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ブルゴーニュのワイナリーを取材したら、その近所の国立醸造学校で造るチーズがおいしすぎた件について

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト

今年、雑誌の仕事でフランスの銘醸地、ブルゴーニュを縦断してきました。そのときのエッセンスは『CREA Traveller』(文藝春秋)のイタリア特集『トスカーナとシチリアで見つけた幸せの法則』(https://www.amazon.co.jp/dp/B0CBPQCNJ9/ )号で10ページほど書かせてもらっています。ぜひご笑覧くださいませ。

2023年現在のブルゴーニュワインの基礎や現状については「フランス初心者が、2023年のコロナ明けに訪れたブルゴーニュでワインについて学んだこと」で書いた通りですが、フランスという食文化の先端地において、フランスに渡航した日本の農業関係者や生産者がその差にショックを受けるというケースはままあります。

ワインやチーズにおける欧州列強と日本の差

ひとつはワイン。これについては言わずもがなでしょう。例えば生産量だけで見ても、日本とフランスではスケールが桁違い。フランスは年間世界3位の生産量を誇り、429万3466トンのワインを生産しています。1位のイタリア479万6600トン、2位のスペイン460万7850トンと合わせた3か国で世界のワイン生産量の53%を作っています。

なかでもフランスはAOC(Appellation d'Origine Controlee (アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ))という原産地呼称制度を厳格に運用し、ブルゴーニュやボルドーなど各地域のワインの品質を保ち、向上させ続けてきたわけです。紀元前から2000年以上続く強固なワイン文化の根付いた場所で、量を造り、質を保つ。だからこそフランスはワイン大国たり得続けてきたわけです。

ちなみに日本で生産されるワインは年間8万5000トン。上位の生産国のおよそ50分の1の生産量しかありません。歴史も浅く、日本でワイン醸造の素地が調えられたのは、1877(明治10)年のこと。現在の山梨県甲州市勝沼町に日本初の尾民間ワイン醸造場が設立されて、ようやくワイン醸造の歴史が始まったのです(ちなみに初めての国産ワインの醸造は2年後の1879(明治12)年)。質も量も歴史も敵わないのですから。彼我の差にショックを受けることさえもおこがましいのかもしれません。

では乳製品はどうでしょう。特にバターやチーズといった、生乳加工品についてはよほど詳しい人でもない限り、そこにある差をさほど意識しないままフランスのバターやチーズに触れることになるわけです。

もちろん日本にもとてもおいしいフランスのチーズやバターは入ってきています。しかし長期熟成タイプのハードチーズならともかく、フレッシュタイプのチーズには現地ならではの味わいがあります。今回訪れたブルゴーニュでも、衝撃的においしいチーズとの出会いがありました。

これです。

手前のグジェールもめちゃくちゃおいしかったのですが、奥の白いフレッシュチーズが本命です。
手前のグジェールもめちゃくちゃおいしかったのですが、奥の白いフレッシュチーズが本命です。

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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