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【インタビューの全貌を紹介】メーガン&ハリー、オプラに語る3:自殺願望編

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
インタビュー後の英タブロイド紙の表紙(写真:REX/アフロ)

記事を最初から読みたい方はこちら「1、キャサリン妃とエリザベス女王編」

3、自殺願望編

2018年、メーガンがロイヤル・ファミリーに加わったとき、彼女は容赦ない、広範囲に渡る攻撃の対象となった。彼女に向けられたオンラインでの人種差別的な虐待。否定できない人種差別的な含みがあった。これは、他の王室(王族)で見られたような報道とは一線を画していると、オプラさんはナレーションで語る。

英国のタブロイド紙やインターネット上の荒らしによる、絶え間ない批判、露骨な性差別や人種差別の発言があった。彼女に対する人種差別をリアルタイムで目の当たりにしたのだ。彼女のことを『ストレイト・アウタ・コンプトン』と呼んでいた。イギリスの報道機関からの毎日の猛烈な批判と非難は圧倒的なものとなり、メーガンの言葉では「ほとんど生き延びられない」状態になった。

『ストレイト・アウタ・コンプトン』とは、2015年のアメリカ映画のタイトル。伝説的なカリフォルニア出身のヒップホップ・グループ 「N.W.A」の伝記音楽映画である。このグループは黒人の5人組で、ギャングの日常や攻撃的で暴力的な内容の歌詞で、社会的危険性から物議を醸した。N.W.AとはNiggaz Wit Attitudes(主張する黒人たち)の略。

オプラ:あなたはポッドキャスト(映像や音声のブログ)で、「ほとんど生き延びられない」と言っていましたが、とても驚きました。何か心のトラブルのようなものを抱えているように聞こえたからです。実際には何が起こっていたのでしょうか。「ほとんど生きのびられない」というのは、限界点があったように聞こえます。

メーガン:ええ、ありました。ただ、解決策がわからなかったのです。夜も眠れず、どうしてこのようなもの全部が大量生産されるのか、理解できないです。また、私は見ていなかったのですが、母や友人の表情からそれを感じたり、彼らが私に泣きながら電話をかけてきて「メグ、彼らはあなたを守っていないわ」言われたりすると、一層悪くなるんです。そして、私が息をしているだけで、すべてが起こっていることに気づいたのです。

オプラ:うーん。

メーガン:そして、当時は本当に恥ずかしかったし、ハリーにこのことを認めなければならないことが恥ずかしかったんです。彼がどれほどの喪失に悩まされているか知っているので。

でも、もし言わなかったら、自分はそれをやると思っていました。そして、私は・・・ただもうこれ以上、生きていたくないと思ったのです。それはとてもはっきりしていて、現実的で、恐ろしいほどの絶え間のない考えでした。そして、私は憶えています。彼がいかに私を抱きしめてくれたかを、憶えています。

そして私は、機構に行って、どこかで助けを求めたいと言いました。「今までこんな感覚になったことはないので、どこかに行かなくてはいけない」と言いました。そうしたら、機構のためにならないからダメだと言われたんです。それで、私は電話をかけたのですが・・・。

オプラ。つまり、組織は決して一人の人ではないということですね。それとも、一連の人々なのでしょうか。

メーガン:いいえ、それは一人の人です。

オプラ:一人の人ですね。

メーガン:何人かの人々です。でも、私はただ助けを求めるために、一番シニア(年上?上級?)の人々のうちの一人のところに行きました。私がこの話をシェアしたのは、助けが必要だと声を上げることを恐れている人がたくさんいるからです。私は個人的に、声を上げるだけでなく、声を上げたときに、「ノー」と言われることがどれほどつらいかを知っています。

オプラ:うーん。

メーガン: それで、私は人事部に「私は本当に助けが必要なんです」と言いました。昔の仕事では組合があって、私を守ってくれましたから。そのときの会話を昨日のことのように覚えています。彼らは言いました。「あなたのお気持ちはわかります。でも、あなたは機構の給与従業員ではないので、あなたを守るためにできることは何もないのです」。

