広東料理と日本酒が一夜限りのペアリングディナー いきなり高級ホテルに“田んぼ”が出現したワケ
日本酒の輸出が伸長
日本酒の輸出額が伸長しています。
・2022年度日本酒輸出実績 金額・数量ともに過去最高を記録!輸出額は475億円(昨対比:118.2%)で13年連続前年を上回る!/日本酒造組合中央会のプレスリリース
全国約 1,700 の酒蔵で構成される日本酒造組合中央会は、2022年度の日本酒輸出の売上総額が474.92億円(数量35,895キロリットル)に上り、13年連続で新記録を達成したと発表しました。
・ニューヨークで日本酒が【1本115万円】で落札! 超高額の「獺祭」が誕生したワケ(東龍)/Yahoo!ニュース
海外では日本酒が大人気となっていますが、日本酒の価値をさらに高めようと「獺祭」で有名な山口県に本拠を置く旭酒造が、画期的な取り組みを行っています。代表取締役社長を務める桜井一宏氏の想いも紹介したのが、こちらの記事でした。
国内では減少する日本酒の消費量
日本酒は海外でのプレゼンスを増していますが、日本国内でとなると、状況は違います。
農林水産省によると、日本酒は日本国内での消費量はピーク時1973年には170万キロリットルを超えていましたが、他のアルコール飲料との競合などによって減少していき、2022年では約40万キロリットルまで減少しているのです。
このような状況で、日本酒を促進するようなイベントが東京で行われます。
それは、先に紹介した旭酒造の「獺祭」と、美獺祭×SENSE (C) 東龍食のホテルと称されるマンダリン オリエンタル 東京の広東料理「センス(SENSE)」のコラボレーションです。
「獺祭×SENSE」とは
2023年10月6日に行われる「獺祭×SENSE」(35,000円)では、マンダリン オリエンタル 東京「センス」の料理に「獺祭」がペアリングされるという意欲的なガラディナー。7品のメニューに7種の「獺祭」がマリアージュされるので、新たな食味を体験できます。
今回のコラボレーションでは、広東料理「センス」でチャイニーズ エグゼクティブ シェフを務める中間利幸氏が料理を紡ぎます。中間氏は「センス」オープニングスタッフであり、2018年からシェフに就任したという、マンダリン オリエンタル ホテルの美食を熟知した料理人。
シェフソムリエを務めるのは、野坂昭彦氏です。2023年8月29日から30日にかけて行われた第10回全日本最優秀ソムリエコンクールで優勝を果たしたばかりで、これまでも多くのコンクールで優勝してきた日本有数の実力派ソムリエです。
こういった才能溢れるシェフやソムリエが「獺祭」とコラボレーションした珠玉のメニューは次の通り。
・「酔っ払い海老」獺祭で酔わせた山口県産車海老 米粉脆漿揚げ
・西太后を騙したかに玉の始まり
・黒富士農場オーガニック卵とたらば蟹の蟹玉 山田錦のチュイル
・松茸と上海蟹の雲呑 上湯スープ
・甘鯛の鱗焼き 甘鯛出汁のXO醤 咸檸檬と九条葱のアクセント 山田錦の米粉ソース
・和牛ばら肉と獺祭酒糟と広東甜梅菜煮込み
・獺祭の酒粕と白ごまの担々麺
・獺祭の酒粕 広州紅砂糖 東京牛乳のアイスと SENSE の杏仁豆腐
この中からいくつかの料理とペアリングを紹介しましょう。
「酔っ払い海老」獺祭で酔わせた山口県産車海老 米粉脆漿揚げ
山口県の車海老を獺祭で酔っ払い海老にし、米粉の天麩羅に仕上げました。XO醤が添えられているので好みで合わせるとよいでしょう。海老には旨味があるので、野坂氏が「ふくよかで甘味の余韻が長い」と説明する「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」が合わせられています。
甘鯛の鱗焼き 甘鯛出汁のXO醤 咸檸檬と九条葱のアクセント 山田錦の米粉ソース
山口県萩の甘鯛をカリカリの鱗焼きにしました。ソースは甘鯛の骨からでた出汁とXO醤、獺祭の米粉で構成。塩レモンと九条ネギがよいアクセントです。料理には爽やかな柑橘のフレーバーがあるので、8%精米の力強い独特な魅力の「獺祭 未来へ 農家」がぴったり。
