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「私は、だからKOを目指すのです」ガバリョ戦直前、ノニト・ドネア独占インタビュー

杉浦大介スポーツライター

12月11日 カリフォルニア州カーソン

ディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク

WBC世界バンタム級タイトル戦

王者

ノニト・ドネア(フィリピン/39歳/41勝(27KO)6敗)

12回戦

暫定王者/指名挑戦者

レイマート・ガバリョ(フィリピン/23歳/21戦全勝(18KO))

 39歳になった“フィリピーノ・フラッシュ”のリング登場が間近に迫っている。

 5階級制覇王者のドネアは12月11日、現在保持するWBC世界バンタム級王座の指名戦としてカリフォルニア州カーソンで同級暫定王者ガバリョの挑戦を受ける。ガバリョは実績では大きくドネアに劣るものの、21戦全勝(18KO)という優れた戦績の持ち主。同国人同士のエキサイティングな戦いが期待できそうだ。

 2019年11月の第1戦以降、宿敵・井上尚弥(大橋)との再戦の機会を追い求め続けるフィリピンの英雄は、どんな思いで今戦に臨むのか。9日、ガバリョ戦の記者会見前に行った独占インタビューでその胸中をじっくりと語ってもらった。

 インタビュー第1弾 タイトル戦前のノニト・ドネアに独占インタビュー。「また日本で」井上尚弥との再戦への思いも語った

驚異の39歳、2021年2戦目のリングへ

――あなたはすでに多くを成し遂げ、何かを証明する必要はない立場ですが、ガバリョ戦でも依然としてKOやファンを喜ばせることを意識して戦うのですか?

ノニト・ドネア(以下、ND) : もちろん常にKOは狙いますよ。なぜなら、私はそういうボクサーだからです。KOで試合を終わらせるというのも、私が自分自身に課しているチャレンジの1つ。だからKOを目指すのです。

――身体が大きくなっているという話をしていましたが、具体的にはどういうことでしょう?

ND : より筋肉がついたということです。5月のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)戦でも力強く感じられていましたが、今ほど筋肉がついていなかったはずです。以前の試合では、ファイトウィーク期間中の私の身体は今のようではありませんでした。私の妻と一緒にストレングス&コンディショニングに磨きをかけてきた結果だと考えています。

リスペクトし合う同士のフィリピン対決。会見中、英語が母国語ではないガバリョが言葉につまると、隣のドネアが比国の言葉で聞き直し、通訳するというハプニングがあった Esther Lin/SHOWTIME
リスペクトし合う同士のフィリピン対決。会見中、英語が母国語ではないガバリョが言葉につまると、隣のドネアが比国の言葉で聞き直し、通訳するというハプニングがあった Esther Lin/SHOWTIME

――これから約1週間、井上選手、ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)もリング登場し、バンタム級が脚光を浴びるはずです。当然、他のトップ選手と比較されるはずですが、どんな姿を見せたいですか?

ND : 依然として向上しているということをお見せしたいですね。井上もまだ向上しているし、私も向上している。だから私たちがリマッチをすることになれば、前回よりももっと良い試合になるはずです。

――あなたはボクシングのクリーン化を叫んできた選手であり、薬物使用が疑われたことはありません。薬物の助けなしにプロスポーツ選手が30代後半で向上することは滅多にないですが、39歳でも実際にハイレベルの力を保っていて、上達している部分もあるように見えます。なぜそれが可能になっているのでしょう?

ND : まず現在の自分自身を理解することが大切でした。それをすることで、自分が最大限の力を発揮するために何が必要かがわかってきます。以前はただ戦っていましたが、今では経験を戦略に生かすこともできています。あと、2年前の井上戦で、自分は依然としてトップの選手を倒せると確信できたのも大きかったですね。おかげで以降もモチベーションが薄れることなく、ハードワークを続け、知識、戦略に磨きをかけ、ハイレベルで戦い続けることができているのです。

井上との再戦への思い

――ウバーリ戦のあと、「もう井上戦の第9ラウンドのことを考えなくなった」と話していました。今でもそれは変わりませんか?

ND : その通りです。しばらく失いかけていたリング上でのキラーインスティンクトを取り戻すことができたからです。だからもう、あのラウンドについて考える必要もなくなりました。

――自身の試合前後に挙行される井上選手、カシメロの防衛戦もテレビで見るつもりですか?

ND : まずは自分の試合に集中しなければいけないので、(カシメロの試合は)あとで録画で見ることになるでしょう。井上の試合にも目を通しますよ。じっくり見て、戦力を確かめるつもりです。

――井上選手の次の相手、アラン・ディエパン(タイ)は知っていますか?

ND : いえ、まったく知りません。井上にとって、チューンナップと言える試合になるのでしょう。指名挑戦者を倒した後なのだから、そういった試合を挟んでも問題ないと思います。試合間隔を開けたくないのでしょうし、その目的で組まれた防衛戦だと認識しています。良い判断だと思いますよ。

――ガバリョ戦当日、少し寒くなりそうです。屋外会場での戦いになりますが、不安はありませんか?

ND : 天候に関しては、私がコントロールできることではありません。どんな状況でも戦うだけ。できることは、精神的な準備をしておくことです。

――来年を重要な年にするために、重要な試合ですね。

ND : 2022年には多くの可能性が広がっています。だからこそ、ここで絶対に良い結果を出さなければいけないのです。

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スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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