自民党300議席超えで何が起きるか
フーテン老人世直し録(120)
極月某日
今日の朝刊各紙は選挙序盤の情勢として「自民党が300議席を超す勢い」と軒並み報じた。選挙は既に決まったかの印象を国民に与える報道だが、この情勢が投票日まで持続すれば日本の政治に何が起きるかを考えてみる。
安倍総理が「アベノミクス解散」と命名した選挙で自民党が大勝すればアベノミクスは国民の信任を得た事になる。円安・株高がさらに進み、円安・株高のメリットを享受できる企業や個人にとってはうれしい展開になる。
しかしそれが自動的に日本経済の向上につながる訳ではない。輸入物価の上昇も加速され、家計は圧迫されることになるから消費は低迷し、物価を上回る賃金の上昇がなければ景気の好循環は生まれない。
安倍総理は選挙戦の中で、円安・株高の恩恵で収益を増した企業でもすぐには慎重な姿勢を崩せず、非正規労働者の雇用が増えるのは当面やむ負えないと語っている。つまりしばらくの間、国民は痛みに耐えるしかない。消費の低迷は日本経済の足を引っ張る。アメリカはそこを懸念している。
オバマ大統領は3日ワシントンで講演し、「日本は消費税率の引き上げを先送りし積極的な金融政策を追求しているが、長期的な不況から脱け出せるかどうかは分からず、まだ対処すべき財政赤字も抱えている」と述べて日本経済に懸念を表明した。
「この道しかない」と言う安倍総理とは異なり、アメリカはアベノミクスの先行きを信用していないのである。しかし選挙でアベノミクスが信任されたとなれば、アメリカはアベノミクスを成功させるため成長戦略を強力に推し進める必要があると言って、TPPの譲歩を安倍政権に強く迫ってくるはずである。
その要求に安倍政権が抵抗出来るか。それは選挙に勝てば勝つほど難しくなる。逆に与野党の議席数が僅差であればあるほど日本の対米交渉力は強まる。それが戦後の日米交渉を巡る政治力学である事を国民は知るべきである。
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