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リバプールに2-5で先勝したレアル・マドリードの非・銀河系軍団的サッカーに学べ

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 レアル・マドリードが通算14度目の優勝した昨シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)は、史上例を見ない珍しい大会だった。レアル・マドリードは決勝トーナメント1回戦から決勝までの4試合、下馬評で相手にすべて劣っていた。パリ・サンジェルマン(決勝トーナメント1回戦)、チェルシー(準々決勝)、マンチェスター・シティ(準決勝)、リバプール(決勝)がその相手になるが、番狂わせ発生と騒がれなかった理由は、レアル・マドリードがクラブの伝統と格式で他の4チームを圧倒していたからだ。CLの優勝回数一つ取っても、レアル・マドリード13回(決勝戦を前にした段で)に対しリバプール6回。チェルシーは1回でマンチェスターシティには優勝経験がない。

 だが試合に目を凝らせば、番狂わせという表現に違和感は抱かない。事実、レアル・マドリードはどの試合でも劣勢だった。たとえばボール支配率。決勝トーナメントの全7試合中レアル・マドリードが上回った試合は1試合もない。一発勝負の決勝こそリバプールに対して50対50の関係だったが、他の6試合はサンティアゴ・ベルナベウで行われたホーム戦も含め、すべての試合で劣っていた。どちらかと言えば守備的で、カウンター色が強いチェルシー相手にも、である。

 特に試合の前半にその傾向が強く、次第に形勢を挽回しながらセカンドレグの終盤にひっくり返す様は、ドラマ仕立てで、神懸かっていた。欧州一の名門クラブが、チャレンジャーという弱者サイドに徹して戦う姿に、なにより好感を覚えた。

 欧州では古くからサッカーくじが盛んで、日本とは比較にならないほど種類が多彩だ。予想屋であるブックメーカーの見解はよって注目を集める。国内リーグよりヒエラルキが鮮明ではない欧州カップ戦の場合はとりわけだ。

 優勢なのか否かという立ち位置についての情報をファンのみならず、選手、監督が戦う前から認識している。やりにくいのは優勢とされた側だ。CL観戦に際して、ブックメーカーの予想は頭に入れておきたい情報になる。昨季のCLではブックメーカーが大きく予想を外したわけだが、外したと言うより、その予想が結果に影響を及ぼしたという見方もできる。

 今季も決勝トーナメント1回戦を前にした段で、レアル・マドリードはブックメーカーから低評価を受けていた。昨季の覇者であるにもかかわらず6番手の扱いで、対するリバプールは5番手だった。リバプールが下馬評でレアル・マドリードを僅かに上回る中で試合はキックオフを迎えた。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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