誘導弾」の開発費として323億円を新規計上した。この新たなミサイル開発については、「長距離飛しょう性能、精密誘導性能など対艦・対地対処能力を向上した新たなスタンドオフミサイルの開発に着手する」と説明した。防衛装備庁が2024年8月30日に発表した「プロジェクト管理対象装備品等の現状について」によると、新地対艦・地対地精密誘導弾は2024年度から2030年度まで研究・開発段階、2027年度から量産・配備段階にそれぞれ入る予定だ。
つまり、新SSMと新地対艦・地対地精密誘導弾の研究開発が同時並行している。
防衛装備庁は21日、筆者の取材に対し、「島嶼防衛用新対艦誘導弾事業と新地対艦・地対地精密誘導弾事業は、異なる事業です。他方で、新地対艦・地対地精密誘導弾は、他の研究開発成果等を活用して研究開発を行う予定です。この際、島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究で得られた成果も反映する予定です」と回答した。
防衛省の「令和5年度政策評価書(事前の事業評価)」では、新地対艦・地対地精密誘導弾の開発事業は、島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究、12式地対艦誘導弾能力向上型、さらに目標観測弾の設計成果を活用して、開発経費の抑制を図ると説明されている。
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