和牛ばら肉と獺祭酒糟と広東甜梅菜煮込み
リブロースを獺祭の酒粕でやわらかく煮込みました。箸ですっと切れるやわらかさで、酒粕によってまろやかな味わいに。上には高菜に似た梅菜。マコモダケ、茄子、ゴボウ、蓮根、クレイジーピー、レッドソレルと野菜もたっぷりです。「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分 遠心分離」はきれいな甘味の中に繊細なニュアンスがあるので、リブロースの旨味を優しく包み込みます。
獺祭の酒粕 広州紅砂糖 東京牛乳のアイスと SENSE の杏仁豆腐
酒粕の香ばしい酵母をまとった東京牛乳のアイスクリーム。下には、中国の「南杏(ナンハン)」と「北杏(パッハン)」という2種類の乾物がつかわれた、こだわりの杏仁豆腐。隠し味に大葉がしのばされており、豊かな香りです。
企画された背景
世界で有名なラグジュアリーホテルと日本酒のコラボレーションだけあって、他では体験できないような内容です。これほどの企画が、なぜ持ち上がったのでしょうか。
料飲部長を務める内坂徹氏は振り返ります。
「マンダリン オリエンタル 東京はサステナブル活動に注力しています。旭酒造もサステナブルな取り組みに力を入れており、無駄を極力ださない酒造りや、酒米や山田錦に対するこだわり、農家の方への思いや商品づくりをされていて、非常に感銘を受けていました。そこで、何とかして協業できないかと打診させていただいた次第です」
2022年9月くらいから、ソムリエの野坂氏とこの企画を相談していたといいます。
旭酒造を訪問
内坂氏は続けます。
「東京で企画の大枠を詰めた後、2023年6月に山口県岩国にある旭酒造を訪ねました。山奥に研究所のようなクリーンな12階建てのビルがあり、蔵の中はチリひとつ落ちておらず、プロフェッショナルの仕事をされていると感じましたね。訪問した時に感じたことをそのまま再現できないか考えたところ、ホテルの中に田んぼを表現するのがよいのではと思いました」
内坂氏が述べたように「センス」のティーコーナーで田んぼを再現することに成功。旭酒造代表取締役社長の桜井氏は、次のように想いを述べます。
「ポップアップには多くのお客様がいらっしゃるので、是非とも、ありのままの田んぼを見ていただきたいと思いました。田んぼをそのままくり抜いて飾っていますので、凛とした稲穂の姿をご覧いただけると幸いです。稲穂と東京スカイツリーが一緒に見られるアングルもあるので、とても感慨深いですね」
中国料理と日本酒のペアリング
野坂氏は「獺祭」について次のように印象を述べます。
「とても美しくて、一貫性がある日本酒です。ペアリングではいかに料理と日本酒、どちらの旨味も活かすことを考えました。料理に酒粕をつかうと、日本酒との相性が抜群によくなります」
これを受けて中間氏は「どのようなペアリングにするかは、よく話し合いました。『獺祭』に合うものをイメージしながらメニューを組み立てるのは簡単ではありませんでしたが、とても楽しいチャレンジでした。全ての料理に、広東料理で使われる漬物、発酵、熟成を取り入れて、旨味を主体にしています」といいます。
「獺祭」を心ゆくまで堪能できる機会
今では日本酒のペアリングも一般的になってきましたが、中国料理とのペアリングとなるとなかなか体験する機会がありません。
「センス」でのペアリングだけではなく、「マンダリンバー」では2023年9月1日から10月31日までの間、「獺祭」を用いた2種類のカクテルや「獺祭」8銘柄がグラス(「獺祭 純米大吟醸 スパークリング 45」はボトルのみ)で体験できるのも非常に魅力的です。飲み比べてみたい方には、3銘柄の唎き酒セットも用意されています。
東京で「獺祭」を心ゆくまで堪能できる貴重な機会なので、是非ともマンダリン オリエンタル 東京に足を運んでください。