なぜアイスは賞味期限がないの?気温が何度でかき氷が売れる?夏休み自由研究のヒント
7月25日はかき氷の日。かき氷は別名「夏氷(なつごおり)」とも呼ばれることから、「な(7)つ(2)ご(5)おり」との語呂合わせと、1933年(昭和8年)7月25日、山形市で当時の日本最高気温40.8度を記録したことから7月25日が選ばれ、日本かき氷協会が制定した。
夏は何度以上になるとかき氷が売れる?
アイスクリームは、夏だけでなく、冬にも食べるようになってきた。だが、さすがにかき氷を冬に食べたいという人は限られるだろう。夏の気温が暑くなってくると、クリーム系のアイスより、かき氷が食べたくなってくる。
一般財団法人日本気象協会の気象予報士、小越(おこし)久美さんの著書(1)によれば、かき氷の売上が急増するのは気温が29度前後だ。かき氷は、アイスクリームよりも食感がさっぱりしていて、エネルギー量が低い。
コンビニやスーパーなど、アイスクリームやかき氷を販売する小売業界は、気温の変化を見ていて、「かき氷が売れそうだな」という29度前後になったら出せば、効率よく売上を上げることができる。
冷やし中華は「5月から」などと提供時期を決めているのをよく見るが、気候変動の影響で年によって気温が変動しているので、本来は気温で決めたほうがいいのかもしれない。ちなみに小越さんの著書によれば、冷やし中華が売れ始めるのは気温18度だそうだ。
夏休みの自由研究のテーマとして、どんな食べ物が何度で売れ始めるのかを調べるのも面白い。昨今では、食品ロスを防ぐために気象データが使われており、冷奴など豆腐の製造・販売に気象データを活用した群馬県の豆腐メーカー、相模屋食料では、年間1,000万円以上相当、全体の比率にして30%以上も食品ロスを減らしている(2)(3)。前日との気温差が大きいほど「暑い」と感じ、冷奴が買われる傾向があるので、気象データを基にして出荷数を増減させ、食品ロスを劇的に減らすことができたのだ。
パリパリ感が売りの森永製菓「チョコモナカジャンボ」も気象データを活用
森永製菓のアイスモナカ「チョコモナカジャンボ」も、商品の鮮度を保つために日本気象協会のデータを活用している(4)。作りたてはチョコやモナカの皮がパリパリしているが、時間が経つと、アイスの水分でモナカがしめってパリパリ感が薄れていく。
そこで、日本気象協会のデータを活用し、どのタイミングでどれくらいの量を出荷すれば、最も美味しい状態で消費者に提供できるかを調査し、適切な製造と在庫の管理に役立てている。
なぜアイスクリームには賞味期限がないの?
乳成分が含まれているものを「アイスクリーム」と呼び、含まれないものは「氷菓」と呼ばれる。コンビニやスーパーのアイスクリームやかき氷(氷菓)には、賞味期限表示がない。マイナス18度以下で保管され、品質の劣化が非常にゆるやかなので、賞味期限表示は割愛してもよいとされている。
中には表示を入れ始めたアイスクリームメーカーもある。では、なぜ、このメーカーは、賞味期限の表示を始めたのだろう?
・・・などと調べていくと、「賞味期限」も研究テーマになりうる。
砂糖も賞味期限表示がない。長期保存できるからだ。
では他に賞味期限表示がない食品はあるだろうか。塩やガム、一部のアルコール類も表示が免除されている。
日本では、いつから賞味期限表示が始まったのか。その理由はなぜか(5)。
なぜ、賞味期限表示がなくても通用したのに、途中からわざわざ入れることになったのか。表示することによるデメリット、メリットは何か。
海外では賞味期限は何と呼ばれ、消費期限は何と表示しているのだろうか。海外では日本のような混同はないのだろうか(6)。
賞味期限が過ぎた食品を販売することは、法律的に問題はないのか(7)。
賞味期限と消費期限はどう違うのか。
大人でもきちんと把握していない「賞味期限に関すること」はたくさんある。
冷蔵庫や冷凍庫を使わないでアイスクリームを作ることができる
実際にアイスクリームを作ってみる、というのも、食育や自由研究の一環になる。
簡単に作る方法もあるし、冷凍庫で固めることなくアイスクリームを作ることもできる(8)。
余剰食材でアイスクリームを作る
神奈川県横浜市を拠点にしている青果ミコト屋は、食品ロスになってしまう食材を使ってアイスクリームを作っている(9)。
スウェーデンのゴットランド島にあるCOOPというスーパーは、茶色や黒のシュガースポットが出たバナナは販売しないので、アイスクリームメーカーに提供している。そこで作ったバナナアイスは香りもよく、味わい深い味だった(10)。
以上、夏休みの自由研究のテーマのヒントになりそうなことを挙げてみた。子どもにも身近で親しみやすいアイスクリームやかき氷を題材にして、食品ロスや賞味期限について学ぶ機会をぜひ作ってほしい。
参考情報
1)『かき氷前線予報します〜お天気お姉さんのマーケティング〜』小越久美著、経法ビジネス新書
2)7月に売れる商品・売れない商品「対前年増で目標設定」はもう古い?!異常気象が当たり前の今、重要なこと(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2019/6/18)
3)なぜ食品業界は日本気象協会に仕事を依頼するのか(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2017/3/23)
4)「未来を探る 新しい食卓 データが変える流通 食べたい時に鮮度良く」
(東京新聞朝刊4面、2018/11/05)
5)期限表示変更の経緯, 「だれのため?なんのため?消費期限と賞味期限」井出留美, p81-86、『栄養と料理』2018年12月号
6)米国で発表「賞味期限・消費期限の混同による食品ロス」SDGs世界レポ(59)(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2021/2/22)
7)「賞味期限切れ食品を販売することは法律的に問題ないの?」(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2019/4/9)
8)冷蔵庫を使わないでアイスクリームを作ることができる?子どもの夏休みの自由研究にぴったり、しかも省エネ(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2018/7/27)
9)日本の農家を旅した青果店〈青果ミコト屋〉が、 アイスクリームを作った理由。 (Hanako.tokyo、2021/6/12)
10)スーパーの売れ残りバナナでバナナアイス!スウェーデンで食品ロスを活かすアイス会社(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2019/11/13)