1万5千円にも及ぶ唐揚げの予約を故意にドタキャンか? テイクアウトの悪質キャンセルも許されない理由
飲食店はテイクアウトに注力
ここ最近、東京都で新型コロナウイルスの新規感染者数が連日100人を超えており、緊張感が高まってきました。しかし、2020年5月25日に緊急事態宣言が、6月11日に東京アラートが解除されてからは、全国で飲食店の営業が従前通りとなっています。
飲食店はようやく経済活動を行えるようになりましたが、「新しい生活様式」への対応や外食を控える雰囲気によって、新型コロナウイルスの感染拡大前の経営状況には戻っていません。
大手の飲食店予約サービスTableCheck(テーブルチェック)が6月26日に発表した調査によると、前年同期比の売上に対して、回答者の9割以上が「減った」、半数以上が「激減」と答えており、被害は甚大です。
通常営業だけではやっていけないために、7割近くの飲食店が引き続きテイクアウトも行っていくといいます。
多くの飲食店が非常に苦しんでおり、少しでも売上を増やすためにテイクアウトにも注力している状況にあって、テイクアウトの唐揚げ専門店が悪質なドタキャン(直前キャンセル)に遭いました。
大量注文からのドタキャン
その事件とは次の通りです。
唐揚げ専門店に電話で大量の注文があり、その後にも大量の追加注文がありました。さらに3回目の大量追加があり、店がもうこれ以上作れないと返事すると、それなら全てキャンセルすると告げられたのです。
これまで作った分はキャンセルできないと伝えても、キャンセルすると言い張るばかりで、時間の無駄なので諦めたといいます。キャンセルされた唐揚げは食品衛生の問題から全て処分し、被害総額は約1万5千円。これら一連の出来事は同じ日に起きました。
店主は、これまでのやりとりを振り返ってみると、故意のドタキャンであるように思うと述べています。他の飲食店の役に立ててもらえたらということで、この事件をSNSに投稿し、話題となっているのです。
これまでドタキャンやノーショー(無断キャンセル)について多くの記事を書いてきました。
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今回はテイクアウトの予約なのでこれまでとは異なりますが、同様にとても悪質であると考えています。
店内飲食の事情
件の唐揚げ専門店はテイクアウトを主としていますが、店内飲食のノーショーやドタキャンとは、どのように違うのでしょうか。
店内飲食は日本ではイートイン(eat in)と表現されますが、和製英語です。英語ではイートアウト(eat out)は外食することを意味するので、反意語となるイートイン(eat in)は自宅で食事することを意味します。
そしてこのイートインすなわち店内飲食は、店が設置したテーブルやイスやカウンターといった飲食設備で客が食事する業態。当然のことながら、ある客が食事している間は、その場所を専有しているので、他の客が利用できません。
つまり、店内飲食において、予約された席がノーショーおよびドタキャンになることは、運良くウォークイン客(予約していない客)が訪れてその席を使用しない限り、本来得られたはずの売上が失われるということです。
店内飲食の予約では、こういった機会損失が起きると大きな被害を受けるため、数日前に予約を確認したり、予約の際にクレジットカードの番号を控えたり、予約にオンラインの事前決済を導入したりして、対策を行っています。
記念日やお祝いの時、接待や大切なデートで利用されるファインダイニングは、ゲストに応じたきめこまやかなサービスを行っているので、予約して訪れるのが一般的です。完全予約制を採用しているところも少なくありません。
したがって、同じ店内飲食を主とする飲食店であっても、ファインダイニングであればあるほど、ドタキャンやノーショーを警戒しています。
テイクアウト専門店の状況
テイクアウト専門店は、予約が中心であったり、完全予約制であったりするところが少ないので、店内飲食に比べれば、あまり機会損失という考え方がありません。当日の売れ行きによってキャパシティも増やせるので、柔軟性もあります。
そのため、予約の際にわざわざクレジットカードの番号を控えたり、テイクアウトやデリバリーのプラットフォームを利用して予約にオンラインの事前決済を導入するところが少ないのです。
