映画『レザレクション』(2022)に学ぶ、マインドコントロールとその方法
昨年のシッチェス・ファンタスティック映画祭で上映された『レザレクション』は、マインドコントロールをテーマにしている。題名のレザレクション=Resurrectionとは「復活」という意味で、キリストの復活など宗教的なニュアンスを含んでいる。
「教祖」(=マインドコントロールする人)が復活すると(=再び現れる)と、抜けられたと思っていたマインドコントロールも復活してしまう、という意味で名付けられたのだろう。
■作品の中でのマインドコントロール
以下、この作品を見て、マインドコントロールについてわかったことを書いていきたい。
ただし、マインドコントロール一般の話ではなく作品内でマインドコントロールがどう扱われ、どう表現されていたか、それらを心理学の専門家ではない私がどう理解したかということであることを、お断りをしておく。
●マインドコントロール「した」人の特徴
外見が魅力的。笑顔が優しい。老若男女を魅了するカリスマの持ち主。頭の回転が速くおしゃべりがうまい。インテリで知識が豊富。ターゲットよりも年上。
●マインドコントロール「された」人の特徴
十代で若く未熟。夢見がち。イノセント。未来に漠然とした不安。
●マインドコントロールの手順
①良い人・おだて期
まず、良い人物を演じて両親を味方に付ける。次に、美辞麗句を惜しまず、おだて、誉めそやして、ターゲットをたらし込む。
②家族からの隔離と神懸かり
両親が祝福し背中を押す形で、二人暮らしがスタート。隔離された環境下で「神の言葉が聞こえる」とか「未来がわかる」とかの神懸かりを信じさせる。
③修行とルール設定
「神に気に入られるため」「徳を積むため」などの理由で、修行がスタート。断食と祈祷の強制。「絵を描くな」「家から出るな」「靴を履くな」などのルールが課され、違反には激しい苦痛を伴う体罰が科される。
と同時に、違反はより厳しい新たなルール作りの口実とされる。コントロール下に置くためのキーワードは「愛しているから」とか「あなたのためにやっている」。
④罪悪感で依存の総仕上げ
マインドコントロールの最終段階。重大なルール違反(脱走など)への重罰として、最も大切にしているものを奪う。
「あなたのせいで●●が失われた」「永遠に戻ってこない」「ルールを守っていればこの悲劇はなかった」。キーワードは「あなたのせい」「あなたの弱さのせい」。
私が悪かった、私の罪だと、自分で自分を責めさせることで心身を弱らせて、依存を完全にする。
●物理的な手法では、解除できない
マインドコントロールは抜けたと思っていてもなかなか抜けられない。
この作品の主人公は「逃げること」で距離を置き、年月の流れに任せ「忘れること」で抜けようとし、それは成功したかのように見えていたが、やはりそういう物理的な手法ではコントロールは解けない。
教祖が再び現れれば、マインドコントロールも再び現れる。
何らかの心理的な解法が必要だ。
■ラストの解釈(ネタバレなし)
ラストの解釈の仕方で、この作品の評価は大きくわかれている。
見たままだとすると、「何だこりゃ!」となって低評価に。私は「見たままではない」と解釈し、自分なりに整合性を持たせて高評価とした。
ラストだけが全体のトーンと大きく外れており、梯子を外された気になる人が出るのはよくわかる。だが、あれ、監督の仕掛けじゃないかな……。
ラストの解釈で、評価に天と地の差があるという点では『ゴーストランドの惨劇』や『マンティコア』に似ている。
レベッカ・ホールとティム・ロスの演技は素晴らしいの一言で、ラストまではすんなり行けるが、そこで「えっ!?」となる。
ぜひ、見て感想を聞かせてほしい。
参考記事
※見てほしい胸糞作品がまた一つ。映画『マンティコア』(少しネタバレ)
※写真提供はシッチェス映画祭