「おやじギャグ」から生まれた「安倍マリオ」のチンドン屋効果
フーテン老人世直し録(244)
葉月某日
まさか一国の総理がチンドン屋をやるとは思わなかった。そしてそれが世界から称賛されているというからそれも驚きである。
自然と調和し自然を尊ぶ文化を悠久の歴史の中に育んできた日本、ものづくりの職人芸を受け継ぎ西洋式の近代化に抗してきた日本、外国人が日本に魅力を感ずる源泉にはそうしたものがあると考えてきたが、アニメキャラクターとそれに扮した総理の登場が2020年の日本に外国人を呼び込むカギだと東京五輪組織委員会は考えているらしい。
主役の座を奪われた形の小池東京都知事は「閉会式では安倍総理が大活躍されて、これはひょっとして、もっと国が応援してくださるのかなと、その意思表示ではないかと受け取った次第でございます」と嫌味たっぷりの反応を見せた。総理がそこまでやるのなら国の負担をもっと増やせと反撃したのである。
自民党の二階幹事長は安倍総理が2020年の東京オリンピックまで任期を延長したい意欲の表れだと言った。意欲がなければ0泊4日の強行軍でわざわざリオまでいかないと言うのである。
東京五輪組織委の武藤敏郎事務総長は記者団に「安倍マリオの発案者は森元総理」と語った。それによると、スーパーマリオを使うことは昨年から決まっており、「リオ」に引っ掛けて「マリオ」を考えたのだという。まさに「おやじギャグ」の世界である。つまり「おやじギャグ」が出発点で、そこからアニメキャラクターを使う企画がスタートしたことになる。
「おやじギャグ」の発案者が森元総理かどうかは分からないが、「マリオ」を安倍総理にやらせようと言い出し、頼みに行ったのは森元総理である。それは舛添前都知事が「政治とカネ」で集中攻撃を受けていた6月上旬だという。その頃、舛添氏は何としてもリオの閉会式に出席し、オリンピックフラッグの引き渡しを受けたいと主張していた。
森元総理はその頃、舛添前知事を辞めさせて丸川珠代氏を後任の都知事に画策していると言われていた。ただ都知事選はリオのオリンピック後にしたい。そうしないと次の知事の任期が東京オリンピックの前に終わってしまい、オリンピック直前にまた都知事選挙をやらなければならなくなる。
そのため舛添氏はぼこぼこにされながらもリオが終わるまで辞めずにいてもらうのが森元総理や安倍官邸の意向であった。ただそうなると不名誉な都知事がオリンピック旗の引き渡しを受け、それが全世界に中継されることになる。そこでおそらく森元総理は舛添氏を主役にしない方法を考えた。他に主役を作るのである。それが「マリオ」役を安倍総理にやらせることだった。
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