組合を頼るべく、宮殿スタッフの人事部に連絡をする・・・いかにメーガンさんが混乱しているか、そして王制というものがわかっていないか、よく表しているエピソードだ。

アメリカでは、ここで援助がないことを「差別」の例に挙げて、批判する人々がいる。きっと多くの日本人は「何言ってんの? 無理に決まっている」と思うだろう。確かにそうなのだが、でも筆者は、批判する人たちの気持ちはわかる。とんちんかんな場所に助けを求めていたのだとしても、病気の人が助けを求めていたのなら、何か手助けするべきだと考えるのだ。

自分に何かできないのなら、「ここに連絡してみたらどうですか」と、病院や援助団体を紹介するだけでもいい。紹介といっても、心当たりをちょっとググって、連絡先を教えるだけでもいいのだ。その小さな親切が、どんなに困っている人の気持ちを救うか。

でも、メーガンさんの言葉を信じるのなら、「従業員ではないから」と断られた。同情を示してくれているのにも関わらず。それが、対応を批判する人々には、人間としての優しさや、親切、助け合いを阻害する、差別的な壁と感じたのではないか。

メーガンさんは、黒人という壁にぶちあたって社会的に低い地位に押しやられたかと思うと、今度は王族だからと突き放された。従業員が王族に対して「うっかり何かできない」と壁を築くのも、気持ちはわかるのだが。

つまりはその壁とは、「身分」という壁だと筆者は思う。

メーガン:これは選択肢ではありませんでした。これは(複数の)メールで、「私は自分の精神状態を心配しています」と言って助けを求めたのです。そうしたら、みんなが「Yes、Yes、私たちが外で見るものは、他の人と比べて不釣り合いなほどひどいものだ」と言ってくれたのです。でも、何もしてくれませんでした。私たちは解決策を見つけなければなりませんでした。

オプラ:ワオ! 「もう生きていたくない」って、それは・・・。

メーガン:それですべての人にとってすべてが解決すると思っていたんです。

オプラ:それで、自傷を考えていましたか。自殺願望はありましたか。

メーガン:はい。これはとてもとても、はっきりしていました。

オプラ:ワオ。

メーガン:とてもはっきりしていて、とても怖かったです。誰に頼ればいいのかもわからなかったですし。私が助けを求めた人の中で、今でも友人であり親友であり続けているのは、夫の母の親友の一人、ダイアナの親友の一人でした。というのも、他に誰が、実際に内側にあるものを理解できる人がいるというのでしょう。

オプラ:病院に行こうと思ったことはありますか。それとも、どこかで診断することができるのでしょうか。

メーガン:いいえ。それは私が求めていたことでしたが。そんなことはできません。宮殿にUberを呼ぶこともできなかったし。

オプラ:ええ。

メーガン:行くことはできないんですよ。つまり、理解してほしいのですが、私がその家族に加わったとき、パスポート、運転免許証、鍵を見たのは、ここに来るまではそれが最後でした。すべて奪われました。もうそれらを見ることはありませんでした。

オプラ:あなたの表現では、自殺の危機に瀕しているにもかかわらず、助けを得ることができず、閉じ込められているように見えます。それがあなたが表現していること、私が聞いていることです。

メーガン:はい。

オプラ:これは正確な解釈ですね?

メーガン:それが真実です。

オプラ:真実なのですね。

メーガン:私はたくさん悲しんでいます。私は父親を失いました。赤ちゃんも失った。自分の名前も失いかけました。つまり、アイデンティティの喪失です。でも、私はまだ立っています。このことから引き出せることで、人々に望むことは、別の側面があることを知ることです。人生は生きるに値するということです。

オプラ:OK。あなたが今、そのことを理解してくれてとても嬉しいわ。ちょっと休憩しましょう。皆さん、ハリーが参加しますよ。

◎続き:「4:なぜ英国を去ってアメリカに行ったのか編」

◎参考記事(Yahoo Japan 2018年5月月間MVA受賞記事)ヘンリー王子はなぜメーガン・マークルさんを選んだのか。オバマ前大統領夫妻との関係は。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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