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なでしこJ。池田監督是非論が出ない不思議。「相手にボールを持たせておく」守備的サッカーを続けるのか

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 女子W杯準々決勝でスウェーデンに敗れたなでしこジャパン。予想通りの展開に陥り、敗退するという観戦していて実に歯がゆい展開だった。スウェーデンの作戦勝ちと言うより、日本の根本的な戦略ミス。後方に引いて構える守備的サッカーが仇になった。敗因が選手の力不足というより監督の力不足にあることは明白。あまり言いたくないけれど、前回のこの欄で指摘したことがそのまま敗因になったわけだ。 

 しかし池田太監督の采配について意見する人はあまりにも少ない。よく女子選手の待遇が取り沙汰されるが、監督も年俸で男子の森保一監督に大きく劣る。何分の一かに過ぎない。批評の対象から外したくなるが、その年俸の原資には選手からの登録料も含まれる。代表監督の采配については、メスが入れられなければならない背景を抱えている。

 オーソドックスなサッカーをする監督の下でなでしこを戦わせたかった。選手と監督を世界的レベルで見た時、劣るのが監督であることが、スウェーデン戦で白日の下に晒された格好だ。勝てたかもしれない試合を落とした原因が、ここまで分かりやすいケースも珍しい。パリ五輪は別の監督で、と言いたくなるが、世の中から池田監督是か非か論はまったく聞かれない。その生温さこそが1番の敗因ではないかと言いたくなるほどである。

 繰り返すが、カタールW杯を戦った森保ジャパン同様、相手ボールに転じるや5バックでゴール前を固めようとするサッカーである。佐々木監督時代、高倉監督時代からの大きな変更点であることを忘れてはならない。

 あえて日本は方向転換を図り、それが失敗に終わった。ベスト8に終わった今回のあらましを一言でいえばそうなる。なぜこの監督を選んだのか。就任会見に同席した任命者である田嶋幸三会長、今井純子女子委員長への不信感も改めて募る。

 2戦前、スペインの支配率が70%を超えると解説者と実況アナ氏は「相手にボールを持たせておく感覚が必要だ」と述べた池田監督の言葉を紹介し、それを全肯定した。持たれても構わないとは、引いて構えることを辞さないと同義語で、守備的サッカーを宣言したも同然である。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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