「しっかり歯磨き」で血圧低下?降圧薬を飲み始める前にぜひ一読を!【最新エビデンス】
自覚症状もない「高血圧」。でも死亡リスクは上昇
「高血圧」って嫌ですよね。自覚症状もないのに「病人」扱いされ、医師からはやれ「生活を改めろ」だの「降圧薬を飲め」だのと言われます。日本人は男性なら50歳代の60%、40代でも35%、20代でも20%が「高血圧」だと推計されています(高血圧治療ガイドライン2019)。
でも高血圧を放っておくと「40〜64歳」ならば脳や心臓、そして血管系の疾患で「死亡」するリスクは、血圧が正常な人に比べ3倍以上に跳ね上がります(EPOCH-JAPAN研究)。だから放置は厳禁ですし、できるだけ予防したいですよね。
しっかり歯磨きすれば高血圧のリスクが減る?
「はいはい、分かった。よく運動して減塩するんでしょ」とウンザリ気味のあなた。今回ご紹介するのはそんなありきたりのネタではありません。「歯磨き」です。「歯磨きをきちんとする人は高血圧が少ない」という論文が発表されました。掲載されたのは「臨床歯周病学」という学術誌。掲載日は9月12日。最新情報です。簡単にご紹介します。
研究はイタリアで実施されました。解析対象は2020年の「世界高血圧デー」に(ご存じでしたか?こういう日が世界的に設定されているんです!)血圧測定に参加してくれた18歳以上のボランティア約4,500人です。血圧測定に加え、「歯磨き習慣」についてもアンケートに答えてもらいました。
「1日3回以上」歯磨きの人たちには高血圧が少ない
すると1日の歯磨き回数が「3回以上」の人たちでは、「3回未満」に比べ、高血圧である確率が相対的に19%低くなっていました(0.81倍)。これは歯磨き以外の高血圧リスク(年齢と性別、喫煙や肥満、糖尿病や高コレステロール血症など)の影響を統計学的に除去した後の数字です。なので「歯磨き回数」と「高血圧である確率」には直接的な関係があると考えられるのです。
「電動」だともっとイイ
さらに「歯ブラシの種類」でも差が認められました。「電動歯ブラシ」で1日3回以上磨くと、「普通の歯ブラシ×1日3回未満」の歯磨きに比べて高血圧の可能性は相対的に24%も減っていたのです、一方、「普通の歯ブラシ×1日3回以上」の減少率は17%のみでした。また血圧の差を見ると「普通歯ブラシ×1日3回未満」に比べ、「電動歯ブラシ×1日3回以上」で、上の血圧(収縮期血圧)は9mmHgも(!)低くなっていました。
もちろん、普通の歯ブラシでも注意深く、丁寧に磨けば電動歯ブラシと同じくらい血圧は下がるかもしれません。
歯磨き習慣が血圧に及ぼす影響をお分かりいただけたでしょうか?
血中に入った歯周病菌が高血圧を惹起?
ではなぜ、しっかり歯磨きする人では高血圧が少なかったのでしょう?論文の著者たちは「歯周病菌の減少」が作用した可能性を挙げています。というのも、歯周病菌は血圧を上げる可能性が報告されているからです。そしてこの歯周病菌による血圧上昇はどうやら、菌が血中に入ることで惹起される炎症が一因になっているようなのです。歯茎(歯周ポケット)の血管から菌が入り込んでしまうわけです。分かりやすいですね。
歯周病菌が腸内環境を悪化させて血圧が上昇する可能性も
一方、歯周病菌による血圧上昇には細菌、別の仕組みも提唱されているのはご存知ですか?「口の中の歯周病菌が腸内環境を悪化させる結果、全身性の疾患リスクが増えるという」仮説です(新潟大学・山崎和久先生)。人間は1日に1〜1.5リットルの唾液を飲み込んでいます。その中に歯周病菌がいれば、当然腸内環境(腸内細菌叢)も悪化しますよね。腸内環境が健康維持に大切なのは皆さんもご存知の通り。それが歯周病菌により撹乱され、血圧が上がるというわけです。ちょっと怖くありませんか?
まとめ
小難しい理屈はさておき、丁寧な歯磨きを1日3回以上続ければ、血圧上昇を抑えられそうだという事実は伝わったでしょうか?台湾からも最近(10月21日)、「歯石の多い人には高血圧も多い」という研究が米国高血圧雑誌という学術誌に掲載されました。
「歯のケアと高血圧」。意外な組み合わせではありませんか?毎日しっかり歯を磨き、定期的に歯科検診を受けましょう。
ご紹介した論文はすべて、米国医学図書館サイトで要約を無料閲覧できます。Deeplという無料翻訳サイトを使えば、簡単に日本語に変換できますよ。
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