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「電話おじさん」が知らない、若手が離れる本当の理由 デジタル時代に逆行する電話文化の真実

横山信弘経営コラムニスト
「電話おじさん」は話が長い……(写真:イメージマート)

オフィスの風景が変わってきた。かつては電話の呼び出し音が鳴り響いていたが、今では静かなタイピング音だけが聞こえる。この変化に戸惑う中高年社員と、当たり前のように受け入れる若手社員。そこには世代間のギャップだけでなく、テクノロジーの進化に対する認識の差がある。

電話を恐れる若者、非効率的だと言って使いたがらない若者に対して、中高年のベテラン社員は苛立ちを覚えるかもしれない。しかしデジタル技術が進化し、組織内コミュニケーションの効率化が求められる現代において、電話はメインのコミュニケーション手段ではなくなった。

今回はなぜ若手が電話から離れるのか? その理由と、どのようにコミュニケーションをとったらいいのか、解説した。とくに中高年の管理職の方々は、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

■「電話おじさん」とは?

「電話おじさん」とは、ビジネスにおいてメールやビジネスチャットより電話をメインのコミュニケーション手段にしている中高年の男性だ。

「電話おじさん」は、自身が慣れ親しんだツールへの依存度が高い。オフィスで顔を見て話せるのならミーティングルームや会議室で直接話したがる。しかし相手が在宅勤務をしていたり、出張先にいるならもっぱら電話を使う。

メールが来ても電話で話すし、チャットで連絡があっても電話で返す。

「電話で話したほうが早いと思って」

と言うが、単に「電話おじさん」は新しいコミュニケーション手段に適応できていないだけだ。だからリアルの会議室だと意気揚々としているが、ZoomやTeamsなどを使ったオンライン会議では覇気がない。

■若手が電話から離れる3つの理由

それでは、なぜ若手は電話を避けるのか。その理由は主に3つある。

(1)強制的な「割り込み」への抵抗

(2)記録が残らないことへの不安

(3)いきなりの電話に対する恐れ

それぞれの理由について、具体的な事例を交えて解説したい。

(1)強制的な「割り込み」への抵抗

近年電話は、相手の都合を無視した「自分視点」のコミュニケーションツールと認識されることが増えた。若手のみならず、知人の48歳のコンサルタントも、54歳の経営者(従業員8千人)も、

「基本的に、電話は出ない」

と公言している。事前にメールや打合せがあれば別らしいが。彼ら彼女らは自分のペースで仕事を進めたいと考えており、突然の割り込みを嫌う。タイパを重視する若者も同じ思考だ。ある新入社員は、上司から突然の電話で呼び出されることに強いストレスを感じている。

「集中して作業しているときに電話が鳴ると、思考が中断されてしまいます」

と言う。以前「留守電機能」で対応したが、「なぜ電話をとらない!」と上司に激昂されてからは、よけいにストレスを覚えるようになったという。

(2)記録が残らないことへの不安

「あのとき言ったじゃないか」

「おいおい、そんなこと言ってないよ。何を聞いてたんだ」

若者は、このような上司の指摘に強いストレスを覚える。昔なら黙って聞いていた部下も現代は黙っていられない。なぜなら電話以外にも、記録に残せるコミュニケーション手段が他にあるからだ。

「電話おじさん」は上司だけでなく、お客様にも多い。ある営業担当の若手は、どんなにメールで細かく記しても、そのメールに返信せず電話で用件を伝えてくるお客様に不信感を抱く。

「重要な内容なのに、よく電話で話せるな、と思います。契約は書面でかわすくせに」

(3)いきなりの電話に対する恐れ

いきなりの電話が苦手な人は増えている。電話は予告なしにかかってくることが多いため、心の準備ができていない状態で会話を始めなければならない点がストレスになるのだという。

ある若手は「心の準備ができていないのに、何を話したらいいか分からない」と言う。ビジネスマナーに対する不安も大きいようだ。

「20歳も年上の人から電話がかかってきて、失礼なことを言ってしまわないか、気になって仕方がない」

だから電話では相槌を打つばかりで、ほとんど何も話せないと言う。

■デジタル時代のコミュニケーション戦略

「電話おじさん」と若手の溝を埋めるには、双方の理解と歩み寄りが必要だ。

まず第一に、用途によってコミュニケーションツールを使い分けよう。電話をゼロにはできないだろうが、電話のメリット・デメリットをお互い理解したうえで使うことが重要だ。メールやチャット、オンライン会議など、用途に合わせて使い分けるのだ。

第二に、電話をする際のルールも決めておこう。事前にメールやチャットで連絡を入れておく、電話の用件を簡単にまとめておく、電話で話した内容はまとめて言語化して送る、等だ。

こういった対策をすることで、組織内コミュニケーションは円滑になるし、何より業務の生産性アップにも繋がるだろう。私(55歳)も、昨年から「電話しない」と部下たちに公言した一人だ。

世間話をしたい場合は、事前に確認して電話するが、報告・連絡・相談といったコミュニケーションはすべてメールかチャットで実践している。一年以上続けて「記録に残ること」「相手の時間を奪わないこと」の大切さを強く実感している。

<参考記事>

いつも水を差す発言をする組織の問題児――「消燃人」にはどう話すのか? どう対抗するのか?

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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