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マドリーがクラシコでバルサを倒せた理由。再機能した「2人の司令塔システム」と「左のトライアングル」

森田泰史スポーツライター
エリックを追うベンゼマ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウが、歓喜に沸いた。

リーガエスパニョーラ第9節、レアル・マドリー対バルセロナの一戦は、マドリーが3−1で勝利した。カリム・ベンゼマ、フェデリコ・バルベルデ、ロドリゴ・ゴエスのゴールで快勝したマドリーはリーガの単独トップに躍り出た。

そして、それはスコア以上に差があるゲームだった。

■ストップ・ザ・ヴィニシウス

バルセロナはクラシコに向けてジュール・クンデが復帰した。だがアラウホとクリステンセンが依然として負傷中で、その中でシャビ・エルナンデス監督にはやり繰りが求められた。

昨季後半戦のクラシコで、4−0と大勝したバルセロナであるが、その際にはアラウホを右SBで起用していた。アラウホをヴィニシウス・ジュニオールにぶつけ、相手のウィンガーを「殺す」ことがシャビ監督の狙いとしてあった。

しかし、今回のクラシコで、シャビ監督はセルジ・ロベルトとバルデをサイドバックで起用した。オーソドックスな【4−3−3】を採るための選手起用だった。

ただ、バルセロナのシステムは十分な機能性を発揮しなかった。それに対して、マドリーが対策をしてきたからである。

■マドリーの対策と準備

カルロ・アンチェロッティ監督は【4−3−3】と【4−2−3ー1】の可変システムを使用した。

マドリーは守備時に【4−2−3−1】を形成することでバルセロナの【4−3−3】を封じた。具体的には、「アンカー潰し」を行った。

トップ下になったモドリッチが、アンカーのブスケッツを見る。右WG(バルベルデ)を左SBに、 左WG(ヴィニシウス)を右SB に嵌めさせる。CF(ベンゼマ)がプレスで限定をかければ、バルセロナのビルドアップは窒息するというわけだ。

■無策だったバルセロナ

あまりに、バルセロナはあまりに無策だった。

【4−2−3−1】を【4−3−3】に嵌められている。本来なら、この時、重要になるのはCBやSBの動きだ。

具体的にいえば、まずは「アンカー出し」と「CBの中盤進入」である。

ブスケッツがマーカーのモドリッチを引き連れ、前方に動く。中盤にスペースができる。そこにクンデがドリブルしていく。そうしてマドリーのプレスの的を外すことができる。また、中盤で数的優位をつくれる。

あるいは、サイドバックのムーブで変化をつける。いわゆる「偽サイドバック」である。

サイドバック(右SB/セルジ)がインサイドのポジションを取る。相手のWGのプレスが遅れる。アンカー(ブスケッツ)が相手のトップ下のマークを引きつける。主導権を握りながら、ボールを動かすことが可能になる。

■無慈悲なレアル・マドリー

策を講じなかったバルセロナに対して、マドリーは容赦なく襲い掛かった。クラシコに慈悲など必要ない。マドリディスタの後押しを受け、マドリーは「飛んで」いく。バルベルデが獅子奮迅の活躍を見せ、中盤の選手をサポートしながら、攻守で躍動した。

マドリーのプレスは完全にハマっていた。アンチェロッティ監督は、数試合前からダブルボランチを試していたのだ。準備力という意味で、やはりマドリーに分があった。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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