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台風2号が沖縄接近中 台風の最接近時刻がわかる「暴風域に入る確率予報」

饒村曜気象予報士
梅雨前線と台風の予想天気図(5月30日21時の予想)

九州から東海で梅雨入り

 フィリピンの東を台風2号が西進していますが、日本列島付近では停滞前線がはっきりしてきました(タイトル画像参照)。

 そして、この停滞前線に向かって南から暖湿気流が入り、東北~九州北部の広い範囲で雨となり、この雨が続くということから、気象庁では九州北部、中国、四国、近畿、東海で梅雨入りしたとみられると発表しました(表)。

表 平成23年(2011年)の梅雨入りと令和5年(2023年)の梅雨入り
表 平成23年(2011年)の梅雨入りと令和5年(2023年)の梅雨入り

 いずれも平年より一週間程度早い梅雨入りですが、九州南部と関東甲信地方は、5月29日の段階では梅雨入りとはなりませんでした。

 なお、東日本大震災のあった12年前、平成23年(2011年)は西日本から東日本太平洋側の梅雨入りが平年より早く、関東甲信地方で5月27日に梅雨入りしたあとに、今年と同じ番号の台風2号が北上して沖縄に接近しました。

台風2号の動き

 台風2号は、フィリピンの東の海面水温が30度以上という記録的に高い海域を通過中の5月26日には最低気圧905ヘクトパスカルの猛烈な台風となり、小さな眼がくっきりとしていました。

 現在は、台風が発達する目安の海面水温である27度より若干高い海域を通過中で、最盛期に比べれば、台風の眼がぼやけてきています。

 とはいえ、非常に強い勢力です。

 非常に強い勢力でフィリピンの東を西よりに進み、次第に進路を北よりに変えて、5月30日には沖縄の南に達する見込みです(図1)。

図1 台風2号の進路予報と海面水温分布図(5月29日21時)
図1 台風2号の進路予報と海面水温分布図(5月29日21時)

 沖縄県の先島諸島では、5月29日から大しけとなっており、うねりを伴った高波に警戒してください。

 台風2号は、その後、東シナ海をゆっくり北上する見込みで、鹿児島県奄美地方の沿岸の海域でも6月1日頃からうねりを伴い大しけとなるでしょう(図2)。

図2 台風2号による波浪の予想(6月1日9時の予想)
図2 台風2号による波浪の予想(6月1日9時の予想)

 沖縄地方は、台風の暴風や大雨に警戒が必要ですが、台風の動きが遅いということは、日本付近の前線に向かって台風からの湿った空気の流入が続くということです。

 西日本から東日本各地でも、前線による大雨に注意が必要です。

台風の最接近時間がわかる「暴風域に入る確率予報」

 確率予報は、ある現象がおきる確率を示す予報です。

 気象庁が1980年(昭和55年)から始めた降水確率予報が有名ですが、平成4年(1992年)から「暴風域に入る確率予報」も始まっています。

 暴風域に入る確率は、ある地域が対象時間中に台風の暴風域内にある可能性を示す確率で、暴風域の大きさや予報円の広がりを考慮して計算したものです。

 昭和57年(1982年)に台風の進路予報表示が扇形から予報円にかわったことから予報が可能となりました。

 平成4年(1992年)のスタート時点では、全国29の代表地点についての発表だけでしたが、平成15年(2003年)からは、全国の注意報・警報を発表する地区単位の約370の区域を対象として、3時間刻みの48時間先までの時系列の情報などが、平成18年(2006年)からは72時間先までの暴風域に入る確率を格子点ごとに計算し、面的に表示した「暴風域に入る確率の面的情報」の提供を始めています。

 「暴風域に入る確率の面的情報」は、台風の強度予報が5日先まで延長となった令和元年(2019年)からは、5日先までの計算となり、現在に至っています。

図3 暴風域に入る確率の面的情報(5月29日21時の台風予報をもとにした4日先までの確率)
図3 暴風域に入る確率の面的情報(5月29日21時の台風予報をもとにした4日先までの確率)

 「暴風域に入る確率予報」と「降水確率予報」の使い方の違いは、動画とスチール写真の違いに似ています。

 降水確率予報は、発表された確率を元に、降水による損害が大きい時や対策費用が小さい時には、小さな確率でも対策をとるように使います。

 「暴風域に入る確率予報」は、このような使い方に加え、きめ細かい予報が台風の進路予報が発表されるごとに更新されますので、確率の値の変化にも着目する使い方ができます。スチール写真では分からなかった表情の変化が動画ではわかるということに似ています。

 暴風域に入る可能性が100%になった場合は、暴風域に入ったときですが、暴風域に入る可能性が一番高い時間帯は、台風最接近の時間帯と考えられます。

 令和5年(2023年)5月29日21時の台風2号の予報では、八重山地方の石垣市では、6月1日昼すぎ(12時から15時)が55パーセントと一番大きな値となっていますので、この頃に最接近と推定できます(図4)。

図4 沖縄県八重山地方の石垣市と沖縄本島地方の南部が暴風域に入る確率(5月29日21時の台風2号の予報をもとにした3時間ごとの確率)
図4 沖縄県八重山地方の石垣市と沖縄本島地方の南部が暴風域に入る確率(5月29日21時の台風2号の予報をもとにした3時間ごとの確率)

 八重山地方は、厳重な警戒が必要です。

 宮古島地方は、八重山地方より暴風域に入る確率が高く、60パーセントを超えていますので、さらに厳重な警戒が必要です。

 加えて、沖縄本島地方の南部では、暴風域に入る確率が低いのですが、6月2日未明(0時から3時)が18パーセントと一番大きく、この頃に最接近と考えられます。

 暴風域が小さくなることに加え、予報円の広がりを考慮して計算しているため、沖縄本島地方の暴風域に入る確率は八重山地方の暴風域に入る確率より小さな値となっていますが、最新の予報ほど値が大きくなっています。

 八重山地方だけでなく、沖縄本島南部も暴風域に入る可能性が高まってきており、防災活動を急ぐときです。 

「暴風域に入る確率予報」の最大値の変化

【5月29日9時の予報】石垣市:46パーセント、沖縄本島南部:1パーセント

【5月29日15時の予報】石垣市:57パーセント、沖縄本島南部:10パーセント

【5月29日21時の予報】石垣市:55パーセント、沖縄本島南部:18パーセント

【5月30日3時の予報】石垣市:43パーセント、沖縄本島南部:30パーセント、宮古島:64パーセント、久米島:34パーセント

タイトル画像、図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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