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知らないと恥ずかしい、この時代における新しいブッフェのマナー8か条

東龍グルメジャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

ブッフェのマナー

今年2018年8月1日に、日本におけるブッフェスタイルの発祥となった帝国ホテルのバイキングが生誕60周年を迎えます。

この節目の年に、日本ではまだ確立されていないブッフェのマナーを向上させることを願い、一般社団法人 日本ブッフェ協会がホテル会員と共に、新しくブッフェマナーを提案しました。プレスリリースも配信されています。

ブッフェは日本でも広く浸透している食のスタイルなので、マナーを向上させることによって、食品ロスを削減したり、食文化の発展に寄与したりできるでしょう。

私は日本ブッフェ協会の代表理事を務めていますが、公共的な価値と意味があるので、ブッフェマナーの詳細と背景を紹介します。

基本マナー

ブッフェのマナーは、バイキングにおけるマナーや、バイキングのもとになった北欧料理のスモーガスボードの様式をベースとしており、どんな方でも実践できる基本マナーと、やや実践が難しい上級マナーに分けられています。

基本マナーで紹介しているのは、是非とも知っておいてもらいたい基本的なものです。どれも難しいことはないので、是非とも実践してもらえると幸いです。基本マナーに従うだけで、ブッフェでの立ち居振る舞いがスマートになります。

  • 自分の分だけを取る
  • 全て食べる
  • ブッフェ台をきれいに使う
  • 適度に食べる
  • ドリンクを飲み終えてからお替わりする

自分の分だけを取る

ブッフェはあくまでも自分で食べる分を自分が自由に取って食べるスタイルです。他人の分は取らないようにしましょう。他の人がどれをどれくらい食べたいのかをはっきりと把握することは難しいです。同行者の分まで取ったとしても、食べ残す可能性が高いので自分が食べる分だけを取りましょう。

全て食べる

ブッフェはあくまでも、好みのものを適量だけ食べるスタイルなので、食べ残さないように注意してください。ブッフェのもとになったスモーガスボードでも適量だけ取って食べるスタイルになっています。食べ残すと、店の余計な支出が増えるため、結果的に料理の質や種類が下がってしまうこともあります。適量だけ食べ、店の余計な支出が減れば、結果的に質が向上したり、種類が増えたりするでしょう。

ブッフェ台をきれいに使う

ブッフェ台はみんなで使うので、きれいに使いましょう。トングやサーバーは使ったら次の人が取り易いように元の位置に丁寧に戻すとスマートです。ブッフェ台をきれいに使えば、より料理が美しく見え、より楽しく、よりおいしく食べられます。

適度に食べる

日本ブッフェ協会のスローガンにもなっている「ちょうどいいが いちばんおいしい」です。限度を超えてお腹が一杯になり、苦しくなるまで食べるのはやめましょう。せっかくおいしいものを食べても、こんなに食べなければよかったと思ってしまっては残念です。最後の一皿を食べない程度がちょうどよいでしょう。適度にお腹一杯になって、おいしい思い出を持ち帰ってください。

ドリンクを飲み終えてからお替わりする

ドリンクもブッフェスタイルの場合には、しっかりと飲み終わってからお替わりをしましょう。飲み終わらないうちにお替わりしてしまうと、ドリンクを残してしまったり、ドリンクを飲みすぎて色々な料理が食べられなくなったりします。

上級マナー

上級マナーは、基本マナーができた上で、知っておいてもらいたいマナーです。ブッフェならではの体験を深めることができ、ブッフェをさらに楽しめるようになります。ブッフェの本質に根ざしたことばかりなので、ブッフェファンであれば是非とも覚えてください。

  • 少しずつ取る
  • 色々なものを試してみる
  • コースで食べる

少しずつ取る

取りに行くことが面倒だからといって、山盛りにするのはやめましょう。せっかく、料理人が一品一品素晴らしい料理を作っているので、味が混ざってしまってはおいしくありません。料理がくっつかない程度に盛るようにしましょう。もしも気に入った料理があれば、何度でも取りに行って大丈夫です。少しずつ取ることによって、適量食べることにつながったり、色々な料理を味わえたりもします。

色々なものを試してみる

少ない種類をたくさん食べるのではなく、様々なものを少しずつ食べるのが、ブッフェの楽しみ方です。ブッフェであれば、1口だけテイスティングすることもできます。食わず嫌いが治ったり、新しい食の好みが拓けたりするかも知れません。同じものばかりを食べないで、食べたことがないものや、予想がつかないものを食べてみて、新しい食味の体験をしましょう。

コースで食べる

見たものから皿に盛るのではなく、どの料理をどのように食べるのかを考えながら取りましょう。食べる順番は前菜、主菜、デザートが基本ですが、これ以外の自分で考えたコースでも大丈夫です。ブッフェ以外では自分でコースを組み立てることができないので、オリジナルコースを考えて、何コースも楽しみましょう。

提案した背景

※ここからは、日本ブッフェ協会の総意ではなく、私の個人的な見解も含まれています。

ブッフェマナーを紹介してきましたが、改めて提案することになった理由は何でしょうか。

それは、現代の食文化を鑑みた上で、人々がよりブッフェを楽しくおいしく食べられるようにするため、さらには、食品ロスを少しでも削減できるようにするためです。

私が以下のような記事を書いたのも、大きな影響力を持つメディアがブッフェのマナーを全く考慮しないことによって、誤った認識が広まることを危惧したからでした。

番組では、好きかどうかは別として、ただ単価の高いものをたくさん取り、口の中に詰め込んでは味わいもせず、胃に流し込んでいく様子が流されていました。これでは、ブッフェ本来の魅力が伝わらず、提供者も利用者もみんな不幸になるだけです。

豊かな未来を創るための国際社会共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)でも、食品ロス削減や食の資源を大切に食べることが重要視されています。そういった世界的な情勢の中で、圧倒的な力を持つテレビが、食べ物や食材、作り手や生産者に対するリスペクトを皆無にし、食を粗末に描写して笑いの対象にしていることは、とても好ましいことであるとは思えません。

こういったことが再び起きないようにするためには、ブッフェにおけるマナーが改めて提案され、何かしらの指標が示されるべきであると考えたのです。

自分らしく食べられる

日本ブッフェ協会が提案したマナーが広がり、多くの方に実践してもらえれば、ブッフェの時間をより楽しくよりおいしく過ごせるようになり、食品ロスも削減されます。ブッフェレストランの利益が増えることによって、より素晴らしい食材が使われるようになったり、種類数が増えたりと、最終的には利用者が利益を得られることにもなるでしょう。

ブッフェはそろそろ、その本質にそぐわない「食べ放題」という言葉から解放されるべきである考えています。ブッフェは、あくまでも自由に好きなものを好きなように好きなだけ食べられるだけであり、大食いしたり、元をとったりしなければならないものではないからです。

ブッフェは個人を尊重する現代に相応しい自分らしく食べられるスタイルであることが、1人でも多くの方に伝われば嬉しいと思います。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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