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タイのカジノ合法化の進展:明確に日本をターゲットに

木曽崇国際カジノ研究所・所長

近年、タイにおけるカジノ合法化の議論が急速に進んでおり、その実現可能性が高まっています。統合型リゾート(IR)を含むカジノの合法化は、タイの経済成長と観光産業の活性化を目指す重要な施策として位置づけられています。

2023年10月、タイの下院は統合型リゾートの合法化を探るための特別委員会の設立を支持しました。この委員会はMove Forward党やPheu Thai党などの主要な政治勢力からの支持を受けており、特に与野党の協力が強調されています​ 。カジノ合法化の主な動機は、観光収入の増加、違法ギャンブルの撲滅、そして外国投資の誘致です。これにより、タイは経済成長と社会的安定を実現することを目指しています​ 。法案のドラフトが完成し、ライセンス要件や税制措置などの具体的な内容は既に明確になってきています。

また、カジノ合法化に伴う社会的影響を最小限に抑えるため、法案にはさまざまな社会的対策が含まれています。例えば、タイ国民向けの入場料徴収や、特定の個人のカジノ入場禁止プログラムが設けられる予定です。これにより、ギャンブル依存症や社会的問題を予防するための措置が取られています。

統合型リゾートの開発予定地としては、バンコク首都圏や東部経済回廊、プーケット、北部および東北部地域など、複数の地域で検討が進んでいます​。バンコクのスワンナプーム国際空港の新ターミナル建設や、プーケットの新しい国際空港建設計画など、タイ国内では各所で観光インフラの強化が進行中です。これら地域では、観光客のアクセスが向上し、統合型リゾートの成功に寄与すると期待されています。

ライセンスの発行については段階的なアプローチが取られる予定です。最初の段階では、大規模プロジェクトに対してのみライセンスが発行される見込みです。具体的には、最低投資額が1000億バーツ(約28億ドル)以上の大規模プロジェクトに対して、1つのライセンスが発行される計画です。その後、初期の成功を基に中小規模のプロジェクトに対するライセンスも発行される可能性があり、最終的にはタイ国内で5から8つの統合型リゾートが設立される見通しです。これらのリゾートは、それぞれが異なる地域に配置され、地域経済の活性化と観光客の分散を図る計画です。

現在タイでは、2024年内に法案の可決が期待されており、早ければ2029年には最初の統合型リゾートがオープンする可能性があります。「日本(大阪)で統合型リゾートが開業する2030年よりも前にタイでの開業を実現すること」これは関係者により明確な目標として語られています。またカジノ税率も日本が30%を賦課する予定であるのに対して、タイでは17%とかなり低めに抑えられる予定であり、日本を含む近隣諸国との国際競争を明確に意識したものとなっています。

タイ政府の経済ビジョンに基づくこの大規模な取り組みは、観光産業の発展と経済成長に大きく寄与することが見込まれています。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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