米国の真似することを「改革」と考える安倍政権の馬鹿さ加減
フーテン老人世直し録(313)
文月某日
10日に行われた「加計学園」を巡る参考人招致は国民に「ていねいな説明」がなされるどころか疑惑をそのまま持ち越したに過ぎなかった。政府・与党が渦中のキーマンを隠したままにしておくからそうならざるを得ない。
その中でフーテンが注目したのは参考人として出席した加戸守行前愛媛県知事である。加戸氏は文科省の役人として前川氏の先輩に当たることから前川氏をけん制する意味もあったのだろう。もっぱら与党側が質問の対象にした。しかしその発言によって「加計問題」の本質というか安倍政権の本質が見えてきた気がする。
結論から言うと安倍政権は米国の真似を「改革」と考え、すべてを市場に任せれば何事もうまくいくとして、国家の責務を放棄することに価値を見出す政権である。しかし米国がどれほどの惨状を呈してきたかという現実を見ようとせず、ひたすら米国追随を続ける。
加戸前知事は「加計問題」の発端をBSE対策だと言った。狂牛病と言われたBSEは2000年代初頭に大問題となった牛の病気だが、世界最大の牛肉輸出国である米国に深刻な影響を与え、影響は米国からの牛肉輸入量世界一の日本にも及んだ。
2003年に米国でBSEが発生すると日本政府は米国産牛肉の輸入を差し止め、オーストラリア産に切り変えたことで早期の輸入再開を要求する米国政府との間に摩擦が生じた。日本が条件付き輸入を再開したのは小泉政権末期の2005年12月、輸入を大幅に緩和したのは第二次安倍政権の2013年である。
加戸前知事はこの時に米国政府がBSE対策として獣医師の数を増やすため獣医師養成大学を3校増設したことに刺激されたと言う。愛媛県にも獣医師養成大学を作ろうと考え、そこで今治出身の県会議員が加計学園の事務局長と「お友達」であることを知り、それで話がつながったと経緯を語った。
愛媛県としては12年前から「加計ありき」で大学の新設を要求し、しかし政府からは全く無視され、獣医師会の反対もあって実現できなかったのが、安倍政権の国家戦略特区に指定されたことで夢がかなったのだと言う。
加戸氏から見れば既得権益にゆがめられた行政が正常になったということだが、問題は加計学園と愛媛県だけでなく加計学園の理事長と安倍総理が「お友達」であることだ。既得権益の岩盤規制に穴を開け、その穴を通ったのが権力者の「お友達」つながりだけだったという話である。
しかも権力者の「お友達」は長年にわたり権力者を支援し続けてきた人物だからその決定過程には徹底した透明性が求められる。それがないと贈収賄罪が成立する可能性も排除できない。お隣の韓国ではそうした事件で権力者が失墜したが、加戸氏が真似ようとした米国では絶対に許される話でない。
加戸氏はおそらく米国の政治の仕組みをよく知らずに発言しているのだろう。米国を真似することが素晴らしいことでも何でもないことにも思いが至っていない。米国がBSE対策として獣医師の数を増やしたのは世界最大の牛肉輸出国として当たり前である。しかし日本はそれと同列ではない。
にもかかわらず安倍総理は「1校だけを認めたから疑惑をもたれた。だから全国展開して2校でも3校でも獣医師養成大学を作る」と発言した。これが何を意味するか、裏に何があるのかにフーテンは引っかかる。
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