【手帳の現在】日本経済新聞「NIKKEI THE STYLE」11/19付けのコメントを補足します
先日の日本経済新聞社 「NIKKEI THE STYLE」に最近の日本の手帳に関するコメントをしました。電子版には転載されています。
今回はその補足です。
平成不況のあおりを受け、終身雇用制の崩壊にともなって減少したのが、企業がその成員に配る年玉手帳でした。
そして1980年代後半にはシステム手帳という黒船が上陸。手帳の自由度を示唆します。このシステム手帳が後年の、有名人プロデュースの手帳が登場する下地になります。
その気になれば、手帳が自分でも作れることを、システム手帳の存在は部分的にでも明らかにしたわけですね。
そして、それが現在の、ほこら系手帳各種に繋がります。
ほこら系手帳とはなにか
ほこら系手帳については、以前も取り上げました。
昭和とは全然違うよ!ビジネスモデルや記入ページから見た令和の手帳の現在とは?
令和の手帳はどう変わっていくのか。文房具王・石津大さんが仕掛ける「マネキャリ手帳」を例に考えてみる
要するに、自らの手帳術を、綴じ手帳の形で作り上げた人の手帳です。
数百から数千という規模感で印刷・販売されているようです。
そして、いわゆる手帳の団体のランキングなどに出てくるのもこういう手帳です。
ちなみに記事中に登場するランキングをやっているのは、横浜の市民団体です(※別に業界団体などの公的な性格の団体ではない)。そのランキングなので、私は、事実上キュレーションに近いと考えています。
話を元に戻しましょう。誰でも手帳術を練り上げてコンセプトを決めれば、そして一定程度の資金力があれば、手帳を制作、販売することができます。台割りとコンテンツを決め、印刷所を決めてオーダーできれば手帳の完成です。それをマーケティング策を考えながらちゃんとペイするように作れればいいのです。
そしてそういう手帳のターゲットは、市井の普通の人々というよりは、手帳にこだわりがある人になっていると考えられます。手帳を作る人たちは、市販の物にはあきたらない人だからです。
だから、普通の手帳で満足できない人たちはそういう手帳は向いているかもしれません。
逆に言えば、それらは大向こう受けはしないかもしれません。そもそも、手帳を使おうかどうかと考えているような一般の方が、創意工夫がこらされた各種のほこら系手帳を見てどう感じるかです。
あくまで私見ですが、それらの工夫はあまり刺さらないのではないかと思います。
車に興味がない人が、フェラーリとランボルギーニを区別できるか
たとえば、車にあまり興味がない人がフェラーリとランボルギーニを区別できるでしょうか。そもそも、その名前を知っているでしょうか。
それでも車に乗りたいと思い関心がある人たちには、トヨタ・カローラとか、日産・ノートなどの方が身近で扱いやすいのではないかと思います。
つまり、ほこら系手帳はそういうとがったスーパーカーのような存在なのではないでしょうか。
スーパーカーに乗る人口を広めるためには、まずドライバーの人口が広がる必要があります。
そして、手帳のユーザー人口をひろめ、その裾野を広げるためには、もっと普通の手帳の魅力を普通に伝えることが、必要ではないかと思います。
手帳の裾野を広げるためには
日本経済新聞の記事中には、記者の地の文に「手帳のイベントには愛好家が集っていた」との旨の一文がありました。そう、手帳は今や愛好家のものになりつつあります。正確には、手帳団体のイベントに集まるのは愛好家だという事でしょうか。
つまり、広く一般というより、対象に特別のこだわりをもつ一部の人という感じがあるのです。スーパーカーのイベントがどんなに盛況でも、それは自動車人口の広がりを意味しないはずです。
だから、まずベーシックな手帳の魅力を多くの人に広めたい。そうすれば手帳そのものがもっと盛り上がるでしょう。愛好家以外の人も感心を持つようになれば、スーパーカー的なほこら系手帳ももっと人気になる。私は現時点ではそのように考えています。