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サモラーノ、アジャラ、ケーヒルのふわりと浮くヘディングと上田綺世の類似性

杉山茂樹スポーツライター
イバン・サモラーノ(写真:ロイター/アフロ)

 サッカー界で最近、論議を呼んでいるのがヘディングだ。選手の脳に著しい影響を与える。将来的に認知症を患う可能性が高いとするデータが明らかとなり、制限を加えるべきだとの声が相次いでいる。

 グラスゴー大学の研究によれば、サッカー選手が引退後、年齢を重ねていく中で、認知症など神経変性疾患で死亡するリスクは、一般の人の数倍に及ぶとのこと。かのボビー・チャールトンが認知症を公表。今年7月に亡くなった兄のジャッキー・チャールトンを含む、1966年W杯優勝メンバーの多くが認知症を患っていることも、議論が活発化する理由とされる。

 UEFAはすでに、育成年代の選手が行うヘディングの練習に制限を加える方針を打ち出しているが、医学的な解明が進み、万が一、頭部を使ったプレーが手と同様に禁止される事態になったら、サッカーはどう変わるだろうか。

 使用できる部位としては、胸や肩が一番上になるので、高さを競い合う空中戦は望めなくなる。コーナーキックでキッカーが蹴るボールも、低い弾道になるだろうし、これまで高い身長でないと務まらないとされたセンターバック、ストライカーさらにはゴールキーパーも、その従来像を変えることになるだろう。こう言ってはなんだが、低身長国、日本にとって、これは歓迎すべき話になる。チーム力はワンランクもツーランクも上がるはずだ。

 ヘディング禁止となれば、プレーは足技が中心となる。ボール操作術が最優先される。日本にとってありがたい話である一方で、サッカーゲームから迫力、冒険心が失われる可能性がある。

 ヘディングシュートは、決まった瞬間、事件性の高い衝撃的な出来事に映る。スタジアムを華やいだムードにさせる力もある。足で蹴ったゴールより、サッカー独得の味わいがある。全得点中、足で蹴ったゴールとヘディングシュートの割合は、一般的にだいたい8対2と言われるが、その2割を失えば、サッカーゲームはバラエティではなくなる。

 ヘディングシュートの中でも、心をぐっと惹かれるのは、身長の高くない選手が決めるヘディングだ。長身選手がその恵まれた体躯を活かしてドスンと決めるゴールも、それはそれで魅力的だが、敢えて言うなら、それはどこかハンドボール的であり、バレーボール的であり、バスケットボール的だ。非日本人的と言ってもいい。けっして大きくない選手が決めるヘディングシュートに筆者は、よりサッカーらしい貴重さを感じる。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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