エンジェルスはトレードで先発投手を放出し、5年前の本塁打王を獲得する。この動きは理に適っている!?
ワールドシリーズ終了の翌日、ロサンゼルス・エンジェルスは、グリフィン・キャニングと交換に、アトランタ・ブレーブスからホルヘ・ソレーアを獲得したことを発表した。
キャニングは、来年5月に29歳となる先発投手だ。今シーズンは、初めて規定投球回に到達し、171.2イニングを投げた。だが、162イニング以上の58人中、奪三振率6.82は55位、与四球率3.46は50位、防御率5.19は56位、FIP5.26は58位。いずれも、ワースト10にランクインした。来シーズンの終了後に、FAとなる。
FIPは、フィールディング・インディペンデント・ピッチングの略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。
ソレーアは、来年2月に33歳の誕生日を迎える。外野の両コーナーを守るが、守備は得意ではない。先発出場は、ここ2シーズンとも、DHが65%以上を占めた。カンザスシティ・ロイヤルズ時代の2019年に、48本のホームランを打ち、本塁打王を獲得。昨シーズンは、マイアミ・マーリンズで36本塁打を記録した。
昨オフ、サンフランシスコ・ジャイアンツと3年4200万ドル(2024~26年)の契約を交わし、夏のトレードでブレーブスへ移った。今シーズンは、両チームで計21本塁打ながら、移籍前の93試合で12本に対し、移籍後のホームランは49試合で9本を数えた。選球眼は悪くなく、ここ2シーズンの出塁率は.341と.338。ジャイアンツからブレーブスの移籍については、こちらで書いた。
◆「3年前の夏に獲得したスラッガーを再びトレードで手に入れる。3年前はワールドシリーズMVPを受賞」
今シーズン、エンジェルスのホームランは、両リーグ22位タイの165本だった。635得点と596打点は、どちらも28位だ。なかでも、DHの11本塁打と44打点は、どのチームよりも少なかった。
こうしたことからすると、エンジェルスがソレーアを獲得したのは、理に適う。エンジェルスでも、ソレーアは、DH出場がメインだろうが、マイク・トラウトがDH、ソレーアはレフトかライト、という試合もありそうだ。
また、このトレードにより、エンジェルスの外野手は、トラウト、テイラー・ウォード、ジョー・アデル、ミッキー・モニアックに、ソレーアの5人となった。外野とDHの計4ポジションに5人だ。このなかから、ウォードかアデルをトレードで放出してもおかしくない。この夏、ピッツバーグのラジオ局の番組、93.7ザ・ファンでホストを務めるポール・ザイスは、ピッツバーグ・パイレーツがウォードの獲得に動いている、と報じていた。ちなみに、モニアックを手放すと、トラウトをセンターからコーナーへ移しにくくなる。
一方、ブレーブスのDHには、マーセル・オズーナがいる。来シーズンは年俸1600万ドルの球団オプションなので、ブレーブスは、それを行使して残留させるだろう。オズーナとポジションがかぶるソレーアを放出し、予算に余裕を持たせることが大きな目的だったと思われる。
それに加え、キャニングには開花の可能性があると見ているのかもしれない。先発投手のうち、マックス・フリードとチャーリー・モートンは、今オフのFA市場に出る。また、4月に肘の靱帯修復の手術――インターナル・ブレーシング(人工靱帯)を使用――を受けたスペンサー・ストライダーは、来年5月か6月の復帰になりそうだ。
エンジェルスも、ローテーションは整っているとは言い難い。ここから、先発投手を手に入れようとするに違いない。ソレーアの獲得は、来シーズン、勝ちにいくつもりでいることを示している。