「政治とカネ」のどうしようもない負のスパイラル
フーテン老人世直し録(72)
卯月某日
みんなの党の渡辺喜美氏は党代表を辞任し、借り入れた金の全額を返済した事で幕引きを図ろうとしたが、疑惑はまだ晴れないでいる。
そもそも当初は「個人的な借り入れ」で「熊手などに使ってしまった」と説明したのが、金の大半は妻の口座に保管していたと変わった。そして貸し手の説明では選挙の供託金を支払うための借金だと思えるのに、それを認めていない。
選挙用の借り入れであることを認めれば、猪瀬前都知事を略式とはいえ立件した東京地検特捜部が動き出さざるを得なくなるから、それだけは避けている。そこで妻の口座が登場した。猪瀬氏の説明でも妻の貸金庫に保管され、金には手を付けていなかったというから、両者の説明は良く似ている。
おそらくそれが法の抜け道ということなのだろう。二人とも抜け道を必死に探して同じような結論にたどり着いた。フーテンは二人の抜け道探しを是認する考えはないが、すぐ「法を厳しくして抜け道をなくせ」と短絡的な議論が高まる事には疑問がある。
ロッキード事件を皮切りに数々の「政治とカネ」の問題をフーテンは取材してきた。そこで常々思うのは、「政治とカネ」の根絶が民主主義の第一歩であるかのように思わされている日本人は、民主主義の成熟度が足りないのではないかということである。
法というのはどれほど厳しくしても必ず抜け道は出来る。残念ながらその現実を認めるところから出発しないとおかしな事になる。そして抜け道がないように法を厳しくすることがより良い政治を生み出すかどうかも真剣に考え直す必要がある。
フーテンは化粧品会社の会長に土下座までして大金を借りた渡辺氏を哀れとは思うが極悪とは思わない。そうではなく裏でそういう行為を行いながら、表で「カネにクリーン」であることを装い、スキャンダルを起こした他人を非難した渡辺氏を極悪と考える。
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