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2023年7月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
画像は筆者作成

 この記事では、先月の記事「2023年6月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート」に引き続き、世論調査会社グリーン・シップの「GS選挙調査センター」が全国規模で毎日実施している情勢調査のデータ提供を受け、モーニングコンサルト社の調査や、その他の調査機関の数字などから、内閣支持率や政党支持率の分析をお送りします。

岸田内閣の支持率、回復の兆しは見えず

モーニングコンサルト社(https://pro.morningconsult.com/trackers/global-leader-approval)より引用
モーニングコンサルト社(https://pro.morningconsult.com/trackers/global-leader-approval)より引用

 まず、モーニングコンサルト社のデータです。

 モーニングコンサルト社が行っている内閣支持率調査では、7月25日時点で、支持率が24%、不支持率が64%となりました。先月の調査から変わらず、不支持率が支持率を大幅に上回る状態が続きました。

内閣支持率(2021年9月〜)、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
内閣支持率(2021年9月〜)、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 次に、グリーン・シップ社の調査によれば、7月の内閣支持率は25.2%、不支持率は65.8%となり、厳しい状況が続いています。グリーン・シップ社の調査における岸田内閣の支持率は、同内閣発足以来最低の数値となりました。内閣支持率下落の主な要因は、マイナンバーを巡る問題に対する適切な対策が打たれなかったことだと考えられます。個人情報保護委員会がデジタル庁に対する立ち入り検査を開始した際、河野太郎デジタル大臣が中東を訪問しており不在だったことを疑問視する声なども理由としてあげられるでしょう。岸田政権がこれらのマイナンバーを巡るトラブルに対応する有効な解決策を打ち出せていないことで、国民の岸田政権に対する不信感が増幅したと考えられます。

 岸田首相は内閣支持率の下落傾向が続く中、7月21日から全国行脚を開始しました。首相がこれまで掲げてきた「聞く力」を活用し、国民の声を政策に反映させることが期待されます。国民の声を聞き入れて政策に反映すること、そのために傾聴力をもって国民の不信感を払拭することが支持率下落傾向を脱却する鍵となるでしょう。

「保守支持層」と「なんとなく自民党」の自民党離れ

政党支持率、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
政党支持率、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 これまで、内閣支持率が下落しても自民党支持率は下落しないという状況が続いていました。旧統一教会を巡る問題が浮上した昨年も、グリーン・シップ社の調査では、自民党の支持率の変動に大きな影響を見られず、横ばいの状態が続いていました。しかし、2023年初旬頃から自民党の政党支持率は下落傾向にあり、ついに7月の世論調査では30%を切る29.4%となりました。この支持率下落の背景には保守層の自民党離れがあると考えられます。特に保守層の最右翼はLGBT理解増進法案の成立に強く反対していたと考えられるため、この法が成立したことで、自民党への支持を取りやめることを決意した人々が一定数いたと考えられます。

 一方、自民党支持率が下落したのと同時期に支持率が上昇している政党が日本維新の会です。統一地方選挙前後から日本維新の会が躍進し、自民党の保守層の一部が日本維新の会を支持し始めた可能性があります。日本維新の会の馬場代表が先日、自らの党を「第2自民党」という発言をして話題となりましたが、「保守政党同士の改革合戦が政治を良くする」と考える馬場代表の意見に賛同する保守層も多いのではないでしょうか。日本維新の会が、自民党に対抗し得る保守政党のポジションを取れる期待が高まり、自民党を支持していた保守層が離れていき、政党支持率が下落傾向にあると考えられます。

 もう一つに緩やかな自民党、言い換えれば「なんとなく自民党」支持者の支持離れもあると筆者は考えています。政権与党の時期が長い自民党一強体制が続くわが国においては、自民党支持かどうかがほぼ内閣支持かどうかに繋がり、政党支持の設問におけるキーファクターでした。民主党政権時代などの一部をのぞき、多くの世論調査でも政党支持の設問では、選択肢の第一に「自民党」が挙げられています。そのため、特に政治的関心がやや低めの若い世代を中心に、政党支持を聞かれた際、自民党の支持率が高いことを知っていて「同調性バイアス」が働き、何となく「自民党」と答えておけばいいだろう、という傾向があると考えられます。一方、昨年からの統一教会問題をはじめ、自民党に逆風の報道が多いことや、日本維新の会に追い風の選挙が多いことから、風向きに敏感な若い世代が「同調性バイアス」を乗り越えて、支持政党を自民党から日本維新の会に変えている、という見方もできます。

政党支持ではれいわ新選組が国民民主党をリード

政党支持率、日次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
政党支持率、日次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 また、これまでグリーン・シップ社の政党別支持率調査では、日本維新の会・立憲民主党に続く政党として、れいわ新選組と国民民主党が争っていました。しかし、7月の世論調査ではれいわ新選組が国民民主党を0.7ポイント差でリードしました。また、毎日新聞の世論調査(7月)でも、政党支持率においてれいわ新選組が7%と、共産党(6%)を超えて、日本維新の会(15%)、立憲民主党(9%)に次ぐ支持を獲得しています。れいわ新選組の支持率が上昇した要因の一つとして、立憲民主党支持層の一部が、れいわ新選組に流れていることが否定できません。

 立憲民主党の支持者が、保守色を強めて立憲民主党との対立を煽る現在の日本維新の会を支持することは想定し難く、従って「無党派層」に戻ったり、より革新的な政党に支持が移り変わったりしたと考えられます。特に革新的な政党として、立憲民主党の支持層を獲得し拡大したのがれいわ新選組だと考えられます。

政党支持率、月次、男性、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
政党支持率、月次、男性、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

政党支持率、月次、女性、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
政党支持率、月次、女性、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 れいわ新選組の支持率が上昇した要因の2つ目は女性支持層の拡大です。政党別支持率を男女別でみると、れいわ新選組は女性の政党別支持率が上昇しました。7月における男性の政党別支持率はれいわ新選組と国民民主党は同程度の支持率ですが、女性の支持率は1ポイント以上の差があります。また、女性の政党別支持率においては、れいわ新選組が公明党の支持率を一時的に上回っています。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。

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