「飛ばないかもしれない飛行機」 ノルウェーでの実体験 第二弾(ヴィデロー航空版)
今年の夏はノルウェーで2社の航空会社であるノルウェージャン(ノルウェー・エアシャトル)とヴィデロー航空の欠航騒動に関するニュースが目立っていた。
筆者も取材のために何度か飛行機を利用した。どうしてもこの2社で飛ばなければいけない時があり、多少ハラハラしていた。結果、2度、突然の欠航に遭遇することになった。原因は天候ではない。
最初は7月初旬に、西部フォルデから首都オスロへと向かうヴィデロー航空での便。空港で突然知らされ、結果として現地のホテルに引き返し一泊することになった。
そして2度目は8月後半に起きた。この時期はすでにノルウェーでは「夏休み」は終わっている時期。まさか欠航にまた遭遇するとは思っていなかったため、衝撃を受けた。
オスロから北部ロフォーテン諸島に向かう途中、乗り換え地点であるボードー空港で起きた。
「ノルウェーで夏の欠航シーズンに遭遇するとこうなる」。体験談第二弾を書くことになった。
ノルウェーでの夏の観光の際には、「このようなこともあるかもしれない」と頭の隅にいれておくと、精神的なショックをおさえられるかもしれない。
飛行機が飛ぶまであと1時間もない時、空港内でアナウンスが入り、名前で呼び出された。「スーツケースを紛失したのか?」とは思ったが、「飛ばないだろう」とは思いもしていなかった。
サービスカウンターに行くと、年配の女性が無表情で「こちらへおいで」と合図をしている。
「あなたの飛行機は飛びません。これが明日の朝8時のチケットです。今夜はここのホテルに泊まってください。迎えのタクシーはあと10分後に来ます」。
目の前にあるのは、すでに印刷済みの明日の便のチケット。
「なぜ?」と聞くと、「スタッフが病気になったため」。
「なぜもっと早くに、SMSや電話で連絡してこなかったのか」と聞くと、「私たちも今知ったこと」という回答だった。
無表情のスタッフは、これまでも同じ体験をしてきたのだろうか。「クレームがあるのなら、担当部署に電話してください」と電話番号が書かれた名刺を差し出された。
タクシーの運転手がもうすぐくるというので、時間はなかった。モヤモヤしながらも、ホテルの宿泊費、その日の夜の食費、明日の朝の送迎、タクシー料金などはどうなるのかなどを急いで聞いた(全て航空会社負担)。
自分でスーツケースを取りに行き、タクシーの運転手がどこに来るかわからず、受付スタッフと何度も細かいやり取りをした。
受付には、ほかにも同じメッセージを告げられ、呆然としているノルウェー人の姿があった。
中型のタクシーがやってきて、同じ便に乗るはずだった約10人はホテルまで同乗することになった。ヴィデロー航空の欠航には慣れているのか、運転手は冷静に明日の説明などをしていた。
だが、車内で小さな問題が。イスが足りず、筆者が座る場所がない。
「立っていていいよ」と運転手に告げられた。ちなみに、タクシー車内で乗客が運転中に「立ったままでいい」というのは、問題があると思う。事故が起きたら、シートベルトをしていない筆者は怪我をしていたかもしれない。
またも困惑し、足元をみると、椅子から外したチャイルドシートが床にある。「しょうがない」と思い、疲れていたのでそこに座った。もちろん運転手や乗客に笑われた。
同乗しているノルウェーの人々はロフォーテン諸島に住む地元の人々だった。「イライラしないのか」と聞くと、「ヴィデローの欠航は今に始まったことじゃない」と、笑いながら子連れの母親は答えた。
「ヴィデロー欠航の方々ですね」。ホテルに着くと、スタッフは慣れた様子で、部屋の鍵を渡した。
ホテルのレストランでは、店員が慣れたように説明する。「ヴィデロー欠航のお客様には、定番のおすすめのメニューがございます。もちろん、他のメニューも選ぶことが可能です。お酒をのぞいて、おひとり様306ノルウェークローネ(4300円)であれば、ヴィデロー航空が負担します」。
タクシー運転手やホテルの対応をみると、同社の欠航はよくあることのようだった。
とはいえ、観光客のその後の予定が欠航で狂ったとしても、同社は他の部分は負担はしない。予定がない人であれば問題はないだろうが、スケジュールが詰まっている人であれば笑いごとではない。
次の日の朝、タクシー運転手がホテル前にやってきた、朝の便で、目的地には半日遅れて到着した。
ヴィデロー航空からは、前回と同様、謝罪の言葉は一切なかった。
ちなみにノルウェー・エアシャトルといえば格安航空券が有名だが、ヴィデロー航空のチケット料金は高い。今回は往復で8万円以上を支払っていた。
これまでの記事にも書いたが、ノルウェーで夏に観光をするときは、ノルウェー・エアシャトル航空とヴィデロー航空においては、「飛ばないかもしれない」と心構えをし、カスタマーサービスはあまり期待しないほうがいいだろう。
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Photo&Text: Asaki Abumi