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山形市が「ラーメン日本一」を奪還 なぜ山形や新潟はラーメン消費が多いのか?

山路力也フードジャーナリスト
山形市が2年ぶりに新潟市から首位を奪還し、ラーメン消費日本一に返り咲いた。

山形市が2年ぶりに新潟市から「日本一」を奪還

 総務省が7日に発表した家計調査によると、2022年の1世帯(2人以上)あたりの「ラーメン外食費」において、山形市が1万3196円で都道府県庁所在地や政令指定都市の中で最も多かった。

 この家計調査とは、総務省が統計理論に基づき選定された全国約9千世帯を対象として、家計の収入や支出、貯蓄に負債などを毎月調査しているもので、その結果は景気動向の把握や生活保護基準の検討などの基礎資料として利用されている。その中に外食費がある。

 この調査では2020年まで山形市がラーメンで8年連続首位を守っていたが、2021年に新潟市に抜かれており、山形市は『ラーメンの聖地、山形市』を掲げて約2300万円の予算を確保し、官民一体となりラーメン消費を盛り上げて「日本一奪還」を目指していた。

 食文化を観光資源にする取り組みは全国各地で行われているが、中でもラーメンによる地域の活性化は幅広い層に対して訴求力も高く効果的だ。かつては「蔵の街」として知られた福島県喜多方市や、漁業の町として栄えた千葉県勝浦市などは、ラーメン文化が知られることで観光客が激増している。

なぜ東京や札幌ではなく山形と新潟なのか

ここ十年のラーメン外食費は山形と新潟が抜きん出ている。
ここ十年のラーメン外食費は山形と新潟が抜きん出ている。

 ここ十年のこの調査では、山形市が9回首位を獲っており、2021年首位の新潟市も例年2位と、山形市と新潟市が「2強」となっている。ラーメン店の数が多い東京や、ラーメンの街として知られる札幌市や福岡市よりも、なぜ山形市と新潟市のラーメン消費額は多いのか。

 寒い地方で温かいラーメンが好まれているというベースがあるとしても、毎年この調査では上位を東日本が独占している。その理由はラーメン店の人口比率にある。言うまでもなくラーメン店の数は東京の方が多いが、人口10万人に対するラーメン店の数は山形県が1位で新潟県が2位。飲食店の中でラーメン店が占める割合が東京などよりも多いのだ。

 外食は家庭では食べられないものが好まれるもの。山形では蕎麦を家で打つ文化が古くからあったため、家で食べられる蕎麦よりも家では作れないラーメンが人気となった。山形の蕎麦店の多くが中華そばを出しているのも、外食としてラーメンの人気が高かったからだ。山形のご当地ラーメンの一つ「冷やしラーメン」を考案したのも蕎麦店だ。新潟も同様に米どころとして、外食では普段家で食べない麺類が好まれていたと推察される。

長年愛されているご当地ラーメンが多い

新潟県三条市のカレーラーメン。山形も新潟も個性豊かなご当地ラーメンが多い。
新潟県三条市のカレーラーメン。山形も新潟も個性豊かなご当地ラーメンが多い。

 さらに古くから愛されている「ご当地ラーメン」が多いのも両県の特徴だ。山形県では冷たいスープに氷を浮かべた「冷やしラーメン」をはじめ、味噌ラーメンに辛味噌が乗せられた「赤湯辛味噌ラーメン」、さらには「酒田ラーメン」や「米沢ラーメン」のほか、蕎麦店から生まれた「鳥中華」などが知られている。

 新潟県も背脂と煮干が効いた「燕背脂ラーメン」や、出汁で濃厚な味噌スープを割る「新潟濃厚味噌ラーメン」、生姜がたっぷり使われた「長岡生姜醤油ラーメン」のほか、屋台がルーツのあっさりとした「新潟醤油ラーメン」や「三条カレーラーメン」など、個性豊かなラーメンが数多くあり、地元客や観光客に愛されている。

 ここ数年はコロナ禍によって外食機会が減っている中で、こうして外食に注目が集まることは良いことだ。美味しいラーメンがある街として認知されることで、山形や新潟はラーメン文化が一つの観光資源となり、復調しつつある国内観光客やインバウンドに向けても強いアピールポイントとなっていくだろう。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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