Apple Vision Proのヤバい特許(2)
ちょっと間があいてしまいましたが、6月に書いた記事の2回目です。Apple Vision Proの開発に関与してきた、脳神経科学を専門とするエンジニアSterling Crispin氏がX(ツイッター)で言及していた特許の解説です。
この特許のポイントは「(瞳孔の反応によって)ユーザーがクリックする前にクリックを予測する」というSFのようなアイデアです。特許番号はUS11119573、発明の名称は、”Pupil modulation as a cognitive control signal”(認知制御シグナルとしての瞳孔変化)、実効出願日は2018年9月28日、登録日は2021年9月14日です。日本への出願は確認できていません。件のCrispin氏は発明者としてはクレジットされていません(同氏の研究チームが発明したということだと思います)。
Apple Vision ProのようなHMDにおいて、視線トラッキングでUIを実現することは周知と思いますが、瞳孔の変化というのはまだ比較的珍しいのではないかと思います。ユーザーインターフェース系の発明は長期にわたって様々なアイデアが出尽くしており、ちょっと思い付きで作ったようなアイデアでは”車輪の再発明”になっている可能性が高く、この特許のように地道な基礎研究に基づいた斬新なアイデアでないと特許化が困難になっているように思えます。
タイトル画像の図で説明すると、ユーザーの瞳孔の直径(45)の時間的変化を測定します。直径がピークになる時にユーザーが見ていたものがそのユーザーが関心があるもの(たとえば、クリックしようとしている項目)であると推測できることが実験により明らかになっています。これを利用して「ユーザーがクリックする前にクリックを予測する」ことが実現できます。
具体的な、権利内容を見てみましょう。クレーム1の内容は以下のとおりです。
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