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2023年8月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
画像は筆者作成

 この記事では、先月の記事「2023年7月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート」に引き続き、世論調査会社グリーン・シップの「GS選挙調査センター」が全国規模で毎日実施している情勢調査のデータ提供を受け、モーニングコンサルト社の調査や、その他の調査機関の数字などから、内閣支持率や政党支持率の分析をお送りします。

岸田内閣の支持率、2度目の「底打ち」か?

モーニングコンサルト社(https://pro.morningconsult.com/trackers/global-leader-approval)より引用
モーニングコンサルト社(https://pro.morningconsult.com/trackers/global-leader-approval)より引用

 まず、モーニングコンサルト社のデータです。モーニングコンサルト社が行っている内閣支持率調査では、8月29日時点で、支持率が24%、不支持率が64%となりました。先月の調査から全く変わっておらず、不支持率が支持率を大幅に上回る状態が続いています。一方、下降傾向に歯止めがかかっているとの見方もできるかもしれません。

内閣支持率(2021年9月〜)、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
内閣支持率(2021年9月〜)、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 次に、グリーン・シップ社の調査によれば、8月の内閣支持率は23.0%、不支持率は68.6%となり、7月よりも更に悪化し、同社の調査における岸田内閣の支持率は、同内閣発足以来最低の数値をさらに更新する結果となりました。一方、支持率の低下は続いているものの、その悪化度合いは改善しており、直近の9月初動の動きではやや回復基調にもあります。JNNの最新の世論調査でも、岸田内閣の支持率が前回調査から1.6pt上昇し、38.7%だったことを踏まえれば、岸田内閣の支持率悪化に、一定の「底打ち」とみられる現象が起きている、とも言えます。

 支持率減少の理由としては、直近の物価高などが上げられますが、これらは今にはじまったことではなく、減少の理由というよりは上昇しない理由というところが正しいかも知れません。また、福島第一原発の処理水海洋放出については、政府としての発信が強化されたことに加え、中国政府による反発や中国からの嫌がらせ電話などの事象から、政府の対応を評価する面が多く、結果的に処理水海洋放出そのものが支持率に影響を与えた面は少なかったと言えます。むしろ、7月31日に発覚した、自民党女性局フランス研修における松川るい参院議員のSNSへの投稿から始まった海外研修に関する一連の報道が8月前半にダメージを与えたものの、月後半にかけてその影響が薄れ、支持率を低下させる要因が減ったことで、支持率が下げ止まったとの見方もできます。

自民を支える保守層の一部が無党派層、維新、国民へスイッチ

政党支持率、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
政党支持率、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 政党支持率も、8月は自民党が下落し、無党派層が上昇する、無党派層への回帰現象が見られました。先月の記事でも述べたような、一部の保守層の自民党離れが引き続き緩やかに起きているとみられます。「保守政党同士の改革合戦が政治を良くする」と考える馬場代表の意見に賛同する保守層が、自民から維新にスイッチする現象も同時に起きていることに加え、先月は国民民主党代表選で、与党との協調路線を打ち出す玉木雄一郎代表が再選したことから、今後自民党から国民民主党へのスイッチも起きる可能性があります。

 立憲民主党の支持率は下落傾向が続いており、浮上する要素が現状では大きくは見当たらない状況です。秋の臨時国会では物価高などの諸課題に加え、緊急事態条項に関する改正条文案への着手など、憲法改正論議が進むかどうかといった国会論戦も今後の野党の支持率の上下を左右する要因となるでしょう。

今後の政局を動かす要因と見通し

岸田総理の外交や内閣改造に9月は注目が集まる
岸田総理の外交や内閣改造に9月は注目が集まる写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 今月は、内閣支持率が底打ちかどうかが試される動きとなる見込みです。まず、岸田内閣は9月中に内閣改造の見通しとされていますが、その時期と内容が焦点となります。早ければ9月11日の週にも内閣改造とされていますが、国民民主党の連立協議が本格化するのかなどといった情勢も、内閣改造の時期を左右するとみられます。また、清和政策研究会(安倍派)の問題をふくむ派閥間勢力争いも、岸田総理の求心力に直結することから、閣僚人事の内容にも注目です。特に茂木幹事長、森山選対委員長、河野大臣らの処遇は、内閣支持率に直結すると考えられるほか、目玉人事の有無や、入閣直後のスキャンダルなどの有無も焦点です。

 さらに9月は、岸田総理の外交が多く予定されています。現在までに、インドネシアで開かれる東南アジア諸国連合関連首脳会議(4~7日)や、インドで開かれるG20首脳会議(9~10日)が予定されているほか、米国での国連総会(19日~)にも出席予定です。岸田首相の得意とされる外交ですが、G7の際こそ支持率上昇の要素とされましたが、ここ最近はそういった動きもなく、キャンプデービッドにおける日米韓首脳会談も支持率に影響を与えなかったとみられることから、岸田外交が支持率に与える影響は軽微との見方もあります。

 一方、「日本風力開発」に絡む贈収賄の関係で東京地検特捜部の捜査を受けている秋本真利衆議院議員は、外務大臣政務官を辞任し自民党を離党したものの、捜査の状況や進捗によっては、岸田政権にさらなる影響を与える可能性があります。また、「汚染水」発言で問題となった野村哲郎農林水産大臣についても、岸田首相は発言を「不適切で極めて遺憾」としつつも、「信頼を挽回することが重要」として留任させましたが、これまでも不適切とされる発言のあった野村大臣が内閣改造までの間に更なる不適切発言などがあれば、政権へのダメージは避けられません。

 いずれにせよ、内閣改造の中身と、国民民主党との連立協議入りの有無、さらに岸田外交の成否などが9月の内閣支持率を占う要因となりそうです。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。

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