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飲食店と料理人に知ってもらいたい、労働力を確保して技術力を向上させる新たなサービスとは?

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

Spaceworkがリリース

飲食店の助けとなる可能性を秘めたサービス、Spaceworkが正式にリリースされました。

Spacelook株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:谷口 怜央、以下Spacelook社)は「カフェ/レストラン」などで「1日限定の仕事」ができる1日求人アプリSpaceworkの運営をしております。7月8月の約300マッチングの試験運用を経て本日9/9(土)に正式リリースをさせていただきましたことをお知らせ致します。

出典:PR TIMES

Spaceworkは飲食店における雇用のマッチングを行うサービスです。

サービスの流れ

Spaceworkを使用するにあたり、具体的には以下のような流れとなっています。

1. 1日限定の仕事デイワークを探す

2. メッセージで応募をする

3. 契約もアプリ内で完結

4. 相互レビューを行う

5. 給与支払いはSpacelook社が代行

出典:PR TIMES

導入した飲食店と登録したユーザーとをマッチングし、応募・面接・契約といった実働以外の全てをサポートするとも説明されていますが、まさにその通りでしょう。

このサービスには期待したいことがあります。

労働力の確保

飲食店、それも町場の飲食店であれば、週に一日休みも普通であり、労働時間も長いというのが普通です。そのため、慢性的に人手不足になっており、現場にはとても負担がかかっている現状となっています。

毎日ぎりぎりのところで営業している飲食店では、たった一人が欠けただけでもオペレーションは大変になるでしょう。そういった場合、1日だけヘルプが欲しい時になど、Spaceworkはとても有用です。

相互レビューを行って透明性を高めたり、給与の授受を代行して双方の負担を軽くしたりしているところもよく考えられていると言ってよいでしょう。

ドタキャンやノーショーなど客を緊急に募りたい時に「ごひいき予約」「キャンセルプロテクション」などのサービスが生み出されていますが、Spaceworkはスタッフを緊急に募りたい時に役に立つサービスとなりそうです。

スタジエの促進

今ではフランスの星付きレストランのスーシェフの多くが日本人であると言われており、日本人の料理人が実力をつけ、海外の有名店で活躍の場を見付けられています。しかし、数十年前には、フランスへ行くには師匠のツテを辿るか、とりあえずフランスへ行ってから働きたいレストランにひたすら履歴書を送り付けたり、訪れたりして、働き口を見付けるか、どちらかしか手段がありませんでした。

働き口を見付けるのは主に若い料理人であり、今後のキャリアを考えて、このレストランで修行すれば自身の成長につながるという想いから門戸を叩いて修行に身を投じています。当然のことながら賃金も安く、勉強するために働くので、「スタジエ」=「研修生」と呼ばれています。希望の飲食店でスタジエとして採用されればよいですが、そういった飲食店は募集数に対して応募数が多く、採用の競争が激しいだけに、なかなか思うようにいかないことの方が多いでしょう。

ただでさえ労働時間が多い環境の中で手紙を書いて送ったり、直接店へ訪れたりするのはとてもコストがかかります。最近ではFacebookを使って募集することがよく見掛けられますが、限定的です。よりオープンに、より効率よくマッチングできるサービスがあれば、スタジエを促進することができます。

才能ある料理人が素晴らしい飲食店で研鑽を積む可能性が増えれば、日本の料理界にとっては価値があるでしょう。人材の流動性が高まれば、料理人はこれまで以上に他のジャンルへの修行も容易となるので、世界各国の料理が複雑に融合して紡ぎ出される現代の美食においては、日本の料理人が優位に立つ可能性も考えられます。

1日の限定

期待する一方で、希望したいこともあります。

開発や給与支払いなどのオペレーションをスムーズにするために、労働日数を1日にだけ限定したのは理解できますが、1日しか選択肢がないのはやはり柔軟性に欠けるでしょう。

飲食店にとっては、例えば特定の1週間だけ労働力を確保したい場合に、毎日異なる人が働きに来るよりも、当然のことながら同じ人が働きに来た方が効率的です。料理人にとっては、たった1日だけスタジエとして働くだけでは、大きな成長につなげることが難しいかも知れません。

サービスが安定してきたら、1日労働だけではなく、1日から4週間労働くらいまでを任意で選べたり、任意の日をいくつか選べたりできるようになれば、飲食店はより労働力を確保し易くなり、料理人はより技術力を向上させられるのではないでしょうか。

人材不足と人材流動の問題

今後の展開としては、以下のように記されています。

Spaceworkでは、今後ご導入いただく飲食店様の拡大とユーザーである学生やフリーター層の獲得を行っていきます。

また、Spaceworkは飲食店に限らずありとあらゆる職業をカバーすることで、「好きな時に好きなだけの仕事」ができるライフスタイルを構築していきます。

出典:PR TIMES

私としては、Spaceworkは飲食店を救うサービスのひとつであると考えているので、他の職業に広げるのではなく、飲食店にターゲットを絞って徹底的にブラッシュアップしてもらいたいと願っていますが、残念ながら、そうはいかないようです。

まずは飲食店で着実に実績を残し、そこで成功モデルを構築してから、他の業界へと進んだ方がよいのではないでしょうか。Spaceworkには是非とも飲食店の人材不足と人材流動の問題を解決してもらいたいと期待しています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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