米太平洋陸軍司令官「アジア諸国は中国に対抗するためNATOのような協力体制に向かっている」
米太平洋陸軍のチャールズ・フリン司令官(陸軍大将)は5月8日、記者団とのテレカンファレンス(遠隔会議)で、中国の軍拡によってアジア諸国が欧州の北大西洋条約機構(NATO)に匹敵する米国とのより緊密な戦略的パートナーシップ構築に駆り立てられていると述べた。
フリン司令官は「私たちは彼ら(アジア諸国)が領土保全と国家主権を守るのを助けることができる」と語った。
米太平洋陸軍は日本をはじめ、本部のあるハワイ、アラスカ、韓国、オーストラリアなどインド太平洋地域に駐留する10万7000人以上の兵士と軍属を擁し、フリン司令官がそれを指揮している。
フリン司令官はこれまでも、過去80年間に起きた3つの最大規模の地上戦、つまり、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争がすべて米陸軍の太平洋作戦地域内で起きたと強調してきた。
フリン司令官は現在、アジアでの中国の支配的立場とロシアの軍事プレゼンスの増大に対抗する策の構築を支援するよう求められていると述べた。核ミサイル開発を強行する北朝鮮も、この地域の安定を脅かし続けているのは言わずもがなだ。
しかし、フリン司令官は、太平洋地域の国家間の軍事協力がNATOに匹敵する形で統合されるまでには時間がかかると述べた。そして、現在は兵士や兵器、物資を、このインド太平洋地域の広大な距離や天候、地形を越えて移動させる能力を向上させていると述べた。
一方、中国は、地域のブロック化を推し進めるとして「アジア版NATO」創設の動きに強く反対している。
元防衛相で自民党の安全保障調査会長を務める小野寺五典・衆議院議員は8日、東アジアが新たな冷戦構造に向かっているとの見方を示した。そして、「東アジアで紛争が起きる可能性がある」と指摘し、そうした紛争を起こさないようにするために抑止力の向上が必要だと述べた。
(関連記事)
●小野寺元防衛相、「東アジアで紛争が起きる可能性がある」との厳しい見方を示す