日本eスポーツ連合さん、うっかり自ら「プロ制度は不要」を証明してしまう
eスポーツ選手のプロライセンス制度を提供している日本eスポーツ連合(以下JeSU)さんが提出者となったノンアクションレター制度に基づく法令適用事前確認手続きの回答書が開示されたようです。以下、公示文書へのリンク。
法令適用事前確認手続照会書
https://www.caa.go.jp/law/nal/pdf/info_nal_190805_0001.pdf
その解答書
https://www.caa.go.jp/law/nal/pdf/info_nal_190903_0002.pdf
詳細は上記リンク先を見て頂ければとは思いますが、ザックリと纏めますとその内容は
ゲーム会社自身が賞金を拠出するeスポーツ大会に関して;
1.大会等の参加者をライセンス選手に限定するもの
2.一般参加を可能とするものの、ライセンス選手のみに賞金を提供するもの
3.賞金の提供先に資格制限を設けないが、一定の方法で参加者を限定した上で大会等の成績に応じて賞金を提供するもの
という3つの大会運営方式に関して景品表示法の景品規制が適用されるかどうかを消費者庁に確認し、消費者庁より「当該大会等における当該参加者への賞金の提供は(中略)『仕事の報酬と認められる金品の提供』に該当し、景品類の提供に当たらない」との公式回答が出たということとなります。
ただ、ここで論議となるのはJeSUさんが設定した1~3の大会運営方式は、ほぼ3つ目に示したケースで1,2に示したケースが包括出来てしまっており、要はプロライセンス制度など存在しなくとも「一定の方法で参加者を限定した上で大会等の成績に応じて賞金を提供する」という形式を採っていれば、そこで提供される賞金は「仕事の報酬」として合法的に提供が可能となり得るということ。JeSUさんは今回の法令適用照会によって図らずも「自らの提供してきたライセンス制度そのものが要らなかった」という事を証明してしまったこととなりますが、実はこのことは私自身は既に2017年12月の時点で同様の説明を行っていた事案となります。以下当時のエントリへのリンク。
日本ゲーム界のガラパゴス化:プロゲーマー認定制度なる謎制度が発足
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9722137.html
そして非常に残念な事実は、JeSUさんがこれまで1年半に亘ってゴリ押ししてきた不要なライセンス制度の存在によって、明確に不利益を被ってきたゲームプレイヤーが存在してしまってきたこと。以下、該当する最も有名な事案へのリンク。
「ストV AE」大会でももち選手が7位入賞も10万円しか賞金受け取れず 物議を呼んだ“プロ制度”、JeSUの見解は
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1902/22/news129.html
上記は2018年に行われたカプコンカップにおいて、上位入賞したプレイヤーがJeSUの提供するライセンスを保持していないという理由によって、本来設定されていた上位入賞賞金を満額取得することが出来ず、10万円にまで減額されたという事案です。当時、この問題に対してJeSUは
・プロゲーマーライセンス制度について消費者庁を含めた各方面に確認を取った上で発行したもの
・ライセンス制度に賛同し、公認タイトルになっている競技に関しては、いまの法を順守する仕組みで継続して大会運営が行われる
との声明を発表していましたが、そもそもカプコンカップ自体が冒頭の法令適用確認で3つ目の大会形式として示された「一定の方法で参加者を限定した上で大会等の成績に応じて賞金を提供するもの」に該当する大会そのものなのであって、JeSUのライセンス制度適用は不要な「上乗せ」規制でしかなく、最初から必要がなかったということになります。
JeSUは、これまでも彼らが提供するライセンス制度に関して法的見解をメディアから求められると、決まって「プロゲーマーライセンス制度について消費者庁を含めた各方面に確認を取った上で発行した」と水戸黄門の印籠かのように「関係省庁の意向」をにおわせてそれを権威づけてきたワケですが、以前から私が指摘してきた通り本当にそんな意向は存在したのでしょうか?
【参考】日本eスポーツ連合(JeSU)、高額賞金問題に関するまとめ その2
https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20180222-00081875/
ということで今回のJeSU自身による法令適用の確認によって、図らずもeスポーツのプロライセンス制度は「必要がない」ということが証明されることとなりましたが、JeSUさんは本件に関し9月12日から9月15日まで幕張メッセで開催される東京ゲームショウ2019にて、報告を行うということです。ぜひメディアの皆様はこの1年半にも亘ってゲーム業界を騒がせたプロライセンス制度を巡る騒動と、その顛末をこの問題の総括の意味も含めて改めて追及して頂ければ幸いです。