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北朝鮮が電磁パルス攻撃を手中にしたという衝撃

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(322)

長月某日

 北朝鮮の国営メディアは3日午後、「大陸間弾道弾ICBMに装着する水素爆弾の実験を3日正午(現地時間)に行い完全に成功した」と発表した。北朝鮮の核実験は2006年以来6回目で爆発の規模は過去をはるかに上回る。

 この実験を行う前に朝鮮中央通信は、大陸間弾道弾ICBMに搭載する水素爆弾を金正恩委員長が視察する様子を伝え、「水素爆弾には電磁パルス攻撃(EMP)を行う能力も加えられた」と発表した。

 電磁パルス攻撃(EMP)は、宇宙空間で核弾頭を爆発させることにより発生した電磁パルスが地上数百キロから一千キロの範囲で電子機器の機能を麻痺させ、あらゆるコンピューターを長期にわたり機能停止させることを可能にする。

 地上で爆発する核爆弾が人間や建物を破壊するのとは異なり、人間や建物を破壊しない代わり放送や通信、産業機械、交通機関、医療用コンピューター、金融機関のコンピューターを機能停止と情報喪失に追い込む。首都圏の上空で爆発させれば国家機能は麻痺して収拾がつかなくなる。

 この攻撃は地上で爆発させないことから、ミサイルを大気圏に再突入させる技術を必要とせず、当然ながら相手国のミサイル防衛は何の役にも立たない。その技術を北朝鮮が獲得したとなると問題は深刻である。

 これまで米国の専門家は北朝鮮が射程距離の長い大陸間弾道弾ICBMを持ったとしても、大気圏に再突入させる技術はまだ不十分とみてきたが、北朝鮮は再突入の技術がなくとも米国の軍事と経済を麻痺させる技術を獲得したことになる。

 またせっせと米国のミサイル防衛兵器を買うことが北朝鮮のミサイル攻撃から日本を守る唯一の手段だとしてきた日本政府はバカを見ることになり、地面にうずくまるのが避難訓練だと教えられた国民もまた何をしているのかということになる。最近の北朝鮮が日本をからかうようになったのはそうしたことと無縁でないかもしれない。

 フーテンが電磁パルス攻撃(EMP)を知ったのは冷戦末期である。米国の雑誌「ニューヨーカー」に記事が掲載された。著者は軍人だったと記憶している。当時は米ソ冷戦が終わっておらず、ソ連の軍事的脅威を国民に教え込む一環として電磁パルス攻撃が紹介された。

 内容は、米国上空の宇宙空間でソ連が核を爆発させれば、米国のコンピューターは機能が破壊され米国の経済はもちろん軍事関連施設もすべて機能麻痺に陥る。それを防ぐには銅線を使っていた通信回線をすべて光ファイバーに換えなければならない。光ファイバーならば影響を受けずに済むという記事であった。

 その記事を受けて当時のアル・ゴア上院議員は全米に光ファイバーを張り巡らす必要性を訴える。後に副大統領となったゴアは「ファイバー・トゥ・ザ・ホーム(家庭に光ファイバーを)」を主要政策に掲げた。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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