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日本では「恋人がいる割合はいつも3割しかいない」が、諸外国の若者の恋人有率はもっと高いのだろうか?

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

恋愛しているのはいつも3割

いつの時代も恋愛相手がいる割合は男女ともせいぜい3割で変わらない。少なくとも、1982年以降の出生動向基本調査で見ても、多少調査年において上下はあったとしてもその傾向はまったく変わっていない。これを私は「恋愛強者3割の法則」と呼んでいる。

参照→40年前から「恋愛強者は3割しかいない」のに「若い頃俺はモテた」という武勇伝おじさんが多い理由

これに対して「そんなことはない」と反論してくる者もいる。1980年代は最新の2021年よりも恋愛している若者は多かった、と。

しかし、その根拠は「異性の友達がいる」ことを恋人として換算してしまっているので実情に合わない。友達は友達であって恋愛相手ではない。

「ドライブをしたり、食事に行ったりしている間柄なのだから恋愛相手といって構わない」とか言われると頭を抱える。1980年代、まさに、クルマで送り迎えしてもらったり、食事だけご馳走になるだけの男は「アッシー」「メッシ―」と呼ばれていたのである。単なる都合のいい道具でしかなかったものを「恋人」と妄想するのはさすがに世間知らずがすぎるだろう。

日本以外の国はどうか?

さて、そんな「恋愛強者3割の法則」であるが、日本以外の諸外国ではどうだろうか。

イメージとして西欧諸国の若者は、カップル文化があり、さぞ「恋人有率」も高いのだろうと思われるかもしれない。

以前から内閣府が実施していた「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」があり(2023年からはこども家庭庁に移管)、その2013年から2023年までの数字の推移を比較してみよう。対象は、13-29歳までの若者であるが、この中は、事実婚を含む有配偶者および離別死別などの婚歴有の独身者も含むので、未婚者だけを抽出して、その「恋人有率」を算出している。韓国とイギリスに関しては2023年は実施されていない。

結果は以下の通りである。

アメリカやイギリスなどは40%を超えて高い割合だが、2023年の比較でいえば、日本25%に対し、ドイツは29%、フランスも35%、スウェーデンも33%であり、それほど大きな差はない。「どこの国も3割」とまで乱暴なことは言わないが、さりとてどこの国も率はともかく、経年推移で大した変動はないということも事実である。むしろ、ドイツだけ、2013年から徐々に低下して10年間で13%ポイントも急降下しているのが心配なくらいである。

年齢別の恋人有率

とはいえ、これは13-29歳という年齢帯である。13-14歳などほぼ「恋人がいない」年齢も含むことに留意したい。日本においても「恋愛強者3割」といってるのに3割に達していないのはそのためである。

20歳以上だけで見れば、大体3割といって差し支えはない(こちらの年齢別数値は外国の数字は公表されていない)。

5年前と比べて、20-24歳の恋人有率が若干増えているのは幸いだが、いずれにしても大きな違いはない。とにかく、「いつも恋愛相手がいる若者というのは3割」なのである。

勘違いしないでほしいのは、3割しかいないからといって、いつかいなくなってしまうわけではないことだ。この3割は常に入れ替わる。

恋愛というものは、相対的なものである。絶対的にモテる人という特別な人は別にすれば、今いる中で「相対的に誰がいいか」という判断基準でモテは決まる。

わかりやすく言えば、圧倒的に男性が少ない職場であれば、一般的にモテる部類でなくても希少価値で相対的にモテる

たとえば、百貨店やスーパーなどの流通業に就職する男女比は圧倒的に女が多い。反対に、鉄道オタク系は男の比率が高いが、その中に女が入っていれば、それは「オタサーの姫」としてモテることになる。

写真:イメージマート

いつまでも順番が巡ってこない

つまり、3割の恋愛中の未婚男女が次々と結婚してくれればくれるほど、恋愛弱者だった7割の中から、また3割が押し上げられることにもなる。

が、昨今の未婚化で、恋愛強者の3割がなかなか結婚しない。しないまま、複数相手の恋愛を繰り返せば繰り返すほど、7割の方には「いつまでもお鉢が回ってこない」状態になる。マッチングアプリで恋愛弱者男性がまったく相手と出会えることがないのも同じ理屈である。

参照→マッチングサービスなのに「会えた人数ゼロが3割」問題の背景にある残酷な現実

良し悪しは別にして、かつては、社会的にも、職場的にも、「結婚するのが当たり前」という世間の圧力があった。特に、職場においては、モテる男女がいつまでもフラフラと「結婚なき恋愛」を続けていられる雰囲気でもなかった。

そうやってモテる方から順次「年貢を納める」ことで、結果として恋愛弱者層も「そのうち俺のターンが来る」と期待できたものだった。

写真:アフロ

しかし、今では職場においては結婚の話題も恋愛相手がいるかどうかの詮索もNGの時代である。恋愛強者は、誰にも知られず複数との恋愛を謳歌する一方で、いつまでたっても順番が巡ってこない恋愛弱者の「不本意未婚」化も進むのだ。

恋愛強者がようやく40歳近くで結婚したとしてももう遅い。残りの7割も自動的に40歳の未婚おじさんになっており、恋愛対象にならなくなってしまっている。

「最近の若者は結婚しなくなった」のではなく、「いつまでも出番が回ってこなくなってしまった」のである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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