2016年の経済センサスによれば、全国で約45万店ある飲食店において、風営法対象店を除く普通の飲食店は約38.7万店、持ち帰りを主とする飲食店、つまり、テイクアウト専門店は約4.6万店あります。
大手インターネットサービスで確認してみると、Uber Eatsの加盟店は約1万4千店、出前館の加盟店は約2万店。どちらのサービスともに、デリバリーとテイクアウトに対応しています。
2つのサービスに重複している加盟店が多い上に、加盟店のほとんどが店内飲食を主とする飲食店です。
重複している加盟店が半数、店内飲食を主とする飲食店が9割と仮定すると、店内飲食を主としない飲食店は多くても2000店くらいになります。
ただ、この中にはデリバリー専門店も含まれていることも留意しなければなりません。テイクアウト専門店はデリバリー専門店よりも少ないようなので、おそらく1000店以下となるのではないでしょうか。
そうであれば、テイクアウト専門店約4.6万店のうち、プラットフォームを利用しているのは多くても1000店だけとなるので、その割合は非常に少ないことになります。
また、テイクアウト専門店は店内飲食を主とする飲食店とは異なり、電話やメールに対応するレセプショニストやサービススタッフがいないので、事前確認する余裕もありません。この件に関してはそもそも、同日の予約なので、事前確認できないという背景もあります。
以上のように、テイクアウト専門店はノーショーやドタキャンにもともと弱い状況にあり、しかも、同日であればなおさら対応が難しいのです。
ノーショーやドタキャンが起きる理由
テイクアウトの唐揚げ専門店の店主がイタズラ目的であると疑っていますが、もしも故意ではなかったとしても、一方的にキャンセルすることは基本的に許されることではありません。
では、本当にイタズラ目的であるとすれば、どうしてこのような悲劇が起きるのでしょうか。
それは、低いリスクでノーショーやドタキャンを行えてしまうからです。
ノーショーやドタキャンをすれば、契約を一方的に破棄したということで損害賠償を求められることがあります。しかし、相手を特定したり、裁判する時間や費用を捻出したり、発生した損害を立証したりする必要があり、飲食店に多大なコストがかかるので、実際に損害賠償が求められることは稀です。
テイクアウト専門店の多くはオンライン予約に対応していないので、偽名を使ったり、情報を騙ったりしやすくなることも問題となります。
このようにリスクが低い状況では、残念ながらノーショーやドタキャンが行われやすいのです。
ノーショーやドタキャンの対策
では、どのような対策を行えばよいのでしょうか。
それは、ノーショーやドタキャンを行う人に対して、リスクを高くすることです。
テイクアウト専門店はデリバリー専門店とは異なり、オンライン予約に対応しているところが少ないので、まずオンライン予約に対応するところから始め、そこから予約を受けるのが望ましいでしょう。
そうすれば、予約者の情報が確かとなったり、事前決済を行えたり、クレジットカードの番号を取得できたりします。
また、損害賠償を求められることは少ないと述べましたが、飲食店でドタキャンした人に対して損害賠償が認められたケースもありました。
さらには、居酒屋でノーショーした人が逮捕されたという事件もあります。
テイクアウトは店内飲食と違いがあるものの、予約は客と飲食店の契約になるので、ノーショーやドタキャンが大きなリスクを伴っていることを知っていただかなければなりません。
損害賠償を払ったり、犯罪として検挙されたりすることがあるのです。
テイクアウトのノーショーやドタキャンも大きな問題
新型コロナウイルスによって、店内飲食を主とする飲食店は甚大な被害を受けたので、テイクアウトやデリバリーに活路を見出そうとしています。
巣ごもり消費でテイクアウトやデリバリーが伸びていますが、テイクアウト専門店は多くの競合が現れたことになり、決して楽観視できません。新型コロナウイルスがまだ収束しておらず、消費の先行きも予測できないことを鑑みれば、なおさらのことでしょう。
店内飲食のノーショーやドタキャンが大きな問題となって多くの人の知るところとなりましたが、テイクアウトがほとんどの飲食店の頼みの綱となっている現状において、店内飲食だけではなく、テイクアウトでもノーショーやドタキャンを行うことは言語道断であることを、多くの人に改めて認識していただきたいです。