大人の日帰りウォーキング 最初に大きな神社を参拝し願い事を失敗する 1日20kmひとり旅を楽しむ話
新緑の葉で生い茂る二本のケヤキ並木は、一直線に伸びる参道を両脇から覆っている。初夏を思わせるような日差しは木漏れ日となり、石畳の参道に降り注いでいる。大きな木々に囲まれている空間は何だか心地よく感じる。
休日の朝をのんびりと散歩するご夫婦や、犬を散歩している人。特別に弾む会話をするでもなく、当たり前のように過ごす人々の姿は、日常の一場面を映し出した光景であり、長く続く広々とした参道には穏やかな時間が流れていた。
旧中山道より神社に向かう参道の長さは2kmもあり日本一と言われている。参道の先に鎮座しているのは氷川神社。全国に280社ある氷川神社の総本社であり、武蔵国一之宮でもある。かなり大きな鳥居と立派な狛犬に圧倒されながら、その迫力より人々に大切にされてきたことが伝わってくる。大宮の地名は氷川神社に由来するのか。
江戸東京日本橋を出発して、徳川幕府が作った五街道の1つである中山道を、日帰りで歩きつないでようやく三日目。今日は、4番目の宿場である大宮宿より出発する。
大宮宿は現在の埼玉県さいたま市の大宮区。浦和市と大宮市と与野市が合併した時は話題となり、さいたま市というネーミングがぴったりだと感じたことを思い出した。
参道を先に進んで目に飛び込んできたのは、池に赤い橋がかかるとても美しい光景だった。池の周りには豊かに木々が生い茂り、穏やかな湖面に影を落としている。向こうに見える島にも神社がある。大切にまつられているその風景に神社全体の歴史があることを感じさせられる。
楼門(ろうもん)をくぐり本殿に向かう。人は多くないけれど、日中になれば多くの参拝客が訪れるのだろう。
お賽銭をもって本殿前に向かう。神社だから願い事か…。
氷川神社も多くの参拝者が来られるだろうから、神様も大変だろう。1人1つ以上に願い事があるはずだから相当な数になる。人間も大変だけれど、神様も楽じゃないかな。
神様にお願いする内容は、合格祈願や家内安全、病気平癒が多いように思うけれど、時々、かなり熱心にお願いをする人を見かけることもある。頑張ってお願いをするにはそれなりの思いがあると思うけれど、無理難題ではないだろうかと思う…。やっぱり神様も大変だ。
もちろん、私も苦しいときは神頼みをするし、神様だけでなく仏さまだって頼ったりするので、いい加減だったりする。願いをかなえてくれる相手は誰でも良いのかと、自分自身に突っ込んでみるけれど、願いはかなわないよりはかなうほうが良いに決まっている。
そんなことを考えていたら、後ろに人が並んでいる気配に気が付いた。あれ、願い事が決まっていない。焦るけれど、時すでに遅かった。混んでいる訳ではないけれど、おばさん1人で長々と神様に願い事をする様子は、周りから見ると切実さしか感じないだろう。そして、おばさん1人が神殿に向かう切実な後ろ姿は、いろいろな意味で周りの人々に心配をかけてしまう。早く何とかしないと…。
神社に来ると、必ず願い事をしなければならないと思い込んでいるのか、願い事をしないと損をしたように感じてしまうようにも思う。急いで頭の中の願い事を探して、取り急ぎ、今日一日の無事をお願いした。きっと神様は、「はいはい」と、軽く返事して流すだろう。取り急ぎの願い事にまで付き合うのは大変だ。私が神様だったらそうする。これって、願い事に失敗だよね…。
参拝を終えて、神社にある特有の静かな非日常の空間の中をゆっくりと歩く。蛇の池と言われる清水が湧きいている場所がある案内板があった。歩き進むにつれて、他の参拝者はいなくなり、山深い森の奥のような場所に蛇の池はあった。流れ出す美しい水と、周りの木の緑が美しく、時折吹いてくる爽やかな風と風に揺れる木の葉の音に心が休まるのを感じた
人々は、こんこんと水が湧き出る場所は神様がそうしていると考えて大切にしてきた。2400年以上の歴史があると言われる氷川神社を人々が大切にしてきた気持ちが少しだけわかったような気がした。
空を見上げると、木の葉の間から青い空がのぞいていた。今日は暑くなりそうだ。
神社を後にして先に進もう。今日も20kmをこえる距離を歩く予定だ。リュックよりマイボトルを取り出して水分補給をし、次の宿場である上尾宿に向かって歩き始めた。
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前回の話はこちら
日帰り旅 おばさん2人が一日20kmのウォーキングに挑戦する話(前編)
【番外編】 夫婦二人で挑戦した話はこちら
大人の日帰りウォーキング アラフィフ夫婦の歩く旅 あなたと越えたい峠越え(前編)