金持ちの日本をいじめているのは誰か
フーテン老人世直し録(87)
水無月某日
昨年、改憲派の集会で「ナチスを見習ったらどうかね」と発言し、憲法の骨抜きを示唆した麻生副総理が、今度は自民党支持者の会合で「いじめ」を例に、集団的自衛権の必要性を訴えた。
前回は安倍政権の狙いを正直に吐露したもので、その後の展開はまさにその通りになっている。一方、今回の発言はもっともらしく思わせながら突っ込みどころが満載である。そして国家の基本に関わる問題を漫談調の話にして受けを狙う副総理の感覚に、この国の軽さを感じる。
憲法問題をしかつめらしい顔をして語らなければならないと言っているのではない。ユーモアのセンスをちりばめる話はむしろ政治家の力量を感じさせて好ましいが、しかし今回の「いじめ」の話は出来が良いとは言えない。
20日に栃木県で行われた「自民党ネットサポーターズ総会」の講演で、麻生副総理は最初は良い事を言った。「抑止力には力を行使する国民のコンセンサスが要る」と言ったのである。その通りである。集団的自衛権の行使容認が国論を二分すれば、日本の「抑止力」は最低レベルに落ち込む。
麻生氏は「抑止力」の例として、1968年にチェコスロバキアで起きた「プラハの春」を取り上げ、ソ連はチェコスロバキアに軍隊を入れて「プラハの春」を潰したが、「連帯」で知られるポーランドには抵抗の歴史があり軍隊を入れなかったと説明した。「プラハの春」と80年代終わりの東欧の民主化をまぜこぜにしているが、趣旨は国民に抵抗の意思が強ければ他国は攻めてこないという話だ。
その趣旨にフーテンは賛成である。だから「抑止力」を強化するためと称して他国に頼る事を本末転倒と考える。他国に頼るよりまずは国民の意志である。そのうえで他国の軍事力を利用する。国民の合意もないのに他国に頼るという情けない姿は、それこそ世界から付け込まれる。
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