週に30分だけ軽く汗を流しませんか?それだけで血圧は下がります。1787人データで証明【最新論文】
「血圧高め」を放置すると血管は、哀れ「1日中満員電車」状態
「人は血管とともに老いる」。これは近代内科学の基礎を築いたウィリアム・オスラー博士の言葉です。歳をとるに従い、血管は「しなやかさ」を失っていきます。新品の時は柔らかかったゴムホースがに古くなるとカチカチになっていく、あんな感じです。
柔らかい血管は心臓から血液が送られてくると、まるで卵を飲み込んだヘビのように拡張し、血液をスムーズに流します。しかしカチカチになった血管は拡がりにくいので、血液の流れは悪くなります。
それだけではありません。血管が拡がらないので、血液が血管の壁にかける圧力(血圧)も上がってしまいます。心臓は1分間に大体60回ほど拍動するので、そのたびに血管壁には大きな圧力がかかるわけです。例えで言えば、1日中満員電車に揺られているようなもの。血管が気の毒になってきませんか?
血管は柔軟性を取り戻せる
だからこれ以上血管を痛めつけないように、「血圧を下げよう」という話になるわけです。血管が痛むと破れやすくなる(出血しやすくなる)だけでなく、血液が固まりやすくもなるからです(このあたりの仕組みについては拙記事「毎日50段超階段を昇るだけで血管が健康に。46万人を10年以上観察」で説明しています。ぜひ、お読みください)。
さて血管をホースに例えて説明しましたが、両者には決定的な違いがあります。それは一度硬くなったホースがそのままなのに対し、血管は柔らかさを取り戻せるという点です。ホースと違って「生きて」いますからね。早い時期に生活習慣を改善するだけで血管は「しなやかさ」を取り戻し、血圧も下がるのです。
そこで本題です。
血圧を下げる生活習慣と言えばまず出てくるのが「運動」。しかし「1日〇〇歩は歩け」だの「毎日〇〇分の有酸素運動を欠かすな」など、「分かっちゃいるけどできません」というアドバイスを見聞きした経験はありませんか?
1週間に30分の有酸素運動でも血圧は下がる
しかし最新の研究によれば「1週間に30分だけ有酸素運動をする」だけでも、血圧は下がることが明らかになりました。10月23日に発表された、バハレ・ジャバルザデ・ガンジェ氏(テヘラン大学、イラン)たちによる論文をご紹介します [文末文献1] 。掲載されたのは、日本高血圧学会が発行する学術誌、「高血圧研究」(Hypertension Research)です。
ガンジェ氏たちが今回行ったのは「メタ解析」と呼ばれる研究です。すでに報告されている論文のデータを併合し、個々の論文だけでは見えてこない事実を見つけようという試みです。
有酸素運動が血圧に及ぼす影響を調べたランダム化比較試験を探し、34試験を見つけ出しました。参加した患者数は1,787人に上ります。
そしてこの34試験のデータを併合して解析すると、1週間に30分有酸素運動をするごとに、上の血圧(収縮期血圧)は1.8 mmHg、下の血圧(拡張期血圧)も1.2 mmHgずつ下がることが分かりました。
1週間合計150分だと7 mmHgも下がる
もちろん有酸素運動の時間が長くなるほど、血圧の下がり方は大きくなります。仮に1週間で合計150分間、有酸素運動をしたら、収縮期血圧は7mmHgちょっと、拡張期血圧も6 mmHg弱下がっていたそうです。降圧薬もビックリの数字です。
働き盛りが一番簡単にできる有酸素運動は「早足ウォーキング」でしょう。30分なら、週末の散歩、あるいはリモートワーク中の気分転換で簡単に達成できるはず。もちろん通勤の往復を工夫しても達成可能ですね。誰かと話ができるくらいのペース、かつうっすら汗をかくくらいで良いそうです。
一番良くないのは最初からあきらめて何もしないこと。冒頭ご紹介した通り、血圧が高くてつらいい思いをしているのはあなたの血管です。この先も長い付き合いになる相棒じゃないですか。助けてあげませんか?
最後に
いかがでしたか?1週間に30分でも有酸素運動をすれば血圧は下げられるという論文のご紹介でした。また高い血圧を放っておくと血管がつらい思いをしているのも、おわかりいただけたでしょうか?血圧については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。ではまた!
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今回ご紹介した論文
1週間で合計30分の有酸素運動でも血圧は下がる [抄録は無料]
